映画コラム
『レゴ® ムービー2』レゴ映画にハズレ無し!その「3つ」の理由とは?
『レゴ® ムービー2』レゴ映画にハズレ無し!その「3つ」の理由とは?
© 2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
2014年に公開され、日本でも多くの観客から高評価を得た『レゴ® ムービー』。前作の大ヒットを受けて製作された待望の続編『レゴ® ムービー2』が、ついに3月29日から日本でも公開された。
前作でレゴの世界を救った主人公エメットが、今度は宇宙で大冒険を繰り広げる! というストーリーからは、もはや傑作の予感しかしない本作。それだけにかなりの期待を胸に鑑賞に臨んだのだが、果たしてその内容と出来はどの様なものだったのか?
ストーリー
ブロックシティが襲われた事件から数年後、街の秩序が崩壊し荒んだ世界。
いつも明るくちょっぴりおバカなエメット(クリス・プラット)の前に現れたのは、謎の宇宙人。ルーシー(エリザベス・バンクス)と仲間たちを、連れ去ってしまった! 仲間と“フツー”の日常を取り戻すため、誰よりごく“フツー”なエメットは、超フツーじゃない宇宙へ!?
またもや“選ばれし者”になったエメットの戦いは、前代未聞の領域へ! わがまま女王が支配する“すべてがミュージカル”な惑星で、一体なにが起こるのか?
予告編
1:やっぱり“レゴ映画”に駄作無し! 意外なゲスト声優も登場
多くの人々が子供の頃に遊んだはずのおもちゃ、レゴで作り上げられた世界が舞台となる作品だけに、爆発の炎や海の水、そして空の雲にいたるまで、全てがレゴのブロックで作られているという世界を、見事にCGで再現して観客を唸らせた、2014年公開の映画『レゴ® ムービー』。
劇場公開時にスルーした映画ファンを大いに後悔させたクオリティの高さに加えて、我々観客の心を掴んだのが、その深いドラマ性と、誰もが“選ばれし者”になれる、という力強いメッセージだった。なぜなら、他の住人たちと比べて何の特別な能力も無い平凡な主人公エメットが、実は“選ばれし者”として最後にレゴの世界を救うという展開は、正にヒーロー物の王道に他ならないからだ。
続いて公開された映画2作目『レゴ®バットマン ザ・ムービー』は、ネットのレビューや感想に「これこそ、バットマン映画の最高傑作!」との意見が多く見られたほど、アメコミ映画ファンにもそのクオリティの高さが評価されることになった。
更に、2017年に公開された『レゴ®ニンジャゴー ザ・ムービー』に至っては、パワーレンジャー的設定の中で、父と子の和解と少年の成長物語が描かれるなど、その面白さと完成度の高さは作品を追うごとに確実にパワーアップしている。
このシリーズの大きな魅力である、CGで細部まで再現されたレゴブロックの映像美だけではなく、そこに親子の深い人間ドラマが加わることで、実は子供の付き添いで行った大人の方がハマってしまうほどの魅力を秘めた、これらの“レゴ映画”たち。
待望の続編となるこの『レゴ® ムービー2』では、実は声の出演陣も非常に豪華!
主役のエメットを『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットが演じる以外にも、カメオ出演のキャラクターとして登場するアクアマンや、あの世界一運の悪い男『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンの声を、実際に演じた俳優本人が声を担当しているので、これからご覧になる方は是非お見逃しなく!
2:実は前作のテーマを更に掘り下げた大傑作!
前作『レゴ® ムービー』でブロックシティの危機を救ったエメットが、今回は舞台を宇宙に広げて大活躍!
レゴの世界に突然現れた宇宙からの侵略者“クイーン”に、ルーシーと仲間たちを連れ去られてしまったエメット。果たして彼は仲間を無事に救出し、地球の危機を救うことが出来るのか?
実は続編への期待が高すぎたせいか、映画の後半まで延々続く主人公側と敵の侵略者との戦いに、「ああ、やっぱり続編によくある様な、派手な見せ場を増やしてドラマ性が削られる展開になってしまったのか…」、そんな想いが強かった本作。
しかし、それは全くの誤解だった! よく考えれば、あの『レゴ® ムービー』がその程度の展開で済ませるはずが無いからだ。
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過去に失敗した多くの続編映画とは違い、単に昔遊んだおもちゃへの郷愁や、派手な戦闘シーンやCG映像で観客を釣るのではなく、「おもちゃで遊ぶということが、子供の成長と人間関係の構築にどれだけ大事なことか?」を、我々に示してくれるという、正に観客の予想を遥かに超える展開が用意されていた本作。
後述する通り、前作のラストで人間側の少年フィンに父親が言った「もう一人にも遊ばせる」の意味と、地球侵略を仕掛けてきた宇宙からの侵略者の正体や、その目的が明らかになる終盤の意外性により、それまでのありきたりに見えた展開や敵との戦いの様子が、一気に深い意味を持つのは実に見事!
