映画コラム

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2020年04月11日

【非常事態への心構え】『日本沈没』など小松左京原作映画が示すもの

【非常事態への心構え】『日本沈没』など小松左京原作映画が示すもの




混迷する今の時代こそ
小松原作映画のリメイクを!


『日本沈没』以外にも小松左京の小説を原作に作られた映画として、以前ご紹介したウイルス兵器の漏洩によって南極大陸の観測員863人を残して世界が滅亡してしまう深作欣二監督のSFパニック・サバイバル映画超大作『復活の日』(80)があります。




これなどはまさにコロナパニックの今リアルに映えわたるものがありますが、一方で本作は戦後の東西冷戦を背景にしていて、これは冷戦による第3次世界大戦の危機が身近なものとなっていた1960年代前半に原作小説が執筆されていることとも無縁ではないでしょう。

また東西冷戦に伴う世界各国のスパイの暗躍を背景に1960年代は007をはじめとするスパイ映画が大流行しましたが、それを受けて小松左京がスパイと超能力者(エスパー)を掛け合わせて書いた小説『エスパイ』も1974年に映画化されています。




そして小松左京自身の製作総指揮・脚本で製作にあたった橋本幸治監督(彼は『日本沈没』の助監督でもありました)のSF大作『さよならジュピター』(84)は、木星を爆破させることで地球に接近するマイクロブラックホールからの危機を回避しようとするミッションに対して、過激な自然環境保護団体のテロが始まるという、これも鯨やイルカ漁の問題など今の日本と世界の関係性を予見した内容でしたが、映画全体としては『ロミオとジュリエット』に倣ったかのような恋愛エピソードが大きなマイナスになっています。

なぜか突然東京一帯が謎の雲に覆われてその中に入れなくなってしまうことからもたらされる危機を描いた舛田利雄監督の『首都消失』(87)は、原作にないメロドラマの要素を大きく加味したことで本来のシミュレーション・パニックものとしての醍醐味が薄れてしまったきらいはあります。

私見としては『エスパイ』『さよならジュピター』『首都消失』とも映画全体の出来としてはムムム……なところが大いにあって(特に後者の2本)、それこそ『シン・ゴジラ』的なリアル・シミュレーション的センスでリメイクしてもらいたいと願ってやまないほどでもあります。

ただし、いずれも今のCG全盛の時代の映画では醸し出し得ない、手作りの特撮の心地よい味わいがあります(特に『首都消失』でのおよそ100トンのドライアイスを用いた雲の表現は一見の価値ありでしょう)。

今の時代を鑑みながら『日本沈没』を含めたこれら小松左京原作映画を見直してみてはいかがでしょうか(もちろん原作小説も!)

(文:増當竜也)

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