『華氏119』がマジに訴える、世界そのものの危機!



(C)Paul Morigi / gettyimages(C)2018 Midwestern Films LLC 2018 



マイケル・ムーア監督といえば、アポなし取材も辞さない姿勢で、これまでアメリカの闇を赤裸々に暴いたジャーナリストであり映画監督として有名ですが、そんな彼がまたまたスキャンダラスな新作を完成させました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街340》

共和党のドナルド・トランプが大統領に当確する前後、アメリカに一体何が起きているのかを暴いた『華氏119』です!

一体なぜトランプは大統領になれたのか?
その衝撃の「からくり」!


まず『華氏119』というタイトルに目をそそられます。

以前マイケル・ムーアが監督した『華氏911』(04)はアメリカに連続多発テロが勃発した2001年9月11日以降のアメリカ社会をテーマに、ブッシュ大統領政権の実態に鋭いメスを入れたものでした。

そして今回も同じく、2016年11月9日、ドナルド・トランプがアメリカ大統領選の勝利宣言をした2016年11月9日を基点とするアメリカの実態を暴いていきます。

911と119、いくら偶然とはいえ、数字の語呂合わせがあまりにすごくて、笑うに笑えないものもあります。

つまりはどちらも現代アメリカの危機を訴えたものであり、その象徴としての911であり119なのです。

2016年11月9日、多くのアメリカ国民は民主党のヒラリー・クリントンが大統領にあるものと固く信じていました。

しかし、いざ蓋を開けてみたら、いつのまにかトランプが当確していました……。

それはなぜ?

映画『華氏119』はその理由を探っていきます。

そして探れば探るほど、今のアメリカに一体何が起きているのか、その驚愕の真実を追求していくのです。

そのひとつが、遡ること2010年、トランプの友人の大富豪スナイダーがミシガン州知事に就任し、金もうけのために黒人が多く住む街フリントに民営の水道を解説しますが、この水に鉛が含まれていたことから住民が次々と深刻な病に侵されていきます。

しかしスナイダーは「まったく問題なし」と主張し続けるのでした。

こうした政治腐敗に現在の選挙制度の死角などが合わさりながら、驚くべきことに本来は少数派にしか支持されてなかったはずのトランプがいつしか現代アメリカの象徴として君臨していく「からくり」を、マイケル・ムーアは本作で解き明かしていくのです。



(C)Paul Morigi / gettyimages(C)2018 Midwestern Films LLC 2018 



アメリカだけの問題ではなく
日本、そして世界の危機を訴求!



正直、その「からくり」が徐々に、しかしながら確実に加速していく展開には、映画を見ながら慄然とならざるをないものがあります。

また、日本人の目から見据えていくうちに、この展開って、何となく今の日本と非常に似てきてやしないか? という思いに囚われていきます。

今、なぜ日本はもとより世界各国でヘイトの嵐が吹き荒れ、またそれを正当化しようとする人々が増えてきているのか? 本作はそこにもさりげなく答えを示唆してくれています。

実はこの映画ではトランプやスナイダーたちだけではなく、本来リベラルを謳っていたはずの民主党にも批判の矛先が向けられています。

それはなぜ?

それはまるで秀逸なポリティカル・サスペンス映画のような筋書きなのですが、困ったことにこれはフィクションではなく現実社会で今起きていることなのです。

そのためか、ここでのマイケル・ムーアのスタンスも、これまでの作品群とはやや異なり、どこかせっぱつまった危機感を隠そうとはしていません。

このままでいくと、アメリカはそして世界は本当に大変なことになる……。

ここでマイケル・ムーアが提示する、とある国の歴史的指導者の記録映像が映し出されたとき、きっと多くの観客ははっとさせられることでしょう。

今ならまだ間に合う。

今回の作品は、映画としては正直なところ詰め込みすぎて途中で疲れてしまうほどの情報量ですが、そこまでしてマイケル・ムーアが世界中の人々に一体何を訴えたいのか、またそれに接して人は何を思うのか。

まさに今、人は試されているようです。

(文:増當竜也)

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