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2020-11-07

コラム

『おらおらでひとりいぐも』レビュー:75歳女性、心のジャズセッション!

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(C)2020「おらおらでひとりいぐも」製作委員会



ある程度の年齢にさしかかってくると、老いの問題は他人事ではなくなってきます。

どんなに仲の良い夫婦でも、いずれは別れが来ます。

我が子もいずれは家を出て、新たな家庭を築き上げたりしていくところは多いでしょう。

愛する者に先立たれたり、新たな旅立ちを見送ったりした後も、ひとりで生き続けていく孤独とは一体どういうものなのか……。

しかしながら、この映画はそういった深刻な問題をシリアスに描くのではなく、むしろ飄々としたユーモアと、ファンキーでファンタジックな情緒をもって描いてきます……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街518》

そう、田中裕子主演『おらおらでひとりいぐも』は、あたかも人生そのものをジャズセッション化してみたかのような快作なのでした!

ひとり暮らしの75歳・桃子さんと
3人の“心の声”




(C)2020「おらおらでひとりいぐも」製作委員会




映画『おらおらでひとりいぐも』は、63歳の新人作家として注目を浴びた若竹千佐子の同名小説を映画化したものです。

彼女は55歳で夫を亡くした後、小説講座に通うようになって、この小説を書き上げた結果、60万部を突破するベストセラーとなり、今では韓国や中国などのアジア圏での翻訳も進んでいるとのことです。

そして本作の主人公は、原作者自身の人生観などを大いに反映させているのであろう、独り暮らしをしている75歳の桃子さん(田中裕子)です。

夫に先立たれて久しい彼女は、毎朝起きて三度のご飯を作り、TVを見て、散歩して、夜になったら寝る。

そんな単調な日々の繰り返しです。

もっとも地球46億年の歴史を調べるなどの趣味はあるようで、あるとき彼女がその調べ物をしているとき、突然3人の“人影”(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)が現れました。

彼らは何と桃子さんの心の声“寂しさ1&2&3”が具現化した姿なのだそうです。

その後もずっと桃子さんにつきまとうようにべったりの3人は、東北弁でしゃべり続けています。

日頃標準語を使い続けていた桃子さんですが、ふと自分が捨ててきたはずの過去を思い返していくのでした……。

それは東京オリンピックが開催された1964年、当時東北に住んでいた20歳の桃子さん(蒼井優)は気の乗らないお見合いをするのが嫌で家を飛び出し、上京して蕎麦屋で、続いて定食屋で働きはじめます。

自分のことを「おら」ではなく「私」と言うのが普通な東京の暮らしの中、彼女はお店で「おら」を平気で使うお客の周造(東出昌大)に親近感を抱き、やがて二人は結婚し、家庭を設けます……。

そして今、日々の生活に楽しみも何も見出せなくなっていた桃子さんではありましたが、3人の登場によって少しずつ何かが変わり始めていきます。

まもなくして彼女は、夫の墓参りへと赴くのですが……。

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