人を思うこと、それを感じて欲しい―映画『秋の理由』趣里、単独インタビュー
現在全国公開中の、伊藤洋三郎&佐野和宏W主演、福間健二監督の映画『秋の理由』。本作でヒロイン・ミクを演じた女優の趣里に単独インタビューを行なった。
映画『秋の理由』趣里、単独インタビュー
映画『秋の理由』より (C)「秋の理由」製作委員会
映画『秋の理由』は、詩人としても活躍する福間健二監督の最新作で、60代を迎えた2人の男の友情を中心に、彼らを取り囲む人々とともに生きることへの「肯定」を描く。
編集者・宮本守役を伊藤洋三郎が、苦悩する作家・村岡正夫役を、ピンク四天王の1人としても知られる佐野和宏が演じるほか、村岡の妻・美咲役を寺島しのぶが演じる。
本作で、重要な役どころであるミクを演じたのが女優・趣里だ。伊藤洋三郎が演じる宮本を翻弄し、時に幻想的なシーンで強烈な存在感を放つ彼女は、本作をラブストーリーだと語る
――趣里さんにとって、本作はラブストーリーだと。
明確な説明が出てきたり、何かものすごい事件が起きたりとかではありません。だけどみんながものすごく追い詰められていて、それぞれの色んな思いが交差している。一見静かなようだけど、ふつふつと心の中で動く愛があるなと。
――ミクが宮本に「私とやりたい?」と言い放つシーンは印象的でした。ご自身も、ああいった大胆なタイプですか?
私は無理です(笑)あんな風には言えないタイプですね。今回の作品で、改めて思ったのが、お芝居って自分が言えないことを言えるからすごいなと。
――あのシーンって、通常はエロティックに走りそうなところですよね。
そうですよね。だけど、ミクは“やらしさ”を前にだしたキャラクターじゃないからこそ、ああいった演技になったんだと思います。
――お相手の宮本を演じた伊藤さんの印象は?
あのまんま、優しくて紳士的で、素敵な方です。あと、とにかく見た目が若い! ずっと「若いですよね」ってご本人に言ってたくらいですよ。肌がつやつやしてるなーと(笑)だからこそ、自然にあのシーンも演じることができました。
――お父さまと同じくらいの年頃ですよね。その年頃の方って恋愛対象になるのでしょうか?
人によりますね(笑)ただ、年齢は関係ないと思いますよ。私は、ユーモアがある人が好きなので、お話が面白いのは重要なポイントかな……。そういった意味で、人生経験の豊富な方は魅力的ですよね。
――村岡を演じた佐野さんは、いかがでしたか?
とにかく筆談(※)でいっぱいコミュニケーションをとってくれました。それと、とにかく目力がすごい。佐野さんの演技で、言葉ってあるようでないものなんだなって思わされました。
※…佐野和宏は喉咽頭癌の手術により声帯を除去。本作では声がでない役を演じている。
――言葉を発さずに役を演じきるって、役者の真骨頂ですよね。気迫に押されてしまったみたいなのはありましたか?
佇まいだけで語りかけてくるんです。力強さと生命力を感じましたね。
――佐野さんとの共演シーンでは、幻想的な世界になって、ミクの雰囲気が突然変わりますよね。
特別演じ分けるといった意識はしなかったんです。小説の中にいきる存在としてのミクを、あまりはっきりと決めてしまうとよくないなと。小説って、読んで、聞いて、どう感じるかっていうのが重要で、受け手側が決めるものですよね。こっちが押し付けるのでなく、受け取った人がどう感じるかというのを念頭において、とにかくシンプルに演じるようにしました。
――ミクの存在は、この世のものなのかどうかも分からない感じでしたね。
そもそもミクは実在しているのか?と監督とも話しましたね。登場人物たちが、それぞれ見ている幻想のような存在で、まるで空から降りてきた天使のようなものなのかなと。
――監督とは初めてでしたよね?ご一緒してみてどうでしたか?
穏やかですごく素敵な方でした。みなさん、本当に素敵な方ばかりで、こういう方たちと作品が作れて良かったなと思いました。
映画『秋の理由』より (C)「秋の理由」製作委員会
――もう1人重要な役といえば、寺島しのぶさんが演じた村岡の妻・美咲。共演シーンはありませんでしたよね。
そうなんですよ、それが残念で。だけどそのあと、舞台で共演させていただく機会があって、とにかくしのぶさんはカッコいいんです。すごく憧れています。
――女性としての色気もすごい。
感じますよね。今回の手だけで演じるシーンも印象的で……。しのぶさんが出てくると、とにかく説得力がすごいんです。お芝居や映画って虚構の世界じゃないですか?でもそれが、しのぶさんが出てくることで、一気に現実的になるというか、香りを感じるんですよね。
――女優・趣里として今後は?
映像なのか舞台なのかはこだわってないのですが、とにかくイメージを変えるような役をやりたいです。
――割りとお嬢様っぽいイメージがありますよね。
本当は全然そんな感じじゃないんです(笑)だから、むしろ真逆もやってみたいですね。あとは、キレてぶっ飛んだ役とかもやりたいですね。そういうマイナス部分って、必ず誰しもが持っている部分じゃないですか。もっと人の内側の部分を表現していきたいなと思っています。
――そういった意味では、今回の作品も人間の内面に迫っていますよね。
内側にあるものは、何考えているんだろうなっていう感じですね。そういった意味で、この役に巡り会えたことに感謝しています。
――この作品で、特に何を感じてほしいですか?
監督が紡いだ言葉ですね。1つでいいので、何かひっかかってもらえたらいいなと。家族や恋人や兄弟とか、人を思うこと、それを感じてくれたら嬉しいです。
ヘアメイク&スタイリスト:山崎惠子
ワンピース¥21,000(税抜) トゥービー バイ アニエスベー/ネックレス ¥5,000(税抜) イヤリング ¥3,200(税抜) ラフィア
(取材・文/黒宮丈治)
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