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2020-10-15

コラム

『軽い男じゃないのよ』男女の立場が逆転した世界、予想を覆す衝撃のラストは必見!




第3回:『軽い男じゃないのよ

Netflix沼に無数に存在するコメディ作品の中から、オススメの映画やドラマをご紹介する、この連載。

今回ご紹介するのは、2018年製作のNetflixオリジナル映画『軽い男じゃないのよ』です。

路上で頭を強く打って気絶した男が目覚めると、なんとそこは男女の立場が入れ替わった世界だった!

女性が日常的に受ける不平等や差別を体験する主人公の姿を通して、さまざまな社会の問題点が明らかにされていく本作。

先日ご紹介した『82年生まれ、キム・ジヨン』と併せて観て頂くと、より深く考えさせられる作品なのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー


普段から女性を見下すような無神経な言動を取っていた独身男ダミアンは、ある日頭を強く打って気を失ってしまう。彼が意識を取り戻すと、そこは女性ばかりが社会で活躍し、男性は差別的な扱いを受けながら家事や子育てに従事する男女逆転の世界だった! 戸惑いながらも、傲慢な人気女性作家の助手として働きはじめるダミアンだったが…。


もしも男女の立場が逆転した世界で目覚めたら?



自分が取っている女性への差別的な言動に、何の疑問も抱かずに暮らしていた主人公ダミアン。そんな彼が突然、男女の立場が逆転した世界に放り込まれたことで、女性側の立場から世の中を見ることになる、この『軽い男じゃないのよ』。

女性差別やハラスメントという自覚がないまま繰り返していた無神経な言動が、今度は自分の身にブーメランのように返ってくることで、ダミアンの意識も次第に変化していくことになります。

序盤では、こうした逆転設定の面白さで笑わせてくれる本作ですが、男女の立場が逆転した状態が普通である世界にダミアンが現れたことで、別世界の人々の常識が揺るがされる点は、この映画の重要なテーマと言えるでしょう。

そこには、現在の状況や社会の仕組みに疑問を抱かない人々の無関心こそが、さまざまな社会問題や差別の根本的な原因であることが、見事に描かれているのです。



元の世界で気になっていた女性アレクサンドラが、逆転した世界では人気作家として活躍していることを知ったダミアンは、彼女の助手として働くようになります。

自分が別世界から来たことをダミアンから聞かされたアレクサンドラは、彼の話から次回作の構想を得て、小説執筆のために彼を利用しようとするのですが、次第に二人は愛し合うようになってしまいます。

恋愛と仕事の二択を迫られたアレクサンドラは、ダミアンを小説のネタにすることを諦めて、彼に全てを告白。こうして二人は結婚することになるのですが…。

正直ここまで観た段階では、過去の類似作品と同様にダミアンが元の世界に戻って過去の言動を反省し、女性の立場に立って考えられる人間に成長することで、元の世界のアレクサンドラと結ばれてハッピーエンドを迎える、そんな結末を予想していました。

ところが、結婚を決めた二人の前に意外な事実が判明したり、ダミアンが性被害に遭う描写が登場するなど、ラストに向けての着地点が予想できないまま、ダミアンが別世界に飛ばされる原因となった出来事が再び起こり、ついに物語の舞台は元の世界へと移るのですが…。

ここから先の展開は、ぜひご自分の目で目撃していただきたいのですが、観客の予想を裏切るその結末は必見!

同傾向の過去作のように、逆転した男女の立場が元に戻ってハッピーエンド! そんな見慣れた結末に終わらせず、男性を主人公として始まった物語が、最終的に女性側の視点で結末を迎えるという展開に加え、あれほど女性に対して差別的で無神経な行動を取っていたダミアンが、ラストで"あの集団"の中にいた意味の大きさに気付いた時、この映画が描こうとしたテーマや問題点が観客の心に深い余韻を残すことになるのです。

男女逆転というアイディアで笑わせる、ライトなラブコメ映画と思わせておいて、ラストで観客の予想を一気に覆すその衝撃の展開を、ぜひお楽しみ頂ければと思います。

最後に



男女逆転の世界で展開するラブコメの姿を借りながら、現実の問題や男女の新しい関係性を描こうとする、この『軽い男じゃないのよ』。

男女の立場を逆転させたことで、女性差別や偏見が性差によるものだけではなく、社会の仕組みに疑問を抱かない人々の意識こそが問題なのだ、という根本的な部分が浮き彫りになり、ストーリーの進行と共に男女逆転への違和感が次第に消えていくのは見事!

加えて、ラストで一気に視点が変わることで、男性側から見た物語だけにとどまらず、男女双方の問題として観客に疑問を投げかける展開も、実に上手いのです。

軽い男じゃないのよ』という、ライトな邦題とは真逆な結末が素晴らしすぎる傑作なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)