土屋太鳳による主題歌にも大感動!『フェリシーと夢のトウシューズ』の面白さはこれだ!





© 2016 MITICO - GAUMONT - M6 FILMS - PCF BALLERINA LE FILM INC.



現在公開中の『フェリシーと夢のトウシューズ』、これは「ぜひ親子で観て欲しい!」と思える、教育的なメッセージと、アニメーションとしての楽しさがいっぱいの作品でした!その魅力をお伝えします。

1:3DCGアニメでしか成し得ない、躍動感溢れるダンスシーンがすごい!


本作の題材となっているのはバレエ(バレリーナ)。何よりの見どころは、劇中のバレエのダイナミックな動きの数々!ただ優雅で美しいというだけでなく、苛烈な“ダンスバトル”までもが展開するのです!

本作の振付はベテランのバレエダンサーが担当しており、パリ・オペラ座団芸術監督のオレリー・デュポンに至っては、全キャラクターの全シーンを踊って見せていたそうです。

しかし、オレリーにモーションキャプチャーをつけて劇中にそのまま取り入れようとしても、思ったような演出効果は得られなかったのだとか。制作陣は、その“現実のバレエをそのままアニメにトレースする”という選択を思い切って捨てました。その結果、ディズニーやドリームワークスの数々の名作アニメに携わったアニメディレクターの手腕のおかげもあり、オレリーが考案した振付やダンスは、劇中では実際の動きの2倍も早く、大きな動きとして生まれ変わることに成功したのだそうです。

劇中のダンスシーンは“3DCGアニメーションでしかできない”画の面白さに満ち満ちています。それでいて、現実のバレリーナの動きを基点にしているため、やりすぎで現実感がないということもない。リアルと、別世界にいざなうかのようなアニメの魅力が、奇跡的とも言えるバランスで保たれているのです。この迫力のダンスシーンだけでも、本作を劇場で観る価値があるでしょう。



2:19世紀のパリの街を再現!タイムスリップしたかのような感動があった。


本作の舞台が19世紀のパリであることも特筆に値します。パリの街並みを俯瞰視点で観るシーンでは、建物の1つ1つが緻密に作られていることがわかるでしょう。その世界が“ある”という実在感はもちろん、建設途中のエッフェル塔や自由の女神像も登場しているため、その場所の“歴史”も存分に感じることができるのです。



この19世紀のパリを再現できたのは、膨大なリサーチと試行錯誤の賜物です。『この世界の片隅に』などでもそうですが、作り手が入念に当時の歴史を調べ上げたことで、“今はない”世界を体験できるというのも、アニメ(またはCG)で作られた映画でしか成し得ない、大きな魅力と言えるでしょう。

なお、終盤にはこの19世紀のパリという舞台を、ぜいたくに使ったアクションシーンまでもがあります!そのギミックは『インディー・ジョーンズ』をも思わせるものでした。


3:夢の描き方がとても真摯だ!“敗れた者”の描写までもがある。


本作では、孤児院で育った家族のいない女の子が、パリでバレリーナになることを目指すという、王道のサクセスストーリーが紡がれています。この物語で真摯であると感じたのは、“夢に敗れた者”をも描いていることでした。

たとえば、バレエ学校の指導者は“1日に1人脱落させる”という厳しいルールを生徒に課していますし、主人公がお世話になる掃除係の女性はある理由によりかつて夢を諦めたことがあります。“夢は絶対に叶う”という根拠のないキレイゴトだけでは終わらせず、“夢が叶わなかった後”のことも描いていました。

主人公はバレエのレッスンを受けたことがない初心者ですが、孤児院にいたころからダンスの才能を見せていたり、短い期間でもトレーニングをみっちりとしていたりと、努力にも余念がありません。“情熱”という他の誰にも負けない武器も持っています。しかし、そんな彼女のサクセスストーリーの周囲には、夢に敗れた者の“影”も見える……大人もハッとするであろう、そのような視点も忘れてはいないのです。

ちなみに、本作で製作指揮をとったのは、日本でも大ヒットした『最強のふたり』の3人のプロデューサーです。欠点の多い愛するべき登場人物が、出会いを経て、お互いを高めあっていくという物語には、どこか『フェリシーと夢のトウシューズ』と似たものを感じられました。



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4:イケてない少年の視点もあった!ボンクラ男子も必見だ!



日本のポスターや予告編、そもそものバレエという題材からして、本作を“女の子向け”と思っている方もいるのではないでしょうか?ところが、第2の主人公と呼んでも過言ではない“イケてない少年”が大活躍するため、実はボンクラ男子も大いに感情移入できる作品に仕上がっているのです!

