特撮向上委員会
『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』の素晴らしさと中澤祥次郎監督の功績を語る
『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』の素晴らしさと中澤祥次郎監督の功績を語る
■オジンオズボーンオジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会
9月6日から大ヒット上映中の『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』はもう見られたでしょうか?
『仮面ライダービルド』の放送が終わって約一年、脳には強烈に、そして新鮮に各場面が焼きついたと思ってましたが、「グリス」を見てまず感じたのは懐かしさ。
そうそう、この感じを毎週見てたんだよなという感情。
人間って本当に出来がいいのか悪いのか、あんなにハマってたのにたった一年であの感覚をいくつか忘れてしまってました。
しかし、この「グリス」を見て作品に没頭する中で同時にあの頃の空気感、匂い、感情がよみがえりました。
新世界でパンドラボックスの影響によって急に記憶を取り戻したビルドメンバー達の感じを疑似体験できた、と言ったら言い過ぎになるでしょうか。
『仮面ライダージオウ』、『仮面ライダーゼロワン』という新世界で過ごしてたはずなのに、一気にビルドの世界に引き込んでくれる。
「グリス」はそういう映画です。
監督は中澤祥次郎監督。
ここ15年の東映特撮に多大な貢献をされたレジェンド。
仮面ライダーは「エグゼイド」と「ウィザード」、スーパー戦隊は「ニンニンジャー」「トッキュウジャー」「ゴーカイジャー」「シンケンジャー」「ゲキレンジャー」でメイン監督を務められてます。
これを見るだけでも、どれだけ信頼度が高いかがわかります。
好きな箇所を挙げろと言われれば枚挙に暇がありませんが、わかりやすいところで言えば、やはり「シンケンジャー」のOPでしょう。
あのスーパー戦隊っぽさをあえて排除したクールなOPは、「シンケンジャー」の作風にバチっとハマり、僕たちを驚かせてくれました。
確かにパイロット監督をこれだけ担当されてるのはすごいんですが、本当にすごいのは「リュウソウジャー」「ジオウ」「ルパパト」「ゴーバスターズ」「ボウケンジャー」「マジレンジャー」、これらの作品の3話4話(ゴーバスは4話5話)は、なんと全部中澤監督が担当されてるんです。
メイン監督も当然大変なんですが、3話4話も相当苦労すると言われている回です。
メイン監督が作ったものを軌道にのせるという、相当重要な役割を果たさないといけない使命が課せられてるとのことなんですが、中澤監督はこれだけやってこられてるんです。
このあたりも天才と言われるゆえんかと思うんですが、今回の「グリス」ではその中澤監督の天才ぶりや凄ワザが詰め込まれています。
中澤監督が「ビルド」に関わられたのは、グリスの初登場回。
それ以降、「ビルド」には関わられていません。
後半にとんでもない怒涛の展開を繰り広げる「ビルド」を一話も担当されてないんです。
なのに、この映画では僕らが求めているビルドの演出、一海の撮り方、作品の色がバッチリ合ってるんです。
何気なく見てたらわからないかもしれませんが、これは相当すごいことなんです。
グリスブリザードの丁寧な描き方なんか、上堀内監督が撮ったんじゃないかと思うほど。
そのあたりを調整しつつその上で中澤監督らしいキレキレの映像でしっかり魅せてくれるんですから
それはもう、流石と言うほかありません。
そんな環境の中、それに応えるかのように輝きを放ちまくるのは、主演であり我らのカシラ・武田航平くん。
三枚目のシーンも魂こもった演技するから、二枚目になった時の振り幅がとんでもない。
まさに嘘偽りなく心火を燃やしてるのが、スクリーンからビシビシ伝わってくる。
それを見て余計な感想などは浮かばない。
出てくるのは純度100パーセント、なんの濁りもない「かっこいい」という感想。
三羽ガラスの栄信さん、芹澤興人さん、吉村卓也さんも最高。
今回絆がより強調された作品でしたが、実際に4人の仲の良さが、もう映像からダダ漏れしてまして、自然と口角が上がってしまうシーンが多々ありました。
極寒だったと聞く冒頭の海のシーンとかは、舞台挨拶のコメントで本当にキツかった、地獄だったと4人が口を揃えて語ってましたが、顔を見ると全員幸せな表情(笑)。
これが最後の祭りだと今作でも一海が口にしていましたが、終わり終わり詐欺だと言われようともまたこのグリスチームの新作が見られることを願ってます。
そしてそこでまたこれが最後の祭りだと聞かせてくれることがあれば、これ以上幸せなことはありません。
(文:篠宮暁)
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