映画『彼らは生きていた』レビュー:現代の映像技術で再現された第1次世界大戦=戦争の地獄
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映画は映像技術の発展とともに、その歴史を歩み続けています。
サイレントからトーキーヘ、モノクロからカラーへ、フィルムからデジタルへ、スタンダードからシネスコ、ビスタなどスクリーン・サイズの多様化、3Dや4D、撮影用機材の小型軽量化……。
見る側も、今は映画館のみならずTV、スマホなどさまざまな鑑賞手段が可能となっています。
一方で、戦争を抜きに映像技術の躍進を語ることもできません。
アメリカではかつて戦場を記録するという目的で、国を挙げてカラー・フィルムの開発などに勤しんできました。
日本の特撮技術も『ハワイ・マレー沖海戦』(43)など戦時中の戦意昂揚映画製作に伴いながら躍進してきたという事実があります。
常にどこかで対になっている映画と戦争。
そして今や100年以上の歴史を誇る映画は、第1次世界大戦の模様も捉え続けていました。
当時なので、もちろんサイレントのモノクロ映像フィルムで、音声もありません。
しかし現在の映像技術は、それらに色を付け、音を入れて1本の“映画”として、第1次世界大戦の惨禍を世界にお披露目することに成功しました……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街434》
『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(01~03)などの名匠ピーター・ジャクソン監督が放つ『彼らは生きていた』は、単なる記録の域を超え、戦争がいかに地獄であるかを当時の映像と現在の技術で見事に訴えかける傑作です。
100年前の膨大な記録映像を
カラーリングして再構築!
最初に映画『彼らは生きていた』がどのようにして作られたか? を軽く解説していきましょう。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=gelre9axeJ4&feature=emb_title
イギリス帝国博物館には第1次世界大戦の西部戦線で撮影された2200時間に及ぶ記録映像が所蔵されています。
本作はそれらの素材を基に、第1次世界大戦の終戦100年を記念したドキュメンタリー映画を作れないか? という博物館側からの依頼を受けたピーター・ジャクソン監督が4年越しのプロジェクトとして取り組んだものです。
まずは映像を100時間ほどピックアップして、3DCG技術を駆使して映像の修復とカラーリングを施しました。
当時は1秒13フレームだったり16フレームなどバラバラなスピードで撮影されていましたが、それらをすべて1秒24フレームに統一。
また第1次世界大戦当時は音声を録音する技術はありませんでしたが、BBCには戦後に収録された200人もの退役軍人らのインタビューが600時間ほど保管されていて、そこから映像に合わせたナレーション素材を構成。
さらには当時の訛った英語を喋ることができる人々を集めてアフレコを敢行し、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの音響でアカデミー賞を受賞したパーク・ロード・ポスト・プロダクションのスタッフが当時の風や馬のひづめなどの“戦場の音”を再現したサウンドトラックを作り上げ、映像に重ね合わせていきました。
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