『ジャスティス・リーグ』など、ヒーロー・クロスオーバー映画快作ラッシュ!



(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


11月23日から公開となったザック・スナイダー監督作品『ジャスティス・リーグ』は、バットマンやワンダーウーマンなどDCコミックスが生んだ人気スーパー・ヒーローたちが一挙集結する一大エンタテインメント大作であり、ヒーロー映画の醍醐味をとくと堪能できる快作です。

思うにこのところ、『マイティ・ソー バトルロイヤル』や『BRAVE STORM』など、さまざまなヒーローたちが終結するクロスオーバー作品がやけに増えてきている気もしますが、そのどれもがファンの期待に応えるものに仕上がっているのは嬉しいところ……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.272》

ならば、ちょうどよい機会なので、それらをざっと総括してしまいましょう!

ジャスティス・リーグとアベンジャーズ
アメコミ・ヒーロー映画の隆盛


やはり、まずは『ジャスティス・リーグ』でしょう。



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1960年、それまでDCコミックスに登場したスーパーヒーローたちを一堂に集わせた最強チーム“ジャスティス・リーグ”の物語が始まり、以来、コミックやアニメ、ゲームなどでそのつどメンバー編成を替えながら魅力的なドラマを現在まで紡いできています。

実写映画でこの世界観を描くのは今回が初めてとなりますが、実質的には同じザック・スナイダー監督による新たなスーパーマン映画『マン・オブ・スティール』(13)を第1作にDCヒーローたちのクロスオーバー“DCエクセンデッド・ユニバース映画”企画がスタートしており、続く第2弾『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』(16)のラストに直結したのが『ジャスティス・リーグ』となるのです。

さまざまな思惑によって“人類最大の敵”とされてしまったスーパーマンとバットマンとが戦うはめになり、最終的には誤解こそ解けるものの、スーパーマンが命を落としてしまうという『バットマンVSスーパーマン』の衝撃の結末からまもなく、今回は世界滅亡の危機をいち早く察知したバットマンが、ワンダーウーマンとともにフラッシュとアクアマン、サイボーグといったヒーローたちをスカウトし、ジャスティス・リーグを結成し、3つのマザーボックスをそろえて地球制服を目論むステッペンウルフの魔手に立ち向かっていきます。



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映画としてのヒーロー・クロスオーバーは、DCのライバルでもあるマーベル・コミックスのアイアンマンやマイティ・ソー、超人ハルクらスーパー・ヒーローを集結させた『アベンジャーズ』(12)以降の“マーベル・シネマテイック・ユニバース”シリーズのほうが先で、現在公開中の『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17)はその最新作でもありますが、ここ数年マーベル・ヒーロー映画に比べてDCヒーロー映画はどことなく重く暗い印象をもたらすものが目立っていました。

その始まりはクリストファー・ノーラン監督によるバットマン“ダークナイト”3部作(05・08・12)からで(それ以前のティム・バートン監督による89&92年の『バットマン』2部作もトラウマまみれでかなり暗いものがありましたけど⁉)、ザック・スナイダー監督の『マン・オブ・スティール』(13)から『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』にかけての重々しさは、それはそれで閉塞的な現代を反映した独自の魅力を放つものではあれ、かつてのクリストファー・リーヴ主演による爽快な『スーパーマン』4部作(78~87)の時代などを知る側としてはどこか違和感を抱かないでもありませんでした。

しかし、その後のダークで超ワルな特殊部隊の活躍をポップに描いた『スーサイド・スクワット』(16)や、主演ガル・ガドットの美しさと逞しさが際立つ『ワンダーウーマン』(17)によって、21世紀のDCヒーロー路線も徐々に軌道修正がなされていき、単に重苦しいだけではなく、その中からカッコよさや粋な部分を前面的に押し出すものへとDCヒーロー映画はシフトしていったように思われます。

その一つの完成形が『ジャスティス・リーグ』であると断言できます。



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ここではザック・スナイダー映画ならではの重厚さを湛えつつ、ヒーローたちそれぞれのスピード感や力強さなどが巧みに調和されており、結果としてそれぞれのヒーローたちの魅力が十二分に引き出された快作に仕上がっているのです。

こうした成功の理由のひとつに、“世界最速の青年”フラッシュを今回のメンバーに入れたことも大きいでしょう。

マーベルも『スパイダーマン ホームカミング』(17)でスパイダーマンことピーター・バーカーをやんちゃな高校生に設定し、さわやかな青春映画テイストを醸し出していましたが、こちらのフラッシュことバリー・アレン青年も、演じるエズラ・ミラーの愛らしさによってかなり軽快度が増しています。

アクアマンやサイボーグといった日本ではあまりなじみが薄かった面々も、10月に公開されたばかりの日本のFROGMAN監督によるフラッシュ・アニメのとてつもない爆笑快作『DCスーパー・ヒーローズVS鷹の爪団』(17)に彼らを登場させていたことが大いにプラスになっているようです。
(ジャスティス・リーグの面々が日本に来て悪の秘密結社・鷹の爪団とタッグを組むこの作品、『ジャスティス・リーグ』と合わせて見るとお楽しみも倍増すること必至! 特に今回のワンダーウーマンがふと漏らす笑顔などは、『DCスーパー~』の中でメイクアップされて思わずアヒル口になるワンダーウーマンを彷彿させるものあり!)

