アカデミー賞特集 主演女優賞編:今年のノミネートは“4人”??
Photo credit: lincolnblues on Visualhunt / CC BY-NC-ND
現地時間3月4日に発表される第90回アカデミー賞。その主要部門を解説していく当コラム。
第4回は「主演女優賞」。アカデミー賞の例年の傾向をよく知っている人ならば「今年のノミネートは4人か」と言いたくなるのも仕方あるまい。何度目のメリル・ストリープか。しかし、それ以外の顔ぶれはなかなか興味深いところではないだろうか。
<ノミネート一覧>
サリー・ホーキンス『シェイプ・オブ・ウォーター』
フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』
マーゴット・ロビー『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
シアーシャ・ローナン『レディ・バード』
メリル・ストリープ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
Congrats to our Leading Actress nominees! #Oscars #OscarNoms pic.twitter.com/06rWVlwSCG
— The Academy (@TheAcademy) 2018年1月23日
ストリープとマクドーマンドは受賞経験者、そしてホーキンスは『ブルージャスミン』で助演女優賞にノミネートされた経験があり、シアーシャ・ローナンは23歳にして3度目の候補入りとなった。そして唯一の初オスカー挑戦となるのが、マーゴット・ロビーだ。
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『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』より
『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』、そして『スーサイド・スクワッド』でのハーレイ・クインと、美貌を活かした鮮烈な役柄が相次ぐ彼女が、実在のスケート選手を演じてオスカー候補に名乗りを上げた。
俳優4部門の中でもひときわ実在の人物を基にしたキャラクターが目立つこの部門は、作品賞の候補と直結しないことでも知られている。とはいえ、今年はロビーの対象作のみが作品賞候補外となっており、女性主人公の映画が注目されている世論の流れもある。助演女優賞候補に挙がっているアリソン・ジャネイの勢いをもらって、ロビーも一泡吹かせたいところだろう。
今回の5人の中でもう1人、実在の人物を演じているのがメリル・ストリープだ。
©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』より
実に21回目(主演女優賞は17回目)となる彼女。対象作の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、彼女の主演女優賞と作品賞のみという珍しいノミネートのされ方をしている。いかに彼女がオスカーから愛されているかがよくわかるところだ。
しかしながら、“第二のストリープ”との呼び声も高いジェシカ・チャスティンや、作品賞かが伸び悩んだジュディ・デンチ、アメコミヒロイン初の快挙を逃したガル・ギャドットに、トランスジェンダー女優として注目を集めたダニエラ・ヴェガらを差し置いてストリープがノミネートされた点に関しては、もう一捻り欲しかったというところが正直な意見だ。
前述したように、作品賞と直結しないのが主演女優賞。『ミリオンダラー・ベイビー』以降、作品賞と主演女優賞を同時に受賞した作品は出ていないのだ。過去89回でこの二つが合致したのが11回。主演男優賞27回と比べるといかに少ないかがわかる。しかし今年はいつもとは違う。作品賞を争う3作品がすべて女性主人公の作品で、主演女優賞にノミネートされているのだ。
その最有力と言われているのがフランシス・マクドーマンド。
(C)2017 Twentieth Century Fox
『スリー・ビルボード』
コーエン兄弟の『ファーゴ』で主演女優賞に輝き、『スタンドアップ』以来となるノミネートを獲得した彼女が、娘の復讐のために警察を相手に孤高の戦いを繰り広げる迫真の演技を披露。ゴールデン・グローブ賞での受賞はもちろん、俳優組合賞など主要な賞を総なめ。もはや敵なしで、オスカーへと一直線といったところだろう。
しかし、前哨戦でマクドーマンドに食い下がったサリー・ホーキンスとシアーシャ・ローナンの可能性も消えていない。もっぱら、作品賞だけで考えれば、ホーキンスの対象作の方が一歩リードといったところだ。
(C)2017 Twentieth Century Fox
『シェイプ・オブ・ウォーター』より
そしてローナンのほうは『つぐない』での助演女優賞候補から、一昨年は『ブルックリン』で有力コンテンダーに。
© 2017 InterActiveCorp Films, LLC./画像クレジット:Merie Wallace, courtesy of A24
『レディ・バード』より
3度目の正直となり、マーリー・マトリンやジェニファー・ローレンス、ジャネット・ゲイナーに次ぐ史上4番目の若さでの戴冠を狙う。(もっぱら彼女の母国アイルランドのアカデミー賞では受賞確実なのだが)
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