映画コラム

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2017年09月11日

タマフル映画祭 in したコメ開催!早過ぎた野心作!『そろばんずく』を今見る意味とは?

タマフル映画祭 in したコメ開催!早過ぎた野心作!『そろばんずく』を今見る意味とは?



©いがらしみきお/「したまちコメディ映画祭in台東」実行委員会


浅草・上野を舞台にした、年に一度の映画ファン待望のイベント、「したまちコメディ映画際」が今年も9月15日〜18日の4日間に渡って開催される。

映画ファンにとってのお楽しみは、やはり17日に行われる「映画秘宝まつり2017」だが、なんと今年は重大なイベントがもう一つ!

9月17日の11:30開場/12:00開演で行われる、TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウイークエンドシャッフル」 presents 「タマフル映画祭 in したコメ」がそれだ!いつもの「俺達のバルト9」を飛び出して、今回は何と1082席という大劇場である、浅草公会堂での開催が実現!

しかも、今回上映される作品は、あの森田芳光監督作品の中でも異色作とされる映画、『そろばんずく』なのだ!
そこで今回は、この貴重な上映を記念して映画『そろばんずく』を是非紹介させて頂こうと思う。

そろばんずく [レンタル落ち]


ストーリー


バブル全盛期の広告業界で、業界2位の「ト社」に勤める若き営業マン、春日野八千男(石橋貴明)と時津風わたる(木梨憲武)と梅づくしのり子(安田成美)のチームが、業界1位の「ラ社」の桜宮天神(小林薫)の容赦ないやり方に猛然と立ち向かう。

公開から31年!早すぎた野心作『そろばんずく』を、今大スクリーンで鑑賞する意味とは?


本作『そろばんずく』が公開されたのは、1986年の8月。当時やはり大人気だった「おニャン子クラブ」の主演作品、『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』(何と監督は、原田眞人!)と二本立で、夏休み映画として全国東宝系でロードショー公開された。

当時絶大な人気を誇っていた人気タレントによる、初主演映画の二本立て!当然興行的にも大ヒットするだろうとの前評判だったのだが・・・。残念ながら興行的にも批評的にも、この二本立て興業は予想を下回る結果に終わってしまう。

実は自分も、公開初日の日劇東宝で友人と一緒に観賞したのだが、劇場内は立ち見が出る程の超満員だったのを良く覚えている。当時はまだ各回入れ替え制では無かったので、続けて「そろばんずく」を2回鑑賞したのだが、その後はテレビ放映時に1度見返しただけで、つい最近CSで再見するまでは、全く見返すことは無かった。

気になる公開当時の感想はと言うと、正直「うーん、意味が良く判らない?」という物。確かに、劇場内では映画の要所々で笑いが起こっていたものの、テレビで見るとんねるずの笑いとは一味違った内容に、正直かなりの違和感があったことを覚えている。

何しろ当時はまだ、「シュールな笑い」に観客も免疫が無かった時代。テレビで見せるアドリブ満載のギャグや、二人の素の反応の面白さを期待して劇場に駆けつけた当時の観客(自分も含めて)には、きっちりと決められた役柄を台本通りのセリフで演じる「行儀のいい破綻の無い二人」は、ひどく窮屈そうに見えたとだけ言っておこう。

ただ、後年資料を調べて判ったのは、森田芳光監督が主演のとんねるずの二人に、本作でのアドリブを一切禁止していたということ!
なるほど、それでは本来のとんねるずの持ち味が出せなかったのも、無理は無い。

確かに今見返すと、アドリブやハプニング的笑いといった、本来の武器を封じられたとんねるずの二人が、それでもセリフの間やイントネーション、ハデな表情などで新たな笑いを生み出そうと懸命に努力しているのが、画面を通して伝わってくる本作。その点では、現代の若い世代の観客の方が、より本作を楽しむことが出来るのかも知れない。

公開から実に31年が経過した現在、これだけ笑いのジャンルや内容・楽しみ方が多様化した現在の視点から改めて本作を鑑賞することで、当時は気が付かなかった面白さや、また新たな魅力が発見されるのではないだろうか?

当時のとんねるず人気を知らない世代が増えて来ている現在、ぜひこの機会に彼らの全盛期の姿を、劇場で体験・目撃して頂ければと思う。

最後に


森田芳光監督が、本作ではとんねるずに一切のアドリブを禁じたと書いたが、実はエンドクレジット中に一箇所だけ、彼らのアドリブが披露されている!公開当時の劇場でも、実はこの部分で一番大きな笑いが起きていた程なので、ここは要チェック!

公開当時に劇場で見て、正直「?」だった世代も、最近のとんねるずしか知らない若い世代の方も、1000人規模の大劇場で皆が一緒にこの作品を鑑賞出来る機会は、恐らくこれが最後となるかも知れない。しかもイベント当日は、宇多丸さん以下のタマフルクルーによるトークショーも予定されている!という大サービスっぷり!

森田芳光監督のフィルモグラフィ中でも、一際異彩を放つこの早過ぎた野心作の、真の評価を決めるのは、あなた!

是非この連休は浅草公会堂で、この歴史的体験に参加されてみては?

*チケットの購入、及びプログラムの詳細は、下記のリンクよりご確認頂ければ幸いです。
[第10回したまちコメディ映画際in台東、公式サイト]
http://www.shitacome.jp/2017/

[TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」presents「タマフル映画祭 inしたコメ」上映プログラムページ]
http://www.shitacome.jp/2017/program/program_utamaru.html

[オフィシャル・ウェブサイト:TBSラジオ・ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル]
https://www.tbsradio.jp/utamaru/

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(文:滝口アキラ)

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