この恋こそ純愛と声高に言いたい!心が揺さぶられる『オアシス』
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さあ9月。今月のテーマは「わりかし感動しない僕が心震えた映画」にしたいと思います。
そう。僕はあんまり感動しない男。
昔、仲の良かった女の子と韓国映画『ラスト・プレゼント』を観に行き、泣いてるのを余所目に「後半泣かそうとしすぎて必死やったよな?」と薄ら笑い浮かべながら言ったら、2度と連絡が取れなかったという淡い思い出があります。てへ。
何故にそんな事を言ったのか? 鈍感こそ格好いいと思ってたのだろうか。恥ずかしい。
とはいえ、もちろん心震える作品に出会ってるからこそ映画が好きな訳で…。
今月はそんな映画をご紹介。
「もしかしたらこれが本当の純情ラブストーリーなんじゃないか…」
ある日先輩にオススメされて観た、韓国映画「オアシス」。
前科者の青年と脳性麻痺の女性が、世間の無理解に苦しめられながらも互いの愛をどこまでも純化させ、貫き通す姿を痛ましくもピュアに描いた衝撃のラブ・ストーリー。
監督・脚本は「ペパーミント・キャンディー」のイ・チャンドン。2002年ヴェネチア国際映画祭で監督賞と新人賞(ムン・ソリ)を受賞。
あらすじ
暴行、強姦未遂に続いて、今度はひき逃げ事件による2年6ヵ月の刑を終えたばかりのジョンドゥ。出所して家族のもとに戻った彼を、誰も快く迎えようとはせず疎ましい感情を隠そうともしない。
ある日、彼はひき逃げで死なせてしまった被害者遺族を訪れる。しかし、一家は引越しの最中で、部屋にはコンジュという女性一人が取り残される。彼女は重度の脳性麻痺のため手足が不自由で発語にも重い障害を抱えていた。兄夫婦は彼女の名義で障害者用の大きなアパートを手に入れ、そこへ移って行ってしまったのだ。
ジョンドゥはそんなコンジュのことが気になり始めて…彼女に迫り出し…
ショッキングなレイプシーンと回想シーンに心が揺さぶられる
「何よりもコンジュ役のムン・ソリの熱演」
重度の脳性麻痺の患者を、これでもかとリアルに演じる。
家族に見放され1人ぼっちのコンジュ。
「いやこんな簡単に捨てるの?」というくらいポイ。正直、その表情は脳性麻痺そのもの。しかし、きちんとわかってる。寂しい。悲しい。きちんとその表情が窺える。
そして前科者のジョンドゥ。ガサツで暴力的で知恵が浅い。最初はただただヤりたくて、1人ぼっちのコンジュを犯してしまう。
その映像がショッキング。
だって単純に、障害者をレイプしているのだ。
しかもめちゃくちゃ脱がされる。きちんと全裸になる。嫌がるコンジュ。
胸だけ隠れてるとかスカートの下からとか、そんな事務所主義的じゃない。
脳性麻痺の女の子は下着はこんなんで、こんな感じの粗末なパジャマで…
そして脱がされればするりと裸になり、なかなか聞き慣れない喘ぎ声で突かれ続ける。
目を覆いたくなる映像。
しかし思う。こんなんなんだろうな。リアルはこうだろうな。と。
そしてレイプするくらいヤンチャなのに、どこかに彼なりの優しさを見せるジョンドゥと、今までこんな接し方をされたことのないコンジュのストーリーが始まる。
この映画を語る上で、おそらく誰もが1番印象的に感じるシーンが「回想」じゃないだろうか。
コンジュの脳内の願望の映像だろうか?
急にコンジュが健常者として、ウキウキな感じでジョンドゥと触れ合う。
ジョンドゥもそんなコンジュと何の障害もなくコミュニケーションをとり、その辺りにいるカップルのような幸せいっぱいの笑顔を見せる。
しかし、現実は脳性麻痺。
その落差が観てる人間の気持ちを揺さぶり続ける。
そして、彼らなりの幸せをつかもうとするが…思ってもいない結末へ…。
終盤、鼻取れたんかな? って思うほど泣いた。
これこそ純愛。
これこそ心鷲掴みにされちょっとどうしようもない恋。
この恋こそ純愛と声高に言いたい。
いや、いいんですよ?
病気なんです。死ぬんです。わ〜泣ける〜、めっちゃ感動〜、あの映画やば〜い。涙腺崩壊だよぉ〜。
も、全然いいんですけど、こんなズドーンと暗く、汚い部分をきちんと汚く(いい意味で)揺さぶってくれる映画も、もっとヒットしてもいいんじゃないでしょうか?
皆様是非。
(文:南川聡史)
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