映画コラム

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2020年09月18日

星野源、高橋一生らが大奮闘する『引っ越し大名』!

星野源、高橋一生らが大奮闘する『引っ越し大名』!



ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会



先月、半年以上も空き家になっていたうちの隣の家にようやく入居者があり、引っ越しがてらの挨拶に来られました。

コロナ禍の今年の真夏、引っ越し屋さんたちがマスクをしながら荷物を汗だくで運ぶ姿は何ともかなり大変そうで、はたで見ていたこちらまで息苦しくなりそうな感じではありましたが、汗だくといえば、昨年見た映画『引っ越し大名』に出てくる侍のみなさんたちもかなり苦労しながら引っ越ししてたなあと、ふと思い出したりもして……。

そんなわけで今回は『引っ越し大名』をご紹介!

引きこもり侍による
藩の引っ越し大作戦!




ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会




映画『引っ越し大名』は、生涯で7回も国替えをさせられ「引っ越し大名」とあだ名された松平直矩を題材とし、『超高速!参勤交代』などで知られる土橋章宏が記した小説「引っ越し大名三千里」を原作に、『のぼうの城』などの犬童一心が監督した時代劇です。

もっとも、主人公は直矩ではなく、その引っ越し奉行として奮闘した片桐春之介(星野源)です。

江戸時代の前期、姫路藩(今の兵庫県)藩主の松平直矩(及川光博)は幕府の命令で豊後国(今の大分県)日田藩へ国替えすることになりました。

全ての藩士とその家族を連れて移動する国替えは、参勤交代どころではない膨大な費用がかかる一大事業で、これまでも幾度か国替えをさせられて藩の財政は困窮している中、減封まで言い渡され、さらにはこれまで国替えを担当していた引っ越し奉行が死んでしまい、急遽後任を探さなければいけません。

その後任に任命されたのが、何と書庫番の片桐春之介でした。

この男、人と接するのが尋常ではないほど苦手で、書庫に籠って本ばかり読んでいるという、いわば人みしりの域を越えた引きこもり書物オタク。しかし、それゆえに国替えの知識もあることだろうといった、はたから見なくても「そんな理由で大丈夫?」としか思えない理由からなのでした。

事実、国替えの知識など皆無だった春之介は途方に暮れた挙句、前任者の娘・於蘭(高畑充希)に助けを乞います。

於蘭の厳しい指導や親友・鷹村源右衛門(高橋一生)の協力などを経て、春之助は移動総人数1万人、距離600キロ、そして予算は限りなく0に近く!? そんな超難関プロジェクトに挑むのでした! ……が!?

昔の侍も今野サラリ-マンも
本質は同じ!?




ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会



本作は『武士の家計簿』以来ずっと好評を博している「昔の侍も今のサラリーマンと同じようなものだった!」ことを訴える時代劇映画の新機軸路線の1本です。

ホント、昔も今も日本の社会って本質的には何も変わってないのねってことを、ため息混じりに、しかし一方では面白おかしく伝えることで、今の時代の観客のシンパシーを得ることに見事に成功しています。

特に今回は好漢・星野源が引きこもり侍を演じていることで、あるある感も増大しつつ、女性ファンならずとも彼を応援したくなること必至。

また「半沢直樹」ほどではありませんが、今も昔も組織というものの中には陰謀作術のドロドロしたものが跋扈しているものでして、しかしながら本作はそういった要素もカラリと描いていくので、見ている側も快適であり、それは犬童一心監督ならではの明るい個性の賜物ともいえるでしょう。

犬童監督といえば、自主映画時代から女の子映画を可愛く描くことに関して達人でしたが、今回も高畑充希の可愛らしい魅力を巧みにとらえています。

さらにこの手の作品としては「え!?」となる本格チャンバラ・シーンも用意されているなど、サービス精神もふんだん。

「たかだか引っ越しするだけのお話で、1本の映画が作れるの?」という疑問に対して、「ハイ、ちゃんと面白いものを作れます!」という答えを証左するに足る1本です。

肩の力を抜いて、ぜひにぜひにお楽しみのほどを!

(文:増當竜也)

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