映画コラム

REGULAR

2018年10月08日

『パーフェクトワールド』岩田剛典と杉咲花の競演こそパーフェクト!

『パーフェクトワールド』岩田剛典と杉咲花の競演こそパーフェクト!



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



講談社の雑誌「Kiss」で連載中の人気漫画を、岩田剛典と杉咲花のW主演で実写映画化した話題作『パーフェクトワールド 君といる奇跡』。10月5日より劇場公開が始まった本作を、今回は公開初日に鑑賞して来た。予告編やポスターの印象から、難病やハンディキャップを扱った泣けるラブストーリーと思って鑑賞に臨んだ本作。果たして、その内容はどの様なものだったのか?



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



ストーリー


この世界は不完全、君がいなければ――。インテリアデザイン会社に就職した川奈つぐみ(杉咲花)は、設計事務所との飲み会で高校の先輩であり初恋の人・鮎川樹(岩田剛典)と再会する。樹にときめきを覚えるつぐみだったが、彼は事故で車イスに乗る障がい者になっていた。「先輩との恋愛はムリ」最初はそう思うつぐみだったが、昔と変わらずまっすぐな彼にどんどん惹かれていき、あの頃閉ざした感情が止められないほど溢れてくる…。【私は――先輩が好きなんだ、今でも】樹もまた、全身でぶつかってくるつぐみの、素直で優しく思いやりのある性格に惹かれていくが、彼は、「自分は誰かを幸せにすることができない」と思い込み、女性と付き合うことを諦めていた。それを知ったつぐみは、樹のことを諦めようとするが、どうしても諦めきれないでいた。二人は、すべてのハードルを乗り越え、幸せなパーフェクトワールドにたどり着くことができるのか? 二人が迎える結末とは――。


予告編


現実から目を逸らさず、二人の恋愛を描く真摯な作品だった!



2016年の映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』の製作陣が、再び世に送り出したラブストーリー。しかも主演が同じ岩田剛典とくれば、これはもうファンにとっては期待するなと言う方が無理な話だ。

ただ『植物図鑑』とは違い、本作で描かれる恋愛には非常に重く現実的なテーマが含まれている。単に「好き」「愛し合っている」の気持ちだけでは到底乗り越えることの出来ない高いハードルを、果たしてどう二人が克服して結ばれるのか? 本作ではこの部分が見どころとなるだけに、もしも「あ、またこの組み合わせか」と観客が思ってしまうキャスティングであれば、一気に話が嘘っぽくなりかねない。その点で今回の岩田剛典と杉咲花の起用は、見事にその危険を回避して作品を成功に導いたと言えるだろう。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



ただ、まだまだ幼いイメージのある杉咲花だけに、社会人として仕事をこなしている姿や大人の恋愛には若干ムリがある気がした、との意見がネットで散見できたのも事実。

もちろんそのイメージがプラスに働くことで、高校の憧れの先輩に対するつぐみの想いの強さや、彼女の純粋な愛情がより観客に伝わる効果を上げているのだから、やはり今回のキャスティングは大成功だったと言わざるを得ない。実際、岩田剛典が見せる素晴らしすぎるあの笑顔には、杉咲花の透明感やその佇まいが実に良く似合うのだ。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



樹の障がいを、つぐみが初めて知るシーンの容赦の無さや、二人の将来が決して明るいだけではないと思い知らせる、駅でのある決定的な出来事など、決して甘い夢物語には終わらせず、厳しい現実を真摯に描いている本作。例えば樹の排泄の問題や、下半身に感覚が無いためにちょっとした傷でも命取りになりかねないなど、障がいを抱える以上は避けられない部分からも決して目を逸らさず、二人に寄り添うように描いている点は実に見事!

