映画コラム

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2017年11月10日

劇場でその音を「体感」せよ!THE YELLOW MONKEYの裏側に迫る『オトトキ』。松永大司監督インタビュー

劇場でその音を「体感」せよ!THE YELLOW MONKEYの裏側に迫る『オトトキ』。松永大司監督インタビュー

2001年に活動を休止した日本を代表するロックバンド、THE YELLOW MONKEY。
活動休止から15年を経て2016年に再結集。
36万人を動員したツアーによって見事な復活を遂げました。
ドキュメンタリー映画「オトトキ」は、その復活の1年間に密着取材した映像と関係者の証言によって構成された作品です。
ライブの臨場感と等身大のメンバーの姿を通して「体感するドキュメンタリー映画」を作り上げた松永大司監督にお話を伺ってきました。




撮りたかったのは「人」


-作品を拝見して、THE YELLOW MONKEYのファンの方だけではなく、あまりなじみのない方でも興味深く鑑賞できる作品だなと感じました。

松永:僕がこれを監督するにあたり、ファンでない人、このバンドを知らない人が見ても、何かが伝わるものにしたいというのがありました。

-撮影にあたって、事前に「これを中心にカメラを回そう」といったことはありましたか?

松永:その瞬間その瞬間に撮りながら自分が感じていくことに、なるべく素直にカメラを向けていこうと思ったので、何が撮りたいかということで言えば、「人が撮りたかったです」。
基本的には演奏を綺麗に撮るというより人を撮りたい、ということを考えていました。
ライブ撮影している時にも、アーティスト側の映像クルーもたくさんいるんですけど、僕のチームの表現として指示をしたのは、とにかく顔を撮ってくれと。


-それは表情ということですか?

松永:そうですね。「演奏」を撮るっていうより「演奏している人」を撮るっていう。
とにかく顔。
ちょっとしたこと、本当にちょっとしたことでいいんですよね。
それを残さず撮りたいっていう。


-確かに映像の中で描かれる人間関係がとても興味深かったです。

松永:そうですね、撮っていてもそこがすごく興味深かったです。
人前で演奏しているんだけれども、人を意識するほど、自分が隠せなくて出てきちゃう。
だからライブ映像の方がバックステージの1対1で撮っている時よりも、その人が表れる。
1万人とか2万人の前では、その人が嘘をついてたり、着飾っているっていうのも、すぐ観客にばれてしまう。


-面白いですね。飾ろうとする部分が実はその人の本質をあぶり出す。

松永:そう、逆なんですよ。
多分間違いなくて、その方が剥ぎ取られてその人の本質が出てくる。




-一方で最後まで見えなかったものっていうのはありましたか?こういう話を引き出したいと思っても、なかなかそこを引き出せないっていうことは。

松永:もちろん答えを聞きたい時もあるんですけど、答えそのものが必要ではなくて。
その答えに対して答えるまでの間が答えだったりする。
例えば吉井さんに質問して、はっきりと答えてもらえなくても質問に対する吉井さんの反応が全てっていうか。
別に答えはなくても、無言だったりといったリアクションが雄弁に語ってる。
言葉って別にいくらでも嘘つけますから。


-それが答えとも解釈できるし

松永:そう。そっちの方が見たい。
それは多分、文字だと見えないんですよね。
文字にすると、あっさりしてるんですよ。「いやーそれはないですよ(笑)」とかね。
でも、その瞬間は文字よりも、間だったりとか、吉井さんの顔だったり、他の人のインタビューとかもそうなんですけど、雄弁に語っている。そこが映像の、文字では表すことのできない特徴だと思っているので。



全体の流れのリズムを音のメリハリで作って。



-とはいえ劇中の演奏シーンも「音」に力があって、ライブ感がありました。

松永:そこは相当こだわりました。
劇場で見ていただくのを前提に、かなり頑張って作りました。
オンとオフとは言わないですけど、僕らと変わらない、親がいたり子供がいたりする一方で、そういう人たちがステージに立つと、ものすごく輝いて見える。
そういう圧倒されるようなオンとオフ、メリハリをつけたいなと思ってました。
だからライブに関してはそこを体感できるようにっていうのは、音の仕上げの時にエンジニアさんと相当考えながらやりました。
ライブと全く同じものはできないんですけど、でも、何かこう感じるものになったらいいなと。
理屈じゃなくてね。





-劇場のような大きな空間だと特に体感の度合いが上がりそうですね。

松永:だから劇場で観てもらいたいっていうのがすごくあるんですよね。
これが例えばドラマ、僕のデビュー作の「ピュ〜ぴる」みたいなものだったら、家で観てもらっても多分そうは変わらないと思います。
ただ、この「オトトキ」に関しては、劇場の大きなスピーカーで観るのと、家で観るのとでは、体感が全く違うと思います。
物語の全体の流れのリズムを音のメリハリで作ってたりとかするので。


-選曲に関しての基準は?

松永:心情ですね。
僕は基本的には人を撮ろうと思って始めた。でも、この4人を撮っていく中で、「4人の個性が表れている場所はステージである」という当たり前のことに到達した時、この人のある心情を表現できるのはどの曲だろう? このライブのこの曲かな?というように。


最終的には何かの希望が欲しい



-デビュー作の「ピュ〜ぴる」に始まって「死」や「復活」といったモチーフ。希望を求めて足掻く人たちよく描かれていると思いました。今回のTHE YELLOW MONKEYも一度解散という、ある意味では死んだものが蘇って先に進む様子が描かれるともいえます。

松永:そうですね。いろんな映画があっていいと思うし、圧倒的にネガティブで終わる作品もすごい好きですけど、自分が作るものに関していうならば、最終的には何かの希望が欲しい。
自分の映画をお客さんが見たときに、何かの希望を微かで良いから感じるものを作りたい。


-「トイレのピエタ」なんかもそうですけど、八方塞がりだけど、最後にふわっと開ける心地よさを感じます。

松永:ドキュメンタリーであれ、フィクションであれ、そこは抽出したいと思ってます。

-劇映画とドキュメンタリーをまたいで撮られていますが、それぞれで制作に関しての違いはありますか?

松永:そうですね。期せずして、「トイレのピエタ」という劇映画の後にドキュメンタリーのお話が来たっていうのは、僕のスタンスなのかなって。
ドキュメンタリーは大変だから、頻繁にはできないけど、この話を頂いた時に、今までの自分じゃないものに挑戦しようと。
劇映画を撮る上で、ドキュメンタリーを撮ることは良い意味での刺激になってます。


-コントロールフリークではない。キューブリックのような。

松永:じゃないですね。キューブリックの映画すっごい好きだけど。

-それこそライブ感のあるようなやりとりですか

松永:そうですね。それがすごい楽しい。


松永:THE YELLOW MONKEYに関するドキュメンタリーということで、ファン向けの映画だろうと思われてしまうのは嫌だなと思っています。
一つの物語として、誰が見ても何かを感じられるような普遍的なテーマを見つけ、そこを撮りたいと思っていました。
なので入り口で毛嫌いせず、こういう大人たちが楽しみながらも、もがきながらも生きてるんですよっ、て知ってもらえたらいい。
そして、興味がわいたその先で彼らの音楽を聞いてもらえたら嬉しいし。
ぜひ劇場で「体感」して欲しいです。


映画「オトトキ」は11月11日より全国ロードショー。
公式サイト:
https://theyellowmonkey-movie.jp/



(C)2017映画「オトトキ」製作委員会

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