『先生!』キラキラした高校生活を送った気持ちになれる5作品

先生! 広瀬すず



(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会



今年は少年漫画の実写映画化の勢いが著しいが、少女漫画も負けてはいない。2010年以降、実写映画化された少女漫画はすでに50本を越え、主なターゲットとなる女子中高生の高い口コミ力によって、映画館の重要な集客に繋がるだけでなく、期待の若手俳優を輩出する機能も果たしているのだ。

このようないわゆるティーン向けの作品を“キラキラ映画”と呼称する傾向があるが、最近ではその中に様々な種類が現れるようになってきた。というのも、ネット漫画を原作にした突飛な設定(『ReLIFEリライフ』や『恋と嘘』)であったり、少女漫画原作でも恋愛が主軸ではないもの(『ちはやふる』など)、ラノベが原作であったりなど。

なぜか若手俳優が出てくる恋愛ものっぽい作品を一括りにする傾向は、どうもしっくりこない。

しかし、真の“キラキラ映画”というのは、往年の少女漫画のムードをそのまま映画に反映させたものである。大前提として原作は少女漫画(少女漫画雑誌に連載されたもの)であり、なるべく女性主人公の目線で描かれていて(『俺物語‼︎』は例外中の例外だ)、学生の恋愛模様を中心に描いたもの。そしてもちろんヒロインは可愛くて、相手役はイケメンでなければならない。(映画は画面を観るものである以上、演者のヴィジュアルに重きを置くのは当然のことである。)

先生! 広瀬すず 弓道着



(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会



さて、前置きが長くなったが、10月28日から公開される『先生!、、、好きになってもいいですか?』は、王道の少女漫画を、極めて王道のスタイルで映画化した、正真正銘の“キラキラ映画”なのである。

“キラキラ映画”愛好家である筆者は、嬉々しながら試写室に足を運び(普段は行かない朝一番の上映に行きました)、とても清々しい気分で試写室を後にしながら作品を反芻し、一時的にも主人公たちと同じキラキラした高校生活を送ったような錯覚を楽しんだのである。

今回は、このような王道〝キラキラ映画〟の傑作を5本ピックアップして紹介したい。筆者が個人的に記録している少女漫画が原作の映画の中から、悩みに悩んで厳選した5作品である。

『アオハライド』



アオハライド



まず今回の『先生!、、、好きになってもいいですか?』を手がけた三木孝浩監督が咲坂伊緒の大ヒットコミックを映画化した王道純愛一直線の最高傑作。本田翼と東出昌大のカップリングの最強さに、高畑充希演じる恋敵のインパクト、そして千葉雄大をはじめとして、吉沢亮など、その後ブレイクを果たした若手俳優も顔を揃えている。原作の世界観の活かし方と、長崎のロケーションが実に見事!


『近キョリ恋愛』



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こちらは先日『きょうのキラ君』が映画化されたみきもと凛の代表作。『先生!』と同様に、教師と生徒の禁断の恋愛となれば、この映画を忘れてはいけない。同じ年に『渇き。』で衝撃的なデビューを果たした小松菜奈が、バッサリと髪を切って少女漫画ヒロインに。本作の後も『黒崎くんのいいなりになんてならない』や『溺れるナイフ』とこのジャンルには欠かせない存在になっているのだ。


『ひるなかの流星』



ひるなかの流星



今年公開された〝キラキラ映画〟の中で、いや、これまでの〝キラキラ映画〟の中でもベストと言ってもいいほど完璧に作り込まれた本作は、よくよく考えたら教師と生徒と生徒の三角関係。展開のスピード感、舞台となる吉祥寺への愛情、そして逐一魅力的な演出の数々。どこを切り取っても最高の出来栄え。

広瀬すずに負けず劣らず、ティーンから絶大な人気を誇る永野芽郁が演じるヒロインと、生田斗真が2007年版『花ざかりの君たちへ』で演じた中津秀一を2011年版で演じた三浦翔平という組み合わせは、妙な共通点を感じさせる。


『今日、恋をはじめます。』



今日、恋をはじめます 【TBSオンデマンド】



ここまでの3作品とも、青春ラブストーリーを主軸にして、若干のコメディ要素を加えている作品ではあるが、コメディに振り切った作品を求めるならば間違いなくこれしかない。冴えない主人公が、学校一のイケメンと恋に落ちて魅力的に大変身を遂げるという、日本版『シーズ・オール・ザット』。

劇中に流れるJ-POPの数々、SEKAI NO OWARIからback numberに、ねごとまで。今考えるととてつもなく豪華である。

『先輩と彼女』



先輩と彼女



基本的に〝キラキラ映画〟はメジャー系の娯楽作品に寄ったものが多いけれど、本作だけは落ち着いたミニシアター的な雰囲気を漂わせる。それはやはり、池田千尋監督のセンスの賜物。

2巻しかない短い原作のすべてを一本の映画に詰め込んだ卓越した脚色に、見せ場のひとつでもあるアメが降ってくるショットや、部室の窓辺のシーンの照明も素晴らしい。そして何より、本作公開直前まで放送されていた『表参道高校合唱部!』からの芳根京子と志尊淳のコンビに勝るものはない。

『先生!、、、好きになってもいいですか?』






(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会



そして、今年下半期の目玉とも言える本作。すでに映画化された『高校デビュー』や『俺物語‼︎』を超える河原和音の人気コミックを原作に、おとなしい少女がぶっきらぼうな教師に想いを寄せる姿を綴った、切なすぎる一本だ。

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』で知られる岡田麿里の、『暗黒女子』に続く実写脚本の秀逸さによって、ひとつひとつのセリフが綺麗に彩られているのが印象的だ。何と言っても健太郎が駅まで迎えにくるシーンと、クライマックスで森川葵が広瀬すずを説得するシーン、そして生田斗真の部屋での竜星涼と比嘉愛未の3人でのシーン。この3つは本当に素晴らしい。

徹頭徹尾、繊細な物語を丁寧に演出した三木孝浩のポテンシャルの高さにも目を見張るものがあり、最後にはスピッツの書き下ろした主題歌で心が癒される。
まだ〝キラキラ映画〟に抵抗がある人でも、邦画の一線級のスタッフ・キャストが作り出した本作は必見である。

(文:久保田和馬)

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