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2020-06-23

洋画実写

『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』レビュー:アイデンティティについて、まさに”今”浴びるべき映画

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■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

60回目の更新、今回もどうぞよろしくお願い致します。

映画館も、新しい生活様式、というよく分からないシステムの下、再開してくださいました。(待ってました。ありがとうございます)

2ヶ月ぶりに映画館へ駆け込み、ロビーを歩き暗闇の中のフカフカな座席に深く腰を下ろす。予告が始まり、ゆっくりと本編が始まる。

「これこれ!これだよ!」と何度心で思ったことか。

"おうちで映画"もいいのですが、やはり映画館で見るという体験は、何物にも変えられないですし、なんとも言い難いモノ。観るという行為ではなく、"体験"なのだなと今一度感じました。計算し尽くされた世界、音設計、色味、等々それらを感じる為には、それ仕様に用意された状況で観なければ効果は得られません。あたしは幸せです。

多くの人にも、こんなささやかな幸せが伝わるように今日もネットの片隅でこれを書いています。少しでも伝わることが出来るなら、あたしゃ幸せです。

と、こんな感じの入りですが、今回はコチラの素晴らしい映画をご紹介!!

『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』





南北戦争時代のアメリカ。貧しいながらも、マーチ家は真っ直ぐ自分らしく、そして仲良く生活していた。長女のメグ(エマ・ワトソン)は心優しく、女優に向いていると妹に言われても自分が望むのは幸せな結婚だという、少し奥ゆかしい女性。

次女のジョー(シアーシャ・ローナン)は、情熱的で小説家を目指す女の子。姉妹での芝居の戯曲を書いたりなど、執筆に励む毎日。

三女のベス(エリザ・スカンレン)は、姉妹の中では少々内向的で繊細な性格。体もあまり強くなく病気がちではあるが、ピアノの才能があり、音楽を心から愛する女の子。

四女のエイミー(フローレンス・ピュー)は、いたずら好きで、よくジョーと喧嘩になり、姉妹の中ではアグレッシブな子。画家志望であるが、同時に現実も冷静に見ていて賢い面も持つ。

そんな賑やかな4姉妹を優しく見守る母マーミー(ローラ・ダーン)。とても魅力的な女性で革新的な部分があり、娘たちをよりよい道へ導いていく。

それぞれ夢を持ち、希望に満ちた少女たちは成長するにつれて現実を知ることになり、物語を紡ぎ出していく。マーチ家と仲良くなる隣人の富豪の孫ローリー(ティモシー・シャラメ)が姉妹に加わることで、より輝きをます少女たち。

女性的であること、自分自身が信じるもの、時代の中で生きること、色々なことを迎えながらも一家は、自分らしく生きていく。それぞれが選択し決意した先に、どのような物語が広がっていくのか。




作者 ルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説『若草物語』の映画化。150年前に書かれた世界的にも有名な小説は、何度も映画化もされておりますが、映画『レディ・バード』を手掛けた映画監督グレタ・ガーウィグが新たに息を吹き込んだ傑作。

世界の賞レースで名前を挙げられている本作がいよいよ日本でも公開です。(いやー待ってましたよ)

「レディ・バード」に続きガーウィグ監督とタッグを組んだのはシアーシャ・ローナン。次女ジョー役を内面から見事に体現しています。

150年ほど前に書かれた作品ですが、今にも通ずるアイデンティティの話。時代の中で自分らしく生きるとは、、、を訴えています。そこに"今"を感じます。(昔から変わらないのですね)

魅力的なキャラクター達に、観たら必ず誰かの考えに共感します。(わたしはあの人に共感、、、)明日を生きる希望となる映画なのではないでしょうか。

まぁ全編通して大体は家族のシーンなのですが、それらのシーンはまさにその家族を覗いているような錯覚になるほどに自然で、思わず微笑みながら眺めてしまいました。監督が計算し尽くしたという、それぞれの会話が重なる精緻な造り。リハーサルも幾度も重ねたと言っています。(エイミー役のフローレンスは『ミッドサマー』の撮影後の合流でリハには参加出来ずだったようですが、さすがの馴染みで、全くその差を感じない)




それぞれに合った配役。監督の絶大な信頼を得ているローナンを筆頭に、それぞれの役者が与えられたこと以上に、その力を十二分に発揮しています。姉妹に注目しがちですが、私は母親マーミーを演じたローラ・ダーンに釘付けでした。仕草、眼差し、見守る雰囲気、どれをとってもどこを切り取ってもその人物になり切る芝居力と包容力、ほんとに見事。『マリッジ・ストーリー』にて、セクシーで主張強めのクセあり弁護士を演じた人と同一人物だとは1ミリも感じさせません。その演じ分けもあり、アカデミー賞では助演女優賞を見事受賞しています。クセのある顔もまたいい味で、とても素敵です。あぁチャーミング。

もちろん伯母を演じたメリル・ストリープ大先生も、ピリっと効きすぎるスパイス要因としてのポジションを素晴らしく体現。出てくるだけで、オーラに圧倒され、シニカルパートもきっちり仕上げていらっしゃいますね。さすがは大先生です、はい。

若草物語とラストは変わっていきますが、作者のオルコット自身の実話のほうには近くなっています。(ここは詳しくは言えませんが、すこし触っておきます)

ジョーの選択。どちらも見れるような構造に「おお!」っとなります。作家ということを利用して、タラレバを上手く見せてくれたガーウィグ監督のセンスに称賛を。(監督ありがとうございます、巡礼させてください。)

監督のセンスポイントとして、ひじょーーーに細かいのですが、個人的に良きっ!と思った点も少々。

ジョーが眠ってしまい、あることにハッと起きて階段を駆け下りるシーンがあるのですが、そこでの躍動感を演出するために一瞬、"手摺りに掛ける手のアップ”のカットを入れているのです。

ここでわたしは叫びましたよ、「センスっ!!」と。

入れ込み方、タイミング、見事なアングル構成だなと感動したことをここに記します。(未見の方は是非ご注目を。そして叫びましょう「センスっ!」と)

色々と注目してほしい激アツポイントはあるのですが、そこはそれぞれで是非感じてほしいので、口をつぐんでおきます。

150年前の物語ではなく。まさに"今"を感じさせる、アイデンティティについての物語。必ず共感し、持ち帰るものが多く、是非見ていただきたい映画です。

“美しく生きる。”

その答えがここにあるのかもしれません。


それでは今回も、おこがましくも紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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