この少年が、大好きな主人公に対して素直に想いを伝えられない様にはニヤニヤが止まりませんでしたし、いけ好かないイケメンと女の子を取り合うという“少女マンガあるある”な展開までも備えていました(笑)。誰もが、彼のことが大好きになれるでしょう。

また、少年が“発明家”として努力をしていることも重要です。バレエダンサーという1つの夢の形だけを追うのではなく、“自分の得意なこと”を見つけて、その道を進むという素晴らしさを、こ少年の視点を通して描いていることも真摯でした。彼の発明家としての成長が、発展途上のパリの街並みとリンクしているように思えるのも見事ですね。

余談ですが、劇中でいちばん大笑いしたのが、この少年が主人公に対して「見栄を張って自分のサクセスストーリーをカッコよく語っているけど、実際はめちゃくちゃカッコ悪かった」というシーンでした。3DCGという利点を最大限に利用した“止め絵”で語ってくれるのですが、このスピーディーさとおかしさには、並々ならぬものがあります。丁寧に語りすぎるがあまり冗長になってしまう映画作品が多い昨今、この“サブストーリーをささっと語ってしまう”編集のテクニックは、アニメならずとも、もっと使われるようになるとうれしいですね。



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5:土屋太鳳たち豪華キャストたちの吹替、作品の魅力を引き出した日本版主題歌も素晴らしい!


本作の吹替版キャストでの注目は、何よりも土屋太鳳が主人公を演じていることでしょう。洋画の吹替えは初めてということですが、公式サイトにあるインタビューなどで「日本とは違う文化で生まれる表情や動きに声を当てる難しさがありました」や、「1秒1秒を巻き戻し繰り返し、(主人公と)一体となることを目指しながら演じました」と語っており、役に対する真摯さが伝わってきます。

土屋太鳳は3歳の頃からバレエを習っていたことや、オーディションで緊張してきた経験を、本作の主人公の姿に重ね合わせたところもあるようです。そして、日本版主題歌『Felicies(フェリシーズ)』は、彼女が演じた主人公を、そして夢に向かって努力をする全ての人を鼓舞するような、素晴らしい楽曲に仕上がっています。



そのほか、夏木マリや黒木瞳という今までも素晴らしい吹替をされてきた方たち、熊川哲也という誰もが知るバレエダンサー、実力と人気を兼ね備えた声優の花江夏樹と、とても誠実な吹替のキャスティングがなされています。サブキャラクターを演じた声優・シンガーのHARUCA、声優のほかナレーターとしても活躍されている落合福嗣(元プロ野球選手の落合博満の息子さん)も超ハマっていました!

6:英語版はエル・ファニングとデイン・デハーンが担当!新たな声の魅力を感じられる!


日本語版吹替はもちろん、英語(字幕)版の吹替キャストも魅力的という言葉では足りません。主人公役は『SUPER8/スーパーエイト』や『マレフィセント』などのエル・ファニング、イケてない少年には『クロニクル』や『アメイジング・スパイダーマン2』などのデイン・デハーンという豪華な配役がなされているのです。

意外だったのは、エル・ファニング演じる主人公がかわいい系というよりも意外と“芯の強さ”を感じさせる声であったことと、普段はカッコよくてどこか“暗さ”を感じせていたデイン・デハーンがダメダメで挙動不審でもある少年にぴったりとハマっていること!この2人のファンであれば、その新たな一面を感じられることは間違いありません。

さらに、「コール・ミー・ベイビー」などが世界中で大ヒットしたシンガーのカーリー・レイ・ジェプセンが、主人公に指導をする女性役および、主題歌を担当しています。彼女は声優初挑戦ということですが、文句なしに上手い!

字幕版の上映は、新宿ピカデリーと池袋シネマ・ロサで1日1回のみの上映となっていますが、ぜひ字幕版も選択肢に入れてほしいです。



主人公の声、主題歌を務めた土屋太鳳さん。収録風景の写真より。




7.ちょっと気になるところも?でもトータルでは多くの要素を上手くまとめ上げた秀作だ!



ここまで本作の見どころと面白さを語っていましたが、物語にはほんの少しの“ひっかかり”を感じたところもあるので、そこにも触れておきます。

そのひっかかりの1つが、主人公が“嘘”をついてしまうこと。この嘘をつく前に、ライバルとなる女の子はひどいことを主人公にしていますし、主人公が「ごめんなさい」と謝っているとはいえ、「いや、許されることではない」と思ってしまう方もいるのではないでしょうか。

もう1つが、孤児院から脱走したばかりの主人公が、わずかな期間(ほんの数日)でバレエをマスターしていく過程。彼女のトレーニングや努力がしっかり描かれているとはいえ、これはさすがに性急すぎるように思えます。せめて1、2年ほどの時間の経過を経たほうが、より夢の実現への説得力が増したでしょう。

とはいえ、その嘘については指導者がとある“厳しい条件”を提示するというペナルティと責任が課せられていますし、主人公がもともとダンスの才能と情熱を持ったことは序盤に示されているので、さほど大きな問題とも言えません。

何より、89分という短い上映時間で、嫉妬と激励、ライバルとの切磋琢磨、努力と友情などの多くの要素を、テンポよくまとめあげていることは賞賛に値します。理想的かつ誠実なサクセスストーリーの物語として、きっと多くの方が満足できることでしょう!ぜひぜひ、バレエのほか、夢を見ている(見るであろう)お子さんと一緒にご覧ください!

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(文:ヒナタカ)

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