しかし、ここまで記していくと、どうしても一人欠けていることにお気づきでしょう。

そう、スーパーマンは一体どうなってしまったのか?

だって、死んじゃったじゃない!

まあ、みなさんそのままで終わるとは思ってませんよね。

では、どうなるか?

それは見てのお楽しみということで!
(とりあえずスティーブン・キングのファンならば、思わず声を上げてしまうような事態が起きてしまうことだけお伝えしておきましょう!?)



あと、特筆すべきは今回の音楽です。全体のスコアはダニー・エルフマンが担当していますが、それとは別に今回は過去のDCヒーロー映画群の主題曲のメロディがイントロ当てクイズのようにいろいろ登場してきますので、そちらもお楽しみに!

なお、DCエクセンデッド・ユニバース映画は今後、18年に『アクアマン』『シャザム』、19年に『ワンダーウーマン2』『サイボーグ』『グリーンランタン・コア』が、“マーベル・シネマテイック・ユニバース”シリーズは18年『ブラックパンサー』『アベンジャーズ/インフィニテイ・ウォー』『アントマン&ワスプ』、19年『キャプテン・マーベル』『アベンジャーズ4(仮題)』がそれぞれ製作されていく予定です。

シルバー仮面とレッドバロンのコラボ
大成功の必見作『BRAVE STORM』


さて、アメリカではこのようにDCとマーベル、二大コミックスから生まれたヒーローたちが現在しのぎを削りながら巨悪に立ち向かっていますが、実はヒーロー大国でもある日本でも、かつてのヒーローたちがクロスオーバーする作品群が増えてきています。

その中でも1970年代前半の特撮TVヒーロー・ブームの中から宣弘社が製作した『シルバー仮面』(71)と『スーパーロボット レッドバロン』(73)を新たな構想の下にドッキングさせた『BRAVE STORM ブレイブストーム』は、特撮ファン垂涎の快作として強く推したいところです。



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お話は2050年の未来からシルバー仮面(大東)を含む春日兄妹がタイムリープして現代に現れ、やんちゃな青年・紅健(渡部秀)に新型巨大ロボット・レッドバロンを操縦させて地球制服を目論むキルギス星人が繰り出すブラックバロンを駆逐させようとするもの。

最近の国産ヒーローをリブートさせた映画はかなり増えてきていますが、現代性にこだわるあまりオリジナルのデザインや設定などを改変して失敗するパターンが多く見られますが、本作もオリジナル・どんぴしゃり世代としては正直なところ今回のシルバー仮面とレッドバロンのデザインを見て「これは違う!」と感情的になっていました。

しかし、いざ作品を見始めると、世界観が実に昭和の古き良きSFテイストを巧みに踏襲しており(キルギス“星人“なんて名称からして、今のSFじゃやりませんよね。あと“奴隷人間”とか、宇宙人を見わける特殊メガネといったアイテムとか)、またそれぞれのキャラクターが実に魅力的に引き立っていて、ワクワクすることこの上なし!

もうデザインや設定の改変など全然気にならなくなり、本作独自の世界観にのめり込むこと必至!



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個人的には紅健の兄でレッドバロンを開発する紅謙一郎博士に扮した吉沢悠の、天才だけどこの映画の中で一番お子ちゃまな雰囲気とか、春日兄弟の長女扮した壇蜜のエロさ(それにしても、昔から特撮ものとエロティック系の女優って妙に相性が良いものなのですが、それは一体どうしてなのでしょう?)、そして次女役の山本千尋が魅せる華麗かつ壮絶なソード・アクション!

そう、この作品、巨大ロボット同士のバトル(メインとなる舞台は初代『ゴジラ』を彷彿させる銀座や国会議事堂前!)に等身大ヒーローのアクション、そしてヒロイン・アクションまできちんと網羅しており、もう至れり尽くせりのサービスぶり!

