『劇場版コード・ブルー』山P、新垣結衣、成田凌を支える脇役の演技に注目!
(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会
実に10年という長い年月をかけて3シーズンが放送された、人気テレビドラマ『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜』。
現在公開中の『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』は、放送10年目を迎えてついに製作された劇場版であり、ファンにとってもシリーズのラストを飾る思い入れ深い作品となっている。
今回は台風が関東を直撃した、公開二日目夜の回で鑑賞に臨んだのだが、台風上陸にも関わらず何と場内は7〜8割程度の入り!これを見ても、いかに観客の関心と注目を集めているかが分かる本作だが、果たしてその出来と内容はどの様なものだったのか?
ストーリー
地下鉄トンネル崩落事故から3ヵ月後、旅立ちの時が迫る藍沢たち。その旅立ちが「別れ」を意味することに気づきながらも、彼らは10年間を共にした互いへの思いを抱えたまま、日々を過していた。
しかしそんな彼らの思いに構うことなく、出動要請が入る。成田空港への航空機緊急着陸事故と、東京湾・海ほたるへの巨大フェリー衝突事故という、「空」と「海」を舞台にした未曾有の大事故が連続発生。史上最悪の現場に、彼らはいかに立ち向かうのか。
そしてその先に、答えはあるのかーー。(公式サイトより)
予告編
10年の歳月を経て成長した主人公たちの姿が胸を打つ!
冒頭でも触れた通り、10年の歳月をかけて3シーズンが放送された人気ドラマだけに、ついに劇場版映画が製作されると聞いて、「あ、また良くあるテレビドラマの映画化か」との印象を持った方も多いのではないだろうか。
実際予告編の映像を見て劇場での鑑賞をスルーすることにしたという人も、実は自分の周囲に多かった本作。
だが断言しよう、台風接近中にもめげず鑑賞を決めただけの価値はあった!後述する様な劇場での大ヒットが証明する通り、良くあるテレビドラマの映画版とは一線を画すその内容は、映画終盤の意外な展開を含めて、我々観客を大いに楽しませて感動させてくれるのだ!
更には映画本編の冒頭に、テレビ版1〜3シーズンの短いダイジェスト版映像が付いている親切設計なので、「いくら評判良くてヒットしていても、肝心のドラマ版を見てないし・・・」そう思って劇場での鑑賞を躊躇されている方でも全然大丈夫!
テレビシリーズを見続けて来たファンにとっては最高のプレゼント作品となっているし、もちろんテレビシリーズ未経験の観客にも、一本の映画として充分楽しむことが出来る本作。主人公たちが積み重ねて来た人生とその成長を見届けるためにも、是非劇場に足を運ぶことをオススメします!
(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会
予想興行収入100億円超え!その大ヒットの理由とは?
冒頭で述べた通り、残念ながら公開日が台風の接近・上陸と重なってしまった本作。だが、何と公開初日から三日間の興業成績が15億円を突破!最終的に興行収入100億円越えの予想も出ているほどの大ヒットを記録している。
もしもこの予想通りならば、興行収入100億円越えの邦画実写版としては、実に2003年の『踊る大走査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ』以来の大台突破作品となるとのこと。
それでは、何故本作がこれほど観客の心を掴み好評を得て、しかも大ヒットを続けているのだろうか?
もちろん今回の大ヒットの最大の理由は、テレビシリーズの延長に終わらないその深い内容にある。
テレビシリーズと違う新たなキャラを出すなど、敢えて特別なことはしていない今回の劇場版。だが、だからこそ本作は逆に観客の心に残る内容となっている。例えば、出演キャストの存在感と、それを支える脇役たちの見事な演技とのコラボや、劇場版として更にスケールアップした災害救助シーンの登場。更に事故の被害者や患者を巡る人間ドラマなど、救う者と救われる者との関係性を深く描こうとするその真摯な姿勢が、観客の心を掴んで離さないのだ。
実際公開前のネットのレビューや感想でも、その内容の良さや面白さを伝える物を多く目にした本作。正直自分も、テレビシリーズをたまに見ていた程度の『コード・ブルー』初心者なのだが、いや、この劇場版は確かに面白かった!
本作がこれほど観客の感情を揺り動かし、大ヒットを続けている要因として挙げておきたいのが、緊急出動の要請を受けてからの装備装着と、そこからヘリポートのドクターヘリに向かって走る医師たちの姿や、彼らがヘリに乗り込むまでをきちんと描いている点だ。もっとスピーディーに物語を進めたいなら、いきなりヘリに乗り込むシーンに繋げるか、いっそ全て省略してヘリが飛び立つシーンから始めるという手もある。だが本作では、主人公たちがヘリに搭乗するまでの課程を省略せずに描くのだ。
実はこれは想像以上に重要な要素であり、こうした彼らの準備や搭乗過程が描かれることで、我々観客の気持ちも彼らと一緒にドクターヘリに乗って現場へと飛んで行けることになる。正にスクリーンの中と観客とを心で繋ぐ様なこのシークエンスのお蔭で、我々観客も本作に対してより感情移入出来るという訳だ。果たして今回、主人公たちがどれほど困難な状況下で治療にあたるのか?そこは是非劇場で!
