映画コラム

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2017年11月25日

新しい解釈や想定外のことを仰ってくれたら嬉しい─『永遠のジャンゴ』エチエンヌ・コマール監督インタビュー

新しい解釈や想定外のことを仰ってくれたら嬉しい─『永遠のジャンゴ』エチエンヌ・コマール監督インタビュー

11月25日(土)より公開の『永遠のジャンゴ』。ロマ(ジプシー)音楽とスウィング・ジャズを融合させた音楽で、後のミュージシャンたちに多大な影響を与えたジャズギタリストのジャンゴ・ラインハルトを描いた伝記映画です。





シネマズbyu松竹ではエチエンヌ・コマール監督にインタビューを実施し、作品について様々な角度から伺ってみました。

──監督は今回、初来日でしょうか。

エチエンヌ・コマール監督(以下、監督):7年前に家族で日本で来日しました。日本一周をさせて頂いて、様々な魅力を体験できました。久々に日本に来られてとても嬉しいです。

──監督にとって日本のイメージはどのようなものでしょうか。

監督:様々なイメージのある国だなと思います。東京の都市部の建築などはとても素晴らしいですし、地方の自然も美しい。全体を通して洗練されてるなと思います。

谷崎潤一郎の小説『陰翳礼讃』が大好きなので、そこから抱く日本というものも私の中にはありますね。新しい景色に出会えば出会うほど、イメージはより複雑になり、同時に日本への好意も増しています。

──本作は初監督作品ですが、なぜジャンゴ・ラインハルトの映画を作ろうと思ったのですか。

監督:たくさんの映画の題材が転がっているように見えますが、意外とそんなことは無いのです。人との出会いのように「これだ!」と思う瞬間が映画化の題材との出会いなのです。

──今回はジャンゴに呼ばれた感じですね。

歴史の中で混沌とした時代を生きているアーティストを描きたいと思っていた中で、引き寄せられました。ジャンゴの事はもちろん知っていましたが、映画で描いている時代のジャンゴについては詳しくは知りませんでした。それを知った時にはもう映画化するしか無いと思っていましたね。

──脚本執筆の作業について教えてください。

監督:彼がどのように時代を生きていたかは記録などを元にガイドラインを作れますが、行間は抜けています。

それら行間をどう発明していくのかが私たちの作業です。

事実は証言として残されたものがあり、ジャンゴの本のエピソードや、ご家族から伺ったエピソードの積み重ねをどう物語にするか。その物語を作るためにフィクションや想像を織り交ぜます。

例えば、パリのムーラン・ルージュで彼が演奏していた時に、ドイツ将校が楽屋に来たという事実は記録として残っています。その事実を元にその場面をどう映像にし観客に伝えるか、これは私たちが発明をします。その発明によって現実により近づけていくのです。

その意味での史実とフィクションが織り交ぜられています。




──音楽の演奏シーンのこだわりなどはありますか。

監督:演奏シーンのみで楽しめるようには意識しましたが、あくまでもドラマのストーリーテリングの一環であるということを心掛けました。

彼が置かれている状況であるとか、人となりとか、サスペンス的なことも含めて演奏シーンを作り上げました。

音楽が一つの言語ともなるように心掛けました。

──戦争の描き方、善悪の描き方などで意識した点はありますか。

監督:あの時代は善悪や白黒がわかりにくい時代であったと思います。フランス人であっても、ナチス信奉者でもそうでなくても、善人・悪人双方いたと思うのです。

周囲のそういった人物はナチスの人物含めて意図的に曖昧さを残しました。

一方、ジャンゴの内面的な戦いに関しては徹底的に描いています。音楽や様々な行動・言動を通して、ジャンゴの信念をしっかり描いています。彼が思う善悪については、みなさん自身も考えてほしいなと思いますね。

──主演のレダ・カテブさんをキャスティングされた理由を教えてください。『ゼロ・ダーク・サーティ』で拷問されていた役と一変していて驚きました。

監督:あなたをそう驚かせるために、彼をキャスティングしたのですよ(笑)。

というのは冗談で、でも彼の演技は本当に素晴らしいですよね・。

一番いいキャスティングをしたいと思ったんです。もしうまくいってなかったら後悔することもありますが、全く後悔なしです。

本当に彼を信じてよかったです。全身全霊で演じてくれましたね。

──そんな主人公ジャンゴの周囲の女性たちも印象的でしたね。

監督:周囲の女性たちは皆強い女性なんですよね。彼の周りでそれぞれの役割を持ちながら、そこにいたのでしょうね。

意思決定は母、家庭生活や軌道から外れそうになって引き戻すのは妻なんです。

また、彼には愛人がたくさんいましたが、別の世界を愛人たちによって体験できたようです。




──現代の国際紛争や政治、音楽について意識されたものはありますか。

監督:こういう時代のアーティストを描くことで、現代のアーティストへ何か響けばなと願ってはいます。

また、言論の自由という意味では今でも規制がある国があります。自由に思っていることを言えなかったり、歌にできない国がありますので、その部分のメッセージ性は含んでいます。

──映画の感想は人それぞれですが、本音として監督は観客にどう感じてほしいですか。

監督:正直、自分のために作ってるところはありますが、感動してくれたらうれしいです。

また、私自身が見えていない新しい解釈や想定外のことを仰ってくれたら、うれしいかもしれません。もちろん、微妙だったという意見があれば受け入れます。

何かみなさんの心に共鳴するものがあって、何かを感じてくれたら嬉しいですね。



『永遠のジャンゴ』は11月25日(土)より公開中。是非劇場でお楽しみください。

http://www.eien-django.com/

(取材・文:柳下修平)

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