地球を離れて遥か宇宙まで広がった物語が、最終的に前作で描かれた「父と息子の和解の物語」を更に進めたテーマに着地するという、誰もが共感せずにはいられない感動的な展開が用意されている、この『レゴ® ムービー2』。
鑑賞後にもう一度見返すと、確実に作品への評価や印象が大きく変わってくるのは確実なので、是非劇場へ!
3:前作のテーマから、更に踏み込んだ内容が凄い!
スケールアップした派手なアクションや戦闘シーンが見せ場となったり、新キャラが登場して前作で平和が訪れた世界が再び危機に陥ったりするのは、ヒット作品の続編にはよくある展開。
そんな安易なバージョンアップだと思い込んでいた、こちらの予想を大きく裏切る展開に、「やはり、レゴ映画は観て損なし!」、そう再認識させられた本作。
特に、エンタメ要素重視への変更としか思えなかった前半部分での戦闘シーンの積み重ねが、映画の終盤で一気に繋がって遂に大きな意味を持つその展開には、きっと多くの観客が心を掴まれたはず!
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確かに前作のラストや父親のセリフには、続編の展開への重要なヒントが込められていたのだが、今回は前作以上に人間側のドラマに重点が置かれており、最終的に男女の“ジェンダー問題”にまで踏み込んだ内容は、正に先日公開されて観客の高評価を得た『キャプテン・マーベル』に繋がるものとなっているのが凄い!
更に前作で描かれていた、自分のレゴ作品コレクションを絶対に息子に触らせなかった父親が、息子が自由に作ったレゴ作品の素晴らしさに心を打たれ、いかに自分が今まで完成した作品を守ることだけに執着し、自由な発想でレゴ作品を作り変える楽しさを忘れていたかを思い出す! という内容を踏襲しながら、それを更に深く掘り下げようとした本作の志の高さも、実に見事なのだ。
前作での父親と息子のフィンとの関係性を、本作ではフィンと妹との関係性に置き換えて、更にフィンが父親の立場を追体験するという脚本自体も素晴らしいのだが、やはり今回の一番の見どころは、前作での大人と子供との年齢差を越えた和解や共感に対して、男女の性差を越えた和解や共感が生まれるまでの苦労が描かれる点、これに尽きる!
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家族や兄弟という親密な関係に止まらず、人間同士お互いを思いやる気持ちがあれば、性差や年齢差の壁を乗り越えて必ず分かりあえるということ。そして、レゴという誰もが幼い頃に触れた記憶のあるおもちゃを通して、子供の頃に持っていた自由な発想の大切さと、相手の気持ちを理解し多様性を認めることがいかに重要かを我々に教えてくれる本作には、子供や大人の区別なく、きっと多くの観客が共感出来るはず!
鑑賞後には、きっと劇場の売店でレゴブロックを手に取りたくなる本作。全力でオススメします!
最後に
過去に製作されて失敗した、大ヒット作の続編にありがちな“派手な見せ場”と、“新キャラ登場による世界観の拡大”のワナにハマってしまったのか? 実際後半の展開までは、そんな想いを胸に鑑賞していた本作。
だがここまで述べてきた通り、派手な見せ場の増大などの表面的なスケールアップで勝負するのではなく、むしろ前作のテーマをより深く掘り下げることで、最終的に男女の多様性を認め合うことの大切さが描かれるという、正に奇跡の展開がスクリーンに展開することになるとは!
そう、昨年テレビで話題となったアニメ『HUGっと!プリキュア』や、映画『ボス・ベイビー』『未来のミライ』にも通じる本作のテーマは、一見子供向け映画の体裁をとりながらも、実際は大人たちに向けて発信された重要なメッセージに他ならない。
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例えば父親が息子のフィンによって、自身が忘れていた大事なこと(既に完成された物を一度崩して、そこから自由な発想と想像力によって新たな物を生み出すことの大切さ)を思い出すという前作の展開が、今回はフィンと妹との対立を通して、男女の理想の関係性が築かれるまでの苦悩を描くという、更に踏み込んだ内容になっている点も実に見事なのだ。
特に印象的だったのが、自分勝手でわがままな侵略者と思われた“クイーン”と彼女の軍団の意外過ぎる真の姿や、主人公を助けに時空を超えてやってきた“レックス・デンジャーベスト”の正体など、子供向けに明快で分かりやすいキャラクターとして登場する彼らが、実は複雑な内面を持つ存在だったことが明らかになる終盤の展開だった。
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子供向けの単純な勧善懲悪に見えたキャラクターたちの関係性が一気に逆転するその展開には、「やっぱり観て良かった!」、そう思わずにはいられなかったと言っておこう。
その他にも、“自身の本当の姿や正直な気持ちを他人に見せることは、決して恥ずかしいことでは無い”など、大人が抱える日常の悩みや迷いへの答えとなるメッセージが随所に込められているのも、これら“レゴ映画”の重要な魅力であり、一度でもその魅力に触れてしまったら、もうこの世界から離れられなくなってしまうのは確実!
“レゴ映画”を未見で、これから鑑賞を予定されている方や、レゴの世界に少しでも興味のある方は、是非、上映回数が減らない内に劇場に足を運んで頂ければと思う。
(文:滝口アキラ)
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