(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会
主要キャストはもちろん、今回は脇役の演技が素晴らしい!
さすがに劇場版だけあって、今回は飛行機事故やフェリーの衝突事故など、連続する複数の困難な状況下での災害医療として見せ場もスケールアップ!更にこうした大規模な事故や災害に負けじと、主要キャスト陣も素晴らしい演技を見せてくれる本作。
その中でも意外だったのが、事故に見舞われた患者やその家族役の俳優たちの名演技だった。患者の親や息子など、正直演じるキャストの名前も知らなければ顔も一致しないにも関わらず、彼らの素晴らし過ぎる演技は見事に観客の心を動かすことになる。本来なら主要キャストがスクリーンに映ることが観客へのサービスになるのだが、本作では脇役たちの名演技を観客に伝えようとするかの様に、時として主要キャストよりも無名の脇役陣がスクリーンを支配することになる。しかもそれが全然違和感が無く、むしろ彼らの見事な演技に我々観客は大いに泣かされ感動させられることになるのだ。
主演キャストや原作小説・コミックの知名度に頼って惨敗する大作が多い中、この『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』が試みた脇役キャスト陣の充実は、今後の日本映画がヒットするための新たな法則になるかも?そんな気持ちで劇場を後にした本作。
思えば有名タレントや人気俳優に頼るあまり、同じ様なキャストの奪い合いとなり、どの作品も同じ様な配役、似た様な内容になりがちだった現在の日本映画の製作状況において、本作が示したこのアプローチには大きな意味と価値があると言える。
あなたも是非劇場で、こうした脇役陣の素晴らしい演技に触れてみては?。
(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会
最後に
ここまで述べて来た様に、単なるテレビシリーズの総集編的内容や焼き直しには終わっていない本作。だが一つだけ注文を付けるとすれば、エンドクレジットに流れるミスチルの主題歌「HANABI」をじっくり聞きながら余韻に浸りたいという観客には、ちょっと不向きなエンドクレジットになってしまっている点だろうか?
ファンサービスに徹したこのエンドクレジットには、主人公たちが共に過ごした時間の重みと、それぞれの成長の証となる映像が流れるだけに、せっかくの主題歌よりも映像に集中してしまうのは仕方がないところ。実際ネットの感想やレビューにも、「もっと、ちゃんと曲を聴きたかった」との声が見られただけに、この部分の観客への配慮はあっても良かったのではないだろうか?
もう一つ、実はネットで見かけた意見には、本作でのクルーたちの結婚式が唐突に感じられたというものが多かった。
だが映画を良く見て頂ければ、あの場に新田真剣佑が演じる岩田がいることで、彼が感謝の気持ちから二人の結婚式を企画したことが分かるはずだ。これから劇場で鑑賞される方は、是非その点にもご注目頂ければと思う。
ただ、フェリー事故の自動車救助で登場した親子のその後が描かれなかった点は、非常に残念だったと言わざるを得ない。
父親を捨てた息子との直接の和解が描かれないため、馬場ふみか演じる雪村を現在の状況や悩みから開放させ成長させるために、このシーンを登場させたかの様に思えてしまうからだ。
だが、同時にここは映画後半の見せ場となる重要なシーンであり、テレビシリーズで何度となく描かれてきた藍沢の判断力と決断力、そして形にとらわれない自由な発想が描かれるシーンでもあるので、ここはやはりこの親子の和解に対しても何らかの工夫が必要だったのではないだろうか。
10年と言う長い年月の間に、多くの経験を積んだ主人公たち。今回の劇場版では、更にスケールアップした困難な状況下でのオペと同時に、様々な人生の岐路に立つ彼らの選択や成長が描かれることになる。中でも強烈な印象を残すのが、過去に家族を捨てた雪村双葉の前に姿を現す母親を演じた、かたせ梨乃の強烈過ぎる毒親っぷり!どういう役作りをすればこんな演技が出来るのか?そう観客が思わずにはいられない迫真の演技も見所なのだが、彼女が病院にやって来た衝撃的な原因がまたスゴ過ぎる!
「確かに、こんな母親なら家を出ても仕方が無い」そう思わずにはいられない彼女の名演技は、是非劇場でご確認頂ければと思う。
今回、邦画実写作品としては久々の大ヒット作となっている、この『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』。規模は違うが同じく大ヒットを続ける『カメラを止めるな!』と並んで、これからの邦画界に大きな刺激を与えてくれたのは、非常に喜ばしい限りだ。
今後もこうした作品が続々登場して、日本映画界を活気付けてくれることを願って止まない。
(文:滝口アキラ)
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