『素敵なダイナマイトスキャンダル』は濡れ場満載!ラジオ好きも必見!



(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会



70年代後半から80年代にかけて、数々の伝説の雑誌を世に送り出した希代の編集者、それが末井昭!

彼の自伝的同名エッセイを豪華な出演キャスト陣で映画化した、『素敵なダイナマイトスキャンダル』が3月17日より全国公開されたので、今回は公開二日目夜の回で鑑賞してきた。

後述するが、実は自分にも多少関係のある人物のため、個人的にも興味のある題材と内容だった本作。果たして、その出来はどうだったのか?

ストーリー


幼いころに、母・富子(尾野真千子)が隣家の息子とダイナマイトで心中するという体験をした末井昭(柄本佑)。18歳で田舎を飛び出し、昼は工場勤務、夜はデザイン学校という生活から、看板会社への就職、そしてエロ雑誌の編集へと足を踏み入れる。表紙デザイン、レイアウト、取材、撮影、漫画と、あらゆる業務をこなしながら、やがて写真家・荒木経惟とのコンビで、伝説の雑誌『ウイークエンドスーパー』などの編集長として活躍することになる。軌道に乗った雑誌だったが、なんとわいせつ文書販売容疑で発禁となってしまうことに・・・。


予告編


伝説の編集者、末井昭の足跡が今蘇る!


幼少時に、実の母親が隣家の息子とダイナマイトで無理心中した!という壮絶な過去を持つ主人公。少年の心に大きなトラウマを残したこの体験が、後の末井昭の人生に多大な影響を及ぼして行く様子が描かれるのだが・・・。

現在でも編集者やライターにとっては伝説の存在である、末井昭の自伝的エッセイを映像化した本作は、彼が70年代から80年代に創刊した数々の雑誌製作の裏側と、彼の壮絶な生い立ちや私生活が描かれている。

彼の人生も凄いが、やはり興味深いのは彼が次々に創刊した歴代エロ雑誌の製作の過程が描かれることだ。世代的にお世話になった人々にとっては、正に自分の青春の一ページを振り返る様な気分になれるのも、本作の大きな魅力だと言えるだろう。

彼が世に送り出した雑誌の内容上、本作にも女性の裸が随所に登場するのだが、濡れ場シーンにおける異様なエロさや、80年代の社会に氾濫していたヌード特有のケバさの再現は実に見事!

もちろん80年代のこの時代を知らない世代にとっても、この自由でエネルギー溢れる末井昭の仕事っぷりは、逆に憧れを持って見ることが出来るはずだ。



(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会



クセが濃い個性的な脇役たち、その存在感が凄い!


本作の最大の魅力は、やはり超個性的なその脇役たちに尽きる!

例えば意外な収穫だったのが、前田敦子の持つ抜群の昭和感と生活感。更に、セリフが一言も無いと思われた尾野真千子がラストで発する一言と、服を着たままでも異様なエロさを醸し出すその濡れ場シーンには、正直この二人がここまでやるとは予想していなかった!そんな感想を持たれた方も多かったのでは?

もちろんこの二人以外にも、逞しく魅力的な女たちが登場する本作。主人公の愛人となる笛子を演じた三浦透子の眼差しのエロさや、ピンサロ嬢のユーコを演じた木嶋のり子など、主人公である末井の周囲に集まる女性は皆タフで逞しく、新しい環境にもすぐに適応するしたたかさを持っている。それだけに、そのキャラクターや言動が実にリアルなのだ。

女性だけでは無い、実は本作にはその「顔面力」だけで登場シーンを持って行ってしまう、数々の名男優も登場する。

中でも印象的なのは、主人公のデザイン会社時代の同僚で、心の友である近松さんを演じた峯田和伸の存在だろう。その確かな才能と実力で、主人公に大きな影響と刺激を与えながら、活躍の場を見つけられずやがて活動を止めてしまう彼と、様々な職場を経験しながら最終的に自身の才能を発揮出来る場に巡りあった主人公。この両者の違いを単に「運が良かった」の一言で片付けることも出来るだろうが、「止めずに活動を続けること」「才能を生かす場を見つけること」が何より大事な成功へのカギだと教えてくれるのが素晴らしい!

更に、実在の名カメラマン・アラーキーを思わせる写真家の荒木さん役の菊池成孔も、外見はさほど似ていないのだが抜群の雰囲気を出していて、次第にアラーキー本人に見えてくるのだから不思議だ。

その他にも村上淳や嶋田久作に、白石晃士監督作品でお馴染みの宇野祥平や、『孤独のグルメ』の松重豊、『ケンとカズ』の毎熊克哉など、多くの個性的な脇役が登場してはその場を盛り上げて楽しませてくれる本作。誰がどんな登場をするか?そこは是非劇場でご確認頂ければと思う。



(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会



実は、意外なお楽しみが隠されている本作!


その強烈なストーリー展開やキャストの演技意外にも、実は意外なお楽しみが隠されている本作。

例えば、主人公が編集作業やイラストを書いているシーンが時系列で登場するのだが、そこで彼が聞いているのが、その時代を代表するラジオ番組の音声という素晴らしさ!野沢那智と白石冬美の『パックイン・ミュージック」』も懐かしいのだが、何と言ってもラジオ好きには見逃せないのが、あの長寿番組『大沢悠里のゆうゆうワイド』の前身番組である『のんびりワイド』の音声が聞ける点だろう。

更にはエンディングで流れる主題歌を、なんと尾野真千子と末井昭自身が歌っているので、ここも要チェックだ!

最後に


今から20年ほど前、自分がライターとしてデビューしたのが、実は末井氏が取締役編集局長を努めていた時代の白夜書房の出版物だった。直接の面識はもちろん無いのだが、間接的にお世話になった人物の物語だけに、かなりの期待と興味を持って鑑賞に臨んだ本作。

実は本作で一番印象に残ったのが、映画の終盤で再び現れた笛子に末井が「ホテル行こうか?」と言って、OKした彼女とホテルに行くシーンだった。一見すると、あの状態の彼女をホテルに誘うという彼の行動は、女なら誰でも見境なしのいい加減な男と思うかも知れない。だが、あの行動こそは主人公にとって彼女への精一杯の思いやりであり、あの様な状態の彼女でも変わらず一人の女性として見ているということの証明に他ならないのだ。もちろんそれが判っているからこそ、彼女もホテル行きをOKしたのだろう。

こうした細やかな描写がちゃんとあるからこそ、ヌードや濡れ場、それに下ネタが続出する内容でありながら、鑑賞後にどこか穏やかな気持ちになれるのでは?と感じた本作。

残念ながらその刺激的な内容のためかR15指定となっているこの作品だが、どうかそれに臆することなく劇場に足を運んで頂ければと思う。

(文:滝口アキラ)

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