本作の現実に向き合うその姿勢が、改めて障がいについて考えるきっかけになればと願って止まない。

原作からの改変点が、実はプラスに働いた本作



実は原作コミックでは、同級生という設定の樹とつぐみ。だが、映画版では主演二人の年齢差を考えて、高校時代の先輩と後輩という設定に変更されている。

この変更により、樹がつぐみの将来を考えて慎重な行動を取る姿と、逆に高校時代の憧れの先輩である樹に対して積極的に関わろうとするつぐみの姿との対比が描けるようになり、二人が徐々に歩み寄りながら関係性を深めていく過程が、観客にも無理なく受け入れられる様になっているのだ。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



もちろん現在も雑誌に連載中であり、コミックスも8巻まで刊行されている作品なので、映画オリジナルの結末や独自のアレンジが成されているのは仕方がないところ。

例えば、原作では恋のライバルとなる、つぐみの同級生の是枝と樹の介護ヘルパーの長沢の存在が、映画版では二人の良き理解者になっているなど、100分の上映時間に収めるために行われた人間関係の整理や変更は、原作のファンの方には若干気になる部分かも知れない。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



他にも、つぐみの父親がガンを患う展開が変更されているが、映画の内容やその後の展開を考えれば、今回の変更はかなり効果的だったと言えるだろう。

前述した通り、現在8巻が刊行中で更に続刊が予定されている長編コミックが原作のため、つぐみが色々な人々と出会い様々な恋愛のかたちに触れることで、樹に対する想いを確かなものにしたり自身が成長していく部分は、残念ながら映画版ではかなり省略されていると言わざるを得ない。

とは言え、この二人の恋愛に焦点を絞って映像化された本作は、原作コミックを未読の方にも十分に楽しんで頂けるはず。

勇気を持って困難な道のりを選択した二人の恋愛の結末は、是非劇場で!

最後に



人気漫画の実写化によるラブストーリー、しかも障がいを扱う作品ということで、ある種の先入観を持たれても仕方がない本作。だが実際は、お互いを思って助け合いながら結ばれていく二人の姿を、移り変わる四季の情景の中に優しく映し出す、非常に志の高い真摯な作品となっていた。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



本作でW主演の二人、岩田剛典と杉咲花の存在感と表情だけで、彼らの間の深い愛情と想いが観客に伝わるだけに、今回泣かせ目的のベタベタの純愛物にしなかった点は、原作コミックのテーマを生かした実に賢明な選択に思えた。

そう、本作で描かれるのは決して甘い夢のような恋愛では無い。

突然の不慮の事故により車いす生活になったことで、自身の将来や夢、そして恋人など、多くの物を諦めなければならなかった樹。そんな彼だからこそ、娘の幸せな将来を願う、つぐみの父親の気持ちを良く理解し、一旦は自分から身を引こうと考えるのだが…。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



娘の彼氏が障がい者だと知ったつぐみの両親の反応や行動は、本作では実にリアルに描かれている。樹にとっては厳しい現実を突きつけられるシーンなのだが、それが決して樹の障がいへの偏見や差別によるものではなく、娘への想いと愛情があればこその行動であることが観客にも良く分かる。だからこそ、その後につぐみの家族に降りかかるある出来事が、より強烈に観客に印象づけられることになるのだ。この部分は人によっては若干唐突に感じられるかも知れないのだが、誰の身にも突然起こりうることだという事実と、実際に当事者になって初めて理解出来るという点を描く上で、実に効果的な展開だと言えるだろう。



©2018「パーフェクトワールド」製作委員会



「二人でいれば世界は完璧に思える」のセリフ通り、大事なのは、障がいのある自身の生活に相手を巻き込むと不幸にしてしまうのでは? と考えるか、それとも二人で共に生活することが、お互いに幸せだと思える最良の方法と考えるか? その選択にあるのではないだろうか。

昔からの想いを今も変わらず持ち続ける女性と、それに応えて再び人生に前向きになろうと踏み出す男が、互いに同じスタートラインに立つための苦悩と努力の物語である本作。

このストーリーに、今回W主演の二人の透明感と爽やかさが加わることで、観客の誰もが彼らに声援を送り見守らずにはいられなくなる、この『パーフェクトワールド』。

是非劇場で、二人を応援して頂ければと思う。

(文:滝口アキラ)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!