大傑作『パディントン2』完璧な脚本がスゴい!松坂桃李の吹替版がオススメなその理由とは?



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子供向けの作品と思いきや、意外な大人向けの内容とクオリティの高さに、観客から高評価を得た映画『パディントン』。

現在公開中の『パディントン2』は、その待望の続編。今回は個人的にも期待大の本作を、公開二日目夜の回で鑑賞して来た。実は、上映時間帯の関係で日本語吹き替え版での鑑賞となったのだが、果たして前作のクオリティを越えられたのかどうか?

ストーリー


前作の冒険を経て、めでたくブラウン家の一員となったパディントン。人間の言葉を話し紳士的な態度の彼は、町中の人々に愛される人気者となっえいた。そんなある日、パディントンの家族でペルーに暮らすルーシーおばさんの100歳の誕生日プレゼントにピッタリの「飛び出す絵本」を見つけたパディントン。しかし、彼の目の前でその貴重な絵本が盗まれてしまう!しかも現場にいたパディントンが犯人と間違えられて、刑務所に送られてしまうのだが・・・。(公式サイトより)


予告編


完璧な伏線回収と連続するアクション!映画ってこんなに面白い!


結論から言おう、いや、確かにネットの高評価通り、これは面白かった!
前作を越える見事な伏線回収と、世界に一冊しか無い「飛び出す絵本」を巡る大争奪戦の面白さ。子供向けの映画と思って見に行っては失礼にあたる程良く練り込まれた脚本と、「ここまでやってくれるのか!」と思わずにはいられない観客へのサービス精神には本当に頭が下がる思いがした本作。

前作で、めでたくブラウン家の一員として迎えられた、人の言葉を喋る子グマのパディントン。続編となる本作では、彼の更なる冒険や人間たちとの絆と並んで、意外にも初めて覚えるブラウン一家への不信感と、厳しい社会の偏見から受ける差別と挫折までもが描かれることになる。

無実の罪で刑務所に収監されたパディントンが、ある行き違いによる誤解から、初めて家族であるブラウン家の人々に疑いの気持ちを持つ、という苦い描写。実はこれが本当に良く計算されて造られている。

前作で明らかにされた、パディントンがいつも来ている青いダッフルコートの秘密。実はブラウン家の父親ヘンリーが子供の頃に着ていた服であり、それが娘ジュディから息子ジョナサンへと受け継がれ、家族の証としてパディントンに渡されたという大事なコートだ。

ところが、刑務所のパディントンがブラウン一家への信頼や絆を疑い脱獄を決意する、というシーン。実はパディントンは囚人服姿であり、家族の絆の証であるコートを着ていないのだ。この様に、セリフに頼ることなく自然と観客に状況と心情を理解させる手法は実に見事!。

家族の一員だと信じていたブラウン一家に裏切られたと思ったパディントンは、最終的に自身の死を覚悟する状況にまで追い込まれることに・・・。しかし、その最大の危機を救うのが、やはり周囲の人々の善意であるという素晴らしさ!

しかもかれらの善意こそ、実はパディントンが今まで周囲の人々に振りまいて来た親切と善意のお返しなのだ。本作で繰り返し登場する印象的なセリフに「親切な人に世の中は優しい」がある。

刑務所に入ったパディントンの生活と対比して描かれる、彼が消えた後の街の人々の生活の味気無さや、ギスギスした日常の様子を見れば、パディントンがいかに周囲の人々に対して誠実で親切だったかは明らかだ。

そう、このシリーズで一貫して描かれるのは、外見や肩書きで判断される厳しい世の中において、実は普段の誠実な行いの積み重ねこそがその人の判断基準・信用であり、人との繋がりこそが自身にとっての最大の財産である、ということ。

セレブである元人気俳優が悪役で、パディントンに協力するのが一見凶悪そうな囚人たちと言う設定も、実にそのことを象徴していると言えるだろう。



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今までパディントンが蒔いて来た「善意のタネ」が人々の心に根付き、ついに花を咲かせて収穫の時を迎えるこの展開こそ、前作の冒頭でマーマレードの収穫の時が来た!と、喜んで叔父さんに報告したパディントンの姿に重なる物なのだ!この見事過ぎる展開に加えて、ラストの列車チェイスシーンで描かれる怒濤の伏線回収の素晴らしさ!

今まで積み重ねられた何気ない描写が、一気に集約して重要な役割を果たすこの列車チェイスシーンの脚本の凄さは、正に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」級!更にラストで観客を待つ、人々の善意のお返しがもたらしたパデイントンと叔母さんへの最高のプレゼントとは何か?

「映画って面白い!」絶対にそう思えるこの「パディントン2」。絶対に劇場で観ないと、後悔することは確実の大傑作です!



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やはり観るなら、松坂桃李の吹替版が絶対オススメ!


今回鑑賞したのは、パディントンの声を松坂桃李が演じた日本語吹替版だったのだが、これが素晴らしい出来!

英語版のベン・ウィショーだと、やはりパディントンが大人の様に見えてしまい、字幕を読んでセリフの意味を理解するという手間もあって、中々作品の世界に集中して入り込めないと感じた本作。その点松坂桃李の吹替は、パディントンの幼さと礼儀正しさ、そして誠実さを見事に表現していて実に安心して観ていられる。

その他の吹替キャスト陣も素晴らしく、特にブラウン家の父親ヘンリーの声が古田新太だったのには、鑑賞後に初めて気が付いたほど!悪役のブキャナンを演じた斎藤工も実に楽しそうに演じているなど、非常に聞き所?の多いこの吹替版。

万が一字幕版が満席の際は、迷わず吹替版での鑑賞をオススメします!



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最後に


実はこの続編では、映画の冒頭でパディントンと叔父さん叔母さんとの出会いが描かれている。

血縁関係の無いこの3匹が、どの様にして出会い、共に暮らす様になったのか?その意外だが感動的なエピソードは、是非劇場でご確認頂ければと思う。血の繋がりの無い自分を育ててくれたルーシー叔母さんの恩に報いるため、誕生日プレゼントにそれ相応の「物」をプレゼントしようとしていたパディントン。

残念ながらその願いは果たせなかったが、映画のラストでプレゼントされた「もの」の意味と素晴らしさ!そして、そこに込められた人々の気持ちと、積み重なった善意が呼ぶ奇跡に、貴方もきっと涙するはず。

だがこれは、パディントンが窓拭きのバイトでコツコツと小銭を溜めて、プレゼントの絵本を買おうとしていたことと同じ。そう、パディントンの普段の親切な行動が、人々の心に「善意」と「優しさ」を少しずつ溜めて行った結果なのだ。

ルーシー叔母さんがパディントンに送った「親切な人に世の中は優しい」という言葉。その言葉の意味と力を観客に見せてくれるこの素晴らしいラストを観るためだけでも、劇場に足を運ぶ価値は十分にあり!全力でオススメします。

(文:滝口アキラ)

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