映画コラム
パイレーツだけじゃない!ディズニーランドのアトラクションと映画の深い関係
パイレーツだけじゃない!ディズニーランドのアトラクションと映画の深い関係
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7月1日(土)に公開され、土日2日間で興行収入10億円を超える大ヒットスタートとなった『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』。
本作の原題である「Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales」は、映画の原作となったディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」の中で聞けるセリフ「Dead Men Tell No Tales(死人に口なし)」に由来するものです。
この『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの成功により、今ではすっかりディズニー映画でお馴染みとなってしまった「アトラクションの映画化」。
映画の原作といえば小説やマンガ、TVドラマなどが一般的ですが、「遊園地の乗り物が原作」というほかでは考えられない題材が成立するのは、ディズニーならではの秘密があります。
ディズニーパークのアトラクションなどの各施設には、バックグラウンドストーリーというものがあります。バックグラウンドストーリーとは、文字通りその施設の背景として設定されている物語のこと。
これにより、ただの遊園地の乗り物に終わらせない物語性を持っているのがディズニーパークのアトラクションの特徴で、これは映画制作に携わってきたウォルト・ディズニーならではの演出。このストーリー性があることで、ディズニーランドのアトラクションはもともと映画にしやすい題材だったともいえます。
そして、アトラクションを映画化したのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズだけではありません。
もはや「カリブの海賊」の映画化という出発点だけでは語れないほど、映画シリーズとして大成功した『パイレーツ・オブ・カリビアン』の影に隠れがちですが、これまでに映画化されたディズニーランドのアトラクション原作作品をご紹介!
『カントリー・ベアーズ』
元になったアトラクション:「カントリーベア・シアター」
18頭の熊たちのバンド「カントリーベア・バンド」がカントリー&ウェスタンを奏でるアトラクション。個性豊かな熊達のおしゃべりや、ゆかいな楽曲が楽しい。
映画では……
言葉をしゃべる熊と人間が普通に共存している世界(劇中ではこの設定に特にツッコみはない)が舞台。かつて大人気だったが、今では解散して散り散りになってしまった「カントリーベア・バンド」が大好きな熊の男の子のベアリーは、人間の家族の中で自分だけが熊で、どうやら僕は養子なのではないかと(ようやく)気付いてしまう。
ベアリーは、本拠地の「カントリーベア・ホール」(アトラクションの外観と同じ!)が取り壊されようとしている「カントリーベア・バンド」の再結成ライブを果たすべく、元バンドメンバーをさがす旅に出て……。
あまり知られていませんが、ディズニーランドのアトラクション映画化第1弾が本作。興行的に後発の2作品に比べてかすんでしまい、なんとなく忘れられている気の毒な作品……。
「カントリーベア・シアター」といえばカントリー音楽ですが、本作でもその魅力を遺憾なく発揮。旅の途中で繰り広げられるミュージカルシーンは、劇中の人物の心情を歌い上げていて素直に物語に入っていけます。
ルックスが多少違いますが、ヘンリー、ゼブ、ビッグ・アルといったアトラクションでおなじみのベアバンドは、劇中では超人気バンドで、ブライアン・セッツァー、クィーン・ラティファ、エルトン・ジョンなど、一流ミュージシャン達が口々に賛辞を送る!
遊び心と、音楽ファンにもおすすめなプロモビデオ並みのミュージカルシーンが楽しめる、アトラクションのエッセンスをうまく汲み取った作品です。
『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』
元になったアトラクション:「カリブの海賊」
静かな入り江を進んでいたボートは突然急降下して、17~18世紀頃の海賊たちが暴れ回るカリブ海にタイムスリップ。街に火を放ち、酒を飲み干す海賊たちとその哀れな末路までを描いた、ウォルトが関わった最後のアトラクション。
コンピュータ制御により、音楽や音声にシンクロしながら動くリアルな海賊達を生み出したオーディオ・アニマトロニクスは、今見ても色あせないクオリティ。
映画では……
シリーズ第1作である『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』は、17世紀のカリブ海を舞台に海賊が活躍するという「カリブの海賊」をもとに、映画オリジナルストーリーを展開。
ジェリー・ブラッカイマー製作らしく大爆発とアクションを詰め込んだ作品になりましたが、ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウという大人気キャラクターを生み出し、ご存じの通りシリーズ5作品が作られる大ヒット作となりなました。
日本でも、それまでわかりやすいハリウッド大作に出演していなかったジョニー・デップの人気を一般層にも広めた功績は大きいと思います。
シリーズ第1作の『呪われた海賊たち』の劇中の要所では、牢屋の前でカギをくわえる犬、胸骨の中を伝っていく赤い酒など、アトラクションで見られるシーンが再現されているほか、アトラクションで印象的な楽曲「ヨーホー」を登場人物が歌うシーンも。
『ホーンテッド・マンション』
元になったアトラクション:「ホーンテッド・マンション」
999人の亡霊が住む大邸宅を巡るライド。天井が伸びる部屋、ゲストを目で追いかける壁画、水晶の中に浮かび上がるマダム・レオタ、舞踏会で踊る幽霊、墓場で歌う胸像など、工夫を凝らした演出が見どころ。
ラストでどの幽霊がヒッチハイクして乗ってくるか、というのも大きなお楽しみ!
映画では…
エディ・マーフィ扮する不動産屋の一家が、不気味な大邸宅に立ち寄る。人の気配はないはずなのに、そこにはこの館の執事がいた。やがて次々と怪現象が一家を襲う!その昔、この屋敷にはある事件があった……
アトラクション映画化第3弾の本作は、最もアトラクションの内容を再現した作品になっており、水晶玉のマダム・レオタ、花嫁の幽霊、歌う胸像など、アトラクション中のゴーストたちが多数登場します。
ゴーストたちがはびこる中庭を、主人公たちが幽霊馬車に乗って通るシーンは、アトラクションのまんま!彼らが幽霊たちを見て驚く様子は、「ホーンテッド・マンション」に乗ったゲストのリアクションを再現しているようでした!
