映画コラム
『ダンケルク』感想、最高レベルの賛辞をこの映画に贈りたい
『ダンケルク』感想、最高レベルの賛辞をこの映画に贈りたい
『ダンケルク』の構成は如何に
本作は前述の通り3つの物語が同時に進行します。
1:陸の物語
・描かれる時間軸(期間)は1週間。
・ダンケルクに追い詰められた兵士たちがイギリス本土へ帰還するまでを描く。
・ケネス・ブラナー、ジェームズ・ダーシーら上官らの描写とフィオン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルズら兵士たちの描写がメインで展開。キリアン・マーフィーのエピソードは海の物語と横断して展開される。
2:海の物語
・描かれる時間軸(期間)は1日。
・イギリスの海岸からダンケルク救出作戦に駆り出された一般船舶が帰還するまでを描く。
・マーク・ライランスらの描写がメインで展開。キリアン・マーフィーのエピソードは陸の物語と横断して展開される。
3:空の物語
・描かれる時間軸(期間)は1時間。
・ダイナモ作戦が成功するように空からの援護を行い、ドイツ空軍を撃退するまでを描く。
・トーム・ハーディ、ジャック・ロウデン二人の描写がメインで展開。
3つの物語が同時進行と言いましたが、上記の通り3つの物語は時間の幅が異なります。それが同時に進行するので、陸の直後に海の描写になった場合、それは別の時間軸を表しているのです。
軽めな手書きの図になりますが、以下のような感じです。
クリックで拡大表示ができます。
とは言うものの全てはサバイバル作戦なので、変に「この物語は時間軸で言うと少し前か」とか考えなくても大丈夫です。流れに身を任せると、複数箇所で「お!繋がった!」や「お!戻った!」などピンとくるはずです。
そして最後は見事に3つが融合してクライマックスへと突き進みます。
補足:ダンケルクの救出作戦の裏側で犠牲となったカレーのイギリス軍
この映画では描かれていませんが、ダンケルクの隣町のカレーでもイギリス軍とドイツ軍は戦闘を繰り広げていました。しかし、ダンケルクの救出作戦を成功させるためにカレーの部隊はダイナモ作戦のようには救出されませんでした。
他にも「ダンケルクの戦い」、「ダイナモ作戦」について様々調べると映画の世界の幅も相当広がります。映画を見た後に気になった方は是非様々歴史を調べてみてください。
物語は完全にアンサンブル
この物語は主役がおらずアンサンブル(群像劇)となっています。
イギリスの人気ボーイズグループ、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズが出演しているのでハリーの出演時間が気になる方もいらっしゃると思いますが、ある程度の出演はありますが良い意味で目立たず一人の兵士をしっかりと演じられています。
この役者陣は隅々まで素晴らしい作品となっているのですが、強いて言うならば一般船舶の船長を演じたマーク・ライランスの頑固さ、トム・ハーディの内に秘めた信念、ケネス・ブラナーの責任感、フィオン・ホワイトヘッドの賢明さが強く印象に残っています。
どの俳優さんの演技が最も印象に残ったかは人ぞれぞれ異なる映画だなと思いますので、鑑賞後はご覧になられた方同士でそれを語り合っても良いかなと思います。
一般船籍の船長を演じたマーク・ライランス
(C)2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
空軍パイロットを演じたトム・ハーディ
(C)2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
上官を演じたケネス・ブラナー
(C)2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
兵士を演じたフィオン・ホワイトヘッド
(C)2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
さすがノーラン作品、IMAXの映像が凄まじい!
クリストファー・ノーラン監督作品と言えば、IMAXカメラで出来る限り実写で撮影する迫力の映像描写が大きな見どころ。
前作『インターステラー』の撮影を担当したホイテ・ヴァン・ホイテマによるIMAXカメラの撮影映像が見事に機能しています。特に空での戦闘シーンはまるで戦闘機に乗っているかのような大迫力の映像となっています。(メイキングを見る限り、IMAXカメラを飛行機に付けてました…)
今回は今までのクリストファー・ノーラン監督作品で最も台詞が少ないのではないかと思います。なので映像で語る部分が非常に多いんです。
洋画の場合字幕を見る方が大半だと思いますが、台詞が少なく映像で訴えかけてくるので映像全体をより堪能することができるのではないかなと思います。
公開したらできるだけ大きなスクリーンで、できればIMAX仕様のシアターでご覧になって頂きたいです。
(※IMAXデジタルシアター云々のIMAX規格の説明については今回は割愛致します)
お見事!ハンス・ジマーの音楽!
クリストファー・ノーラン監督作品の音楽といえば、ハンス・ジマーがお馴染みに。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の「彼こそは海賊」の原曲と作り、『ライオン・キング』でアカデミー賞を受賞。『レインマン』、『グラディエーター』、『ダ・ヴィンチ・コード』など数多くの人気作品を手がけてきた映画音楽の巨匠です。
そんなハンス・ジマー、今回は『パイレーツ・オブ・カリビアン』最新作と制作が被ったため、『パイレーツ・オブ・カリビアン』は弟子のジェフ・ザネリに託して、この『ダンケルク』に全力投球!
1秒たりとも気の抜けない極限の世界を音楽で見事にアシストしています。緊張感を持たせることを主軸としているため、口ずさめるようなメロディーの音楽ではありませんが、公式に公開されている「SUPERMARINE」という曲を始め、凄まじい音楽で私たちを圧倒させてくれます。
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まとめ:戦争映画、だけれども…!
『ダンケルク』は戦争映画のジャンルに分類される作品です。
前述の通り“絶望”を感じるものとなっていますが、今までのクリストファー・ノーラン監督作品のように血を全開で表現したりはなく、俗に言う「グロい」描写は皆無。一人でも多くの方にこの映画を“体験”してほしいなと思いました。
絶望に支配されながらも、最後は希望を私たちの心へも与えてくれます。
全編で107分、本編は99分!
2時間を切る映画ですので、集中力も心配せずに9月9日以降是非『ダンケルク』を体験してみてください。
本当に素晴らしかった。最高レベルの賛辞をこの映画に贈りたいです。本当に凄い体験をありがとうございました!!
(文:柳下修平)
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