ドラマ自体はツッコミどころも満載なのですが、それらのすべてが微笑ましく許せる類のもので、少なくとも上から目線で侮蔑したくなるものではありません。

また低予算作品であることも想像できる箇所もありますが、その一方でよくぞここまで! とうならされるVFXシーンの数々に、映画作りの最終ポイントはやはりセンスとそれを実践させる意欲なのだなと、改めて気づかされます。



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惜しむらくはこの作品、現在MX4D上映がメインで通常の2D上映館が少なく、しかも短期間での公開形態だったので、どうしても入場料金が割高になる分、ディープな特撮マニア以外なかなか足を運びづらいものもあったのですが、作品を見た観客の口コミがどんどん広がっていき、現在少しずつですが2D上映での公開館が全国に拡がってきています。

監督はウルトラマン・シリーズ映画の一大傑作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(09)のプロデューサーとして知られる岡部淳也。作品に対する粘りとこだわりが見事に結実させた、ヒーローをリブートさせたクロスオーバー映画のお手本として強くお勧めしたいところです。

なお、この作品も続編の可能性を大きく匂わせる終わり方になっていますので、ここは何とか特撮ファンはもとより映画ファンの力で興行を成功させ、パート2の製作を実現させていただきたいものです。
(実現したら、おそらく宣弘社が生んだもうひとりの、あのヒーローが登場するはず!)


これからもまだまだ続く
ヒーローたちのコラボレーション!


さて、この後も日本では実写やアニメを問わず、ヒーロー・クロスオーバー作品がいろいろ登場します。

12月は歴代仮面ライダーが大挙登場する『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』がお目見え。タイトル表記の面々に加えて今回はゴースト、鎧武、フォーゼ、そしてオーゼが登場します。



ウルトラマン・シリーズもそうですが、仮面ライダー・シリーズも昭和の時代から歴代ヒーローを登場させて華やかなクロスオーバーを展開させてきましたが、これは製作元の東映がもともと“忠臣蔵”のようなオールスター時代劇映画の製作に長けていたことなどとも無縁ではないでしょう。

おかげで仮面ライダーの平成映画シリーズは、歴代ライダーだけでなく、原作者・石ノ森章太郎が過去に構築してきたイナズマンや宇宙鉄人キョーダイン、大鉄人17などの昭和ヒーローから、同じくスーパー戦隊シリーズに宇宙刑事ものなど巧みにクロスさせながら、“東映ヒーロー・クロスオーバー”路線を展開し続けています。

東映のこうした傾向はアニメーションのジャンルでも昔から見られるもので、古くは『マジンガーZ対デビルマン』(73)『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦!大海獣』(76)などの永井豪原作ものが有名ではありますが、来年1月には久々の劇場用新作映画『マジンガーZ INFINITY』が公開。こちらはマジンガーZだけでなく、兄弟分ともいえるグレートマジンガーも登場します。

女の子向けでも、歴代プリキュアを多数登場させた映画シリーズも毎年の恒例となっています。今年は春に『映画プリキュアドリームスターズ!』が、秋に『映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』が公開され、ともにヒットしていますね。



またタツノコプロでは現在、科学忍者隊ガッチャマンや新造人間キャシャーン、破裏拳ポリマー、宇宙の騎士テッカマンといったタツノコ・レジェンド・ヒーローを集結させたTVアニメ『Infini-T Force』を放送中ですが、来年2月24日にはその劇場版『『Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』が公開予定です。

東宝も現在アニメ映画『GODZILLA 怪獣惑星』が公開中ですが、その続編となして来年5月に公開される第2弾『GODZILLA 決戦機動増殖都市』にはメカゴジラが登場するとのニュースが入ったばかり。

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ゴジラ・シリーズもまた、歴代怪獣たちのクロスオーバーによって今まで成り立ってきている部分が多々あり、また現在ハリウッドでは日本の名作『キングコング対ゴジラ』(62)に倣うように日米モンスター夢の共演『ゴジラ対キングコング』(仮題)が製作中。こちらはモスラやラドン、キングギドラも登場する予定と聞いております。

ゴジラといえば、大映が生んだ大怪獣ガメラ、松竹の宇宙大怪獣ギララ、そして日活の大巨獣ガッパとのコラボが実現できないものかと、昔から特撮マニアの間でよく語られがちではありますが、せっかくのクロスオーバー・ブームですから、ここはひとつ、どなたか映画界のツワモノに立ち上がっていただき、この夢の企画を実現させてくれないものかなと祈らずにはいられません。

仮面ライダーとウルトラマンだって、過去に一度だけオリジナルビデオで『スーパーバトル ウルトラマンVS仮面ライダー』(93)が製作されていますしね。
(最後に仮面ライダー1号が巨大化して、ウルトラマンと共に敵と戦うのには、さすがに仰天したものでしたけど!?)

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(文:増當竜也)

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