いままで見たことのない大泉洋が、『東京喰種 トーキョーグール』にはある
(C)2017「東京喰種」製作委員会
累計発行部数2300万部を超える人気コミック『東京喰種』がアニメ、舞台、ゲーム化を経てついに実写映画化しました。
食物連鎖の頂点とされるヒトを狩る「喰種(グール)」と人間の衝突を描いた本作。ある事故がきっかけで、望まずも喰種と化してしまう主人公カネキを、窪田正孝さんが熱演しており、公開前から話題沸騰。完成披露試写会で鑑賞された方々の評価も大絶賛の嵐で、楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
あらすじ
水とコーヒー以外で摂取できるのは「人体」のみといった、人の姿をしながらも人を喰らう怪人「喰種(グール)」が暮らしている東京。ごく普通の大学生、金木研(カネキ)は、ある事故がきっかけで喰種の臓器を移植されてしまい、半喰種となってしまう。半喰種となったカネキは人間と喰種、2つの世界の価値観の中で苦しみながら、喰種を駆逐しようとする人間側の組織・CCGの捜査官との熾烈な戦いに巻き込まれていくのだった…。
今回は大泉洋さん演じるCCG(喰種対策局:Commission of Counter Ghoul)のベテラン捜査官、真戸呉緒(まどくれお)に注目したいと思います。
これまで見てきた大泉洋ではない
本作で大泉洋さんが演じるのは、喰種を心から憎み、徹底的に排除、駆逐しようとする捜査官「真戸呉緒(まどくれお)」です。コミカルな演技に定評のある大泉洋さんが一切の笑いを封印し、超絶シリアス、冷酷無比な捜査官を演じきっているのです。
(C)2017「東京喰種」製作委員会
私は「水曜どうでしょう」の大ファンで、大泉洋さんの大ファンでもあります。彼の演技どころか佇まいまでもが好きで仕方がないのですが、今回はそれを一切見ることはできませんでした。全く知らない大泉洋がそこにはいたのです。
『探偵はBARにいる』で見せてくれた、ハードボイルドながら愛すべきキャラクターも、『駆込み女と駆出し男』で見せてくれた、情けなくも強いキャラクターの片鱗すらありません。どこかで少し笑いを、何かしらクスッとくる一言を期待してしまっていたのですが、それは良い意味で裏切られました。
むしろ、新たな一面を見せつけてくれました。
喰種の中には好んで人間を食べる者も多いのですが、人間を食べることに疑問を持っている者もいる。どうすれば人を殺めずに、自身の飢えを満たすことができるのかと日々苦しんでいる。つまり、人間と同じように愛や悲しみの感情を喰種も持っているのです。
しかし、大泉洋さん演じる真戸呉緒にとって、そんなことは一切関係なく、喰種は生きる価値すらないと決めつけています。その信念は一切揺らぐことなく、喰種を駆逐することが全てにおいて最優先であり、むしろそれだけのために生きているようにも見えるのです。(原作では、妻の真戸微もCCGの捜査官であり、彼女は殉職したことが明かされています。それもあり喰種を人一倍憎んでいるのでしょう)
(C)2017「東京喰種」製作委員会
真戸呉緒が登場した瞬間から、いつもの大泉洋ではないことはすぐにわかります。自分は一体何を期待していたのかと。そしてその期待はどこかへ消え去って、期待以上の新しい大泉洋に会えるのが本作なのです。
微笑みを見せるのは喰種との対決のみ
真戸が喰種に対して唯一興味をしめすのは、喰種が体内から放出する「赫子(カグネ:戦闘時には武器となる喰種の捕食器官)」だけ。なぜなら彼ら捜査員はそれを武器(クインケ)にして喰種と戦うからです。喰種を駆逐すると同時に、喰種のもつ赫子に美しさを感じる様子は、毒を持っている植物ほど美しい花を咲かせるという皮肉を言っているかのようです。
(C)2017「東京喰種」製作委員会
事実、喰種の出す赫子からは恐ろしさだけでなく、どこか美しさを感じさせる魅力があります。これは監督の萩原健太郎さんもトークイベントで以下のように答えています。
「原作ではあまりディティールが描かれていない「赫子」を実写に置き換えた時に原作ファンの期待を裏切らずにリアリティを持たせられるか。(気持ち悪さ)7:(美しさ)3ぐらいの割合にしたかった。そうすることによって喰種の違う側面が見えてきた時に美しく見える。
参考:リゼのメガネはJiNSだった!? レア展示もあった映画『東京喰種 トーキョーグール』×UUUMクリエイター試写 | シネマズ by 松竹
(C)2017「東京喰種」製作委員会
喰種が悩み、苦しみ、生きることにもがき続けることすら真戸呉緒は許していません。そのやり方が正しいと感じる方もいれば、そうでない方もいるかと思います。しかし、真戸が冷酷であるからこそ、喰種の救われなさが際立ちっていることも事実です。
人間の敵である喰種を、なぜか応援したくもなりました。
ぜひ劇場でご覧ください。それではまた。ご存じ、ゆうせいでした。
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(文:ゆうせい)
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