『ファンタスティックビーストと黒い魔法使い』「5つ」の大いなる魅力



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いよいよ公開が迫った『ハリー・ポッターと賢者の石』から始まったウィザーディングワールド最新作『ファンタスティックビーストと黒い魔法使い』。これで通算10作目になり、ヒット記録もMCU=マーベル・シネマンティック・ユニバース、スター・ウォーズサーガに肩を並べるシリーズとなりましたね。

正直に言うと、実はウィザーディングワールドは映画館アルバイト時代に見た『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』以降、劇場で見ることを止めてしまっていました・・・。
その後、一応テレビや配信で追いかけてハリポタシリーズは8作品全部抑えてはいましたが、『ファンタスティックビースト』にいたっては、今回最速試写会で『黒い魔法使いの誕生』を見られるということで慌てて配信で追いかけて見たくらいでした。

なんとなく、ついていけないと言いますか、気持ちが乗り切れなかったのです。なので、ジョニー・デップが前作のラストに顔を出していたことも知らなかったという有様でした。呆れられると思いますが、今回からの参加だと思っていたという程度の体たらくでございました。

そんな私が、今作の『ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生』ですっかり魅了されてしまいました。そんな私を虜にさせた5つのポイントをご紹介します。

1:ジョニー・デップの黒いトリックスターっぷり


まず、やはり物語をけん引したのは黒い魔法使いゲラード・グリンデルバルドの存在でした。



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今回、グリンデンバルドの人生や思想の背景が色々と明らかになっていきます。これが本当に深くておもしろくニュートとダンブルドアの子弟コンビとの深いつながりが明らかになる展開は素直にワクワクさせますし、他のメインキャストにもこういう影響の与え方をするのか!とうなってしまいました。

もちろん、それにはグリンデルバルドを演じるジョニー・デップの実力によるところが多分にあります。よくよく考えると、キャラクターの陰陽の違いはあるにせよこういうトリックスター的なキャラクターはジョニでの十八番でしたね。

彼は今までもさまざまなトリックスターを演じてきました。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ、『アリス・イン・ワンダーランド』のマッドハッターがそうですね。
今回は邪悪なジャック・スパロウというべき陰のトリックスターです。

グリンデルバルドは悪役ですが、彼の何とも抗いがたい魅力とカリスマ性を持ったキャラクター、演じさせたら右に出るものはないですね。
今回も悪魔のささやきとはわかっていても多くの人物たちの心を揺さぶります。



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2:美中年ダンブルドア登場、ジュード・ロウの洒落男っぷり


今回最大のトピックは、前回はセリフの中だけだったホグワーツ魔法学校の教師で、後に校長となってハリー・ポッターを導くことになるアルバス・ダンブルドアの登場ですね。



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今回はグッと年代を遡っているので美中年モードで登場します。

このナイスミドルなダンブルドアを演じるのが名優となりつつある英国俳優ジュード・ロウ。イギリス人俳優が多数起用されてきたハリポタシリーズに登板しなかった彼が満を持して登場しました。

ついに姿を現したダンブルドアは、ニュートに希望を託す一方で個人的にグリンデルバルドとの深いつながりを持っていたことが明らかになります。リチャード・ハリスやマイケル・ガンボンが演じたダンブルドア校長も独特のユーモアと抜群の指導力を併せ持った素敵な校長先生でしたが、今回はまだ教師の一人です。

ただ、やはり魔法使いの中でも大きな存在であることは変わりなく、魔法省からも良くも悪くも注目を集める存在です。ニュートは彼の愛弟子ということもあって、ハリポタシリーズ以上の濃い師弟関係の姿を見せてくれます。このユニークな師弟コンビとグリンデルバルドとの戦いはこれからどうなるか楽しみですね。

不思議な縁の話ですが、前作でジョニー・デップの仮の姿を演じたコリン・ファレルと正体だったジョニデ。そして今回のジュード・ロウの三人は『Dr.パルナサスの鏡』で故ヒース・レジャーの鏡の中の分身を演じあった仲です。それから約十年巡り巡って鏡の中の住人たちは魔法世界の人間として名前を連ねりことになりました。



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3:大作映画の主役が馴染んできたエディ・レッドメインの変人キャラっぷり


