特撮向上委員会

SPECIAL

2020年11月08日

スーパー戦隊の王道とは何かを考える。東京国際映画祭の充実した特撮プログラムを堪能

スーパー戦隊の王道とは何かを考える。東京国際映画祭の充実した特撮プログラムを堪能

■オジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会

今年の東京国際映画祭は、スーパー戦隊関連のプログラムがとても多く、途轍もない盛り上がりをみせています。

特撮ファンにとっては連日うれしいニュースの嵐。

そして生配信された動画を見漁る日々。

現在開催中の第33回東京国際映画祭では、昨年から設立されたジャパニーズ・アニメーション部門にて「秘密戦隊ゴレンジャー生誕45周年記念スーパー戦隊特集」と銘打ったイベントが開催。


「ゴレンジャー」の上映前にはアカレンジャーの誠直也さんが登壇して当時の話をしてくださったり、それに伴って他の日には15th ANNIVERSARYということで、『魔法戦隊マジレンジャー』のキャスト6人全員が集合したり、『特命戦隊ゴーバスターズ』も集合したり。

また、今や紅白歌手の純烈のメンバーでもあり、ガオブラックの酒井一圭さんプレゼンツで、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』のメンバーと『星獣戦隊ギンガマン』から前原一輝さんと宮澤寿梨さんが参加された「スーパー戦隊サプライズフェスティバル」も行われました。

当時の話や今だからこそ話せる話に、驚いたり笑ったりして過ごす至福の時間。

さすがに年月が経ってると既に俳優業を引退されてる方も結構いらっしゃるんですが、こうして姿を見せてくれることがとにかくうれしいし、ありがたいわけです。

「マジレンジャー」のヒカル先生こと市川洋介さんも引退されて今はなんと高校の先生になられていて、しかも教え子には『仮面ライダードライブ』でマッハこと詩島剛を演じた稲葉友さんがいたという、とんでもないエピソード付き。


そしてさすが、スーパー戦隊親善大使の松本寛也さん。

「マジレン」の回も「ゴーバス」の回も、会話の潤滑油としてガンガントークに入っていかれるので、楽しい雰囲気が途切れることがありません。

「ゴーゴーファイブ」は、谷口賢志さん以外のメンバーは既に引退。

「現役ってこうも違うか」と思うほど谷口さんの色気が画面から漂ってくる中で、ゴーレッドの西岡竜一郎さんとの喧嘩した話がむちゃくちゃ面白い。

「マジレンジャー」も「ゴーゴーファイブ」も兄弟戦隊なんですが、トークで少し言い合いになったり小競り合いするところが本当の兄弟喧嘩のようで微笑ましくもあり、何かに近いなと思ったら正月に親戚が集まったときに、おっちゃんおばちゃんらが自分の親も交えて始める喧嘩がフラッシュバックしました。


キャストの方々のトークも興奮したんですが、もっとも興奮したのは「マスタークラス スーパー戦隊シリーズの歩み」というトークイベント。

登壇されたのは、アカレンジャーの誠直也さん。

『鳥人戦隊ジェットマン』から脚本に関わり、現在放送中の『魔進戦隊キラメイジャー』でもメインライターを務められている荒川稔久さん。

『恐竜戦隊ジュウレンジャー』から20作以上撮り続け、現在もバリバリ現役、スーパー戦隊を熟知している渡辺勝也監督。

監督もアクション監督も兼任できる唯一無二の監督で、今日の「パワーレンジャー」があるのはこの方のおかげと言える坂本浩一監督。

そして平成仮面ライダーの父とも称される、白倉伸一郎プロデューサー。

神々しい。

白倉さんの口からスーパー戦隊が語られるのがとにかく新鮮。

1時間半ほどある配信なんですが、すべてが金言に溢れ、繰り返し繰り返しひたすら聴いていたいほど。

情報として知ってるものもあったりするんですが、文章ではなく音声として聴くと思ってたのとは違う細かなニュアンスも汲み取れましたし、聞いたことなかったエピソードに関してはただ感嘆するばかり。

白倉さんが話された、「パワーレンジャーが世界でヒットしたことで本家のスーパー戦隊にもたらした負の遺産」が実際にはどの部分なのかはわかりませんが、まったく順風満帆ではなかったんだということに驚き。

「戦隊らしさとは何か?」というトークテーマはすばらしく、登壇者の答えが一致してないところがまさに答えであり、司会の藤津亮太さんがおっしゃった「どの戦隊を軸にするかで、王道とするものが人によって変わってくる」という意見が僕の胸にストンと落ちまして。

というのも、僕が「キラメイジャー」の感想で「これぞスーパー戦隊!王道最高!」なんてことを書いたりしたんですが、王道ってなんだろうと少し疑問を抱きながらも定義をはっきりさせずに文字にしている違和感があったからです。

ベタともちょっと違います。

「キラメイジャー」は決してベタではありません。

そんな不確かなものを、制作スタッフでもない僕が声高らかに「これは王道!」というのは、かなり押し付けがましいし傲慢なのかもしれません。

白倉さんは、そもそもシリーズとくくっているのは都