さらに、エンドクレジット後のマダム・レオタのセリフは、アトラクションの最後に聞けるものと同じ。このセリフが聞けるタイミングも含めて、実に細かい所までアトラクションの再現をしています。
東京ディズニーランド/東京ディズニーシー 映画原作アトラクション一覧!
このほかにもアトラクションではないが、ディズニーランドのテーマランドの名前を冠し、劇中では『イッツ・ア・スモールワールド』が登場する『トゥモローランド』が2015年に公開されたのも記憶に新しいところ。
さて、ここまで「アトラクション→映画」の映画作品をご紹介してきましたが、オーソドックスにディズニー映画を元にしたアトラクションはどれほどあるでしょうか。
ここでは、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーで現在楽しめる映画を元にしたアトラクションを一覧にまとめてみた。原作映画を見てからアトラクションに乗ると、さらに楽しめるはず!
東京ディズニーランド
●スイスファミリー・ツリーハウス(『スイスファミリー・ロビンソン』)
●スプラッシュ・マウンテン(『南部の唄』)
●ピーターパン空の旅(『ピーターパン』)
●白雪姫と七人のこびと(『白雪姫』)
●シンデレラのフェアリーテイル・ホール(『シンデレラ』)
●ピノキオの冒険旅行(『ピノキオ』)
●空飛ぶダンボ(『ダンボ』)
●キャッスルカルーセル(『シンデレラ』)
●アリスのティーパーティー(『不思議の国のアリス』)
●プーさんのハニーハント(『くまのプーさん』)
●ロジャーラビットのカートゥーンスピン(『ロジャー・ラビット』)
●スティッチ・エンカウンター(『リロ・アンド・スティッチ』)
●モンスターズ・インク“ライド&ゴーシーク!”(『モンスターズ・インク』)
●スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー(『スター・ウォーズ』シリーズ)
●バズライトイヤーのアストロブラスター(『トイ・ストーリー』シリーズ)
東京ディズニーシー
●トイ・ストーリー・マニア!(『トイ・ストーリー』シリーズ)
●タートル・トーク(『ファインディング・ニモ』シリーズ)
●ニモ&フレンズ・シーライダー(『ファインディング・ニモ』シリーズ)
●インディ・ジョーンズ・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮(『インディ・ジョーンズ』シリーズ)
●ジャスミンのフライングカーペット(『アラジン』)
●マジックランプシアター(『アラジン』)
●キャラバンカルーセル(『アラジン』)
●スカットルのスクーター(『リトル・マーメイド』)
●フランダーのフライングフィッシュコースター(『リトル・マーメイド』)
●ブローフィッシュ・バルーンレース(『リトル・マーメイド』)
●ジャンピン・ジェリーフィッシュ(『リトル・マーメイド』)
●ワールプール(『リトル・マーメイド』)
●アリエルのプレイグラウンド(『リトル・マーメイド』)
●マーメイドラグーンシアター(『リトル・マーメイド』)
●地底探検(『センター・オブ・ジ・アース』)
●海底2万マイル(『海底二万哩』)
次に映画化されるアトラクションは「ジャングルクルーズ」!そして『美女と野獣』のエリアが誕生!
そして、次に映画化されるアトラクションは「ジャングルクルーズ」であることが決定しています。
「ジャングルクルーズ」は、スキッパーと呼ばれる船頭さんのガイドの中、熱帯のジャングルを流れる川をボートで探検するというアトラクション。リアルな動物達に加え、なんといってもスキッパーのトークが面白さの肝です。
主演は"ザ・ロック"ことドウェイン・ジョンソンで、2018年春から製作開始となります。
今年2017年春には、ドウェイン・ジョンソンがウォルト・ディズニー・ワールドの「ジャングルクルーズ」にサプライズで乗り込み、映画化への期待を盛り上げてくれました。ドウェイン・ジョンソンがどんな冒険を繰り広げるのか、またあのアトラクションをどのように映画化するのか、今から楽しみです。
また、ディズニー映画を元にしたアトラクションでは、東京ディズニーランドのファンタジーランド拡張エリアに『美女と野獣』をテーマにした日本オリジナルのアトラクションが2020年に誕生予定。同じく東京ディズニーランドのトゥモローランドにはベイマックスの新アトラクションも誕生予定です。
双方向的な映画とアトラクションの関係
ドウェイン・ジョンソンが「ジャングルクルーズ」に現れたように、ディズニーランドのアトラクションと映画は双方向的な関係を持っているのが面白いところ。
「カリブの海賊」は『パイレーツ・オブ・カリビアン』の元になりましたが、シリーズ2作目の『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』公開時には、「カリブの海賊」にジャック・スパロウなどの映画のキャラクターが登場するリニューアルされました。
さらに、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』公開前の2017年4月には、カリフォルニアのディズニーランドの「カリブの海賊」内にジョニー・デップ本人がジャック・スパロウに扮してサプライズ登場し、大きな話題となっていました。
「アトラクション→映画」、「映画→アトラクション」と自在に行き来できるのは、スタジオとテーマパークを持つウォルト・ディズニーだからこそ成せる技!
「ディズニーランドは永遠に完成しない」というウォルト・ディズニーの理念の通りに、アトラクションはアップデートすることができます。これからも、ディズニーランドは未完成であり続け、お互いに影響を与えながら映画とともに歩んで行くのでしょう。
(文:藤井隆史)
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