2014年に『博士と彼女のセオリー』で、車椅子の天才物理学者の故ホーキング博士を演じて一気にアカデミー賞俳優となったエディ・レッドメイン。

しかし、このような“ブロックバスター”タイプの大型企画で主演するのは前作『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』が初めてでした。シリーズの一作目ということもあったでしょうが、どこか肩に力が入っているような感じがありました。

しかし、この二作目『黒い魔法使いの誕生』ではスケールの大きな作品の主役ニュート・スキャマンダー役にもすっかりなじみ、どこか余裕すら感じさせます。と同時にビーストの研究者という変人っぷりに磨きがかかっています。

研究や調査のためということはわかっていますが、パリでティナの後を追うために道路を舐める姿にはさすがに引いてしまいます。ただ、そんな変人っぷりもどこか愛嬌があって愛すべき変人を演じています。

今回からイギリス魔法省で働くまじめな兄のテセウスが登場することで、よりニュートの変人っぷりが際立って見えます。まあこれをニュートに言うと、「変だという人は、心が狭い」などと言われてしまうかもしれませんね。



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4:ヒロインの葛藤


ティナとクイニーのアメリカ人魔法使い姉妹に加えて、今作にはニュートの魔法学校のクラスメイトで同じダンブルドアの教え子のリタ・レストレンジが登場します。



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ニュートの兄テセウスの婚約者でもある彼女もまた大きな過去と秘密を抱えています。

ティナは誤解からかリタとニュートが婚約したと思い込んでしまっていて仕事一筋に生きる道を選びます。クイニーは人間=ノーマジ、マグルのジェイコブとの恋愛に思い悩んでいます。アメリカでは魔法使いとノーマジと恋愛や結婚は禁じられているのです。

そんな彼女の存在もまた物語に深みを与える存在とになってくれます。

ファンタビシリーズは全体を通してハリポタシリーズにはなかった大人の女性の姿が描かれます。ハリポタシリーズはローティーンからハイティーンまでの少年少女の成長譚という見どころがありましたが、その一方でその見どころを活かすために濃厚な恋愛要素を取り込むことはできませんでした。
これに対してすでに大人の男女が主人公のファンタビシリーズではいい意味で成熟した恋愛劇が展開されます。

そして。それが『黒い魔法使いの誕生』に良くも悪くも物語を膨らませてくれます。この部分に私は完全に魅了されてしまいました。



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5:デビッド・イェーツ監督の手腕


私が脱落したハリポタシリーズの後半戦の『不死鳥の騎士団』から『謎のプリンス』、『死の秘宝パート1&パート2』を一手に手掛けたのがイギリス人監督のデビッド・イェーツ監督。

それまで大作映画のメガホンを取ったことのなかったデビッド・イェーツ監督ですが、少年少女の加齢に合わせた成長物語に加えて、彼らのヒーローとしての成長物語、更にたびたび入れ替わりに登場する癖のあるキャラクターをうまくさばいて見せまました。

今回もその手腕は存分に発揮してくれています。

大人の恋愛を物語に巧みに取り込んで見せる新機軸も彼の手腕ならではのものと言っていいでしょうね。ドラマにドラマが重なるクライマックスはダイナミズムを生み出してくれました。



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まるでファンタビの帝国の逆襲


あらためて、今回『ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生』を見て気持ちを入れ替えました。ファンの皆さん本当に申し訳ありませんでした。

娯楽性はもちろん、深みもたっぷりある極上の逸品でした。

いうなれば『スター・ウォーズ』シリーズの“帝国の逆襲”、『キャップテン・アメリカ』の“ウィンター・ソルジャー”でした。

ダース・ベイダーがルーク・スカイウォーカーの父親、ウィンター・ソルジャーがキャップテン・アメリカの親友バッキーだと判明したところでシリーズは一種の神話に昇華されました。そういう意味ではヴォルデモートが本格的に登場するシリーズ後半戦から脱落した私は実に惜しいことをしたことになりますね。

『黒い魔法使いの誕生』は娯楽映画により深みと味わいを与える、シリーズを大きくジャンプアップさせる作品になっていました。

とにかく『ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生』は、一度ウィザーディングワールドから離れた男を魅了させてワールドに引き戻すほどの力を持った作品です。早くも三作目が楽しみでなりません。

(文:村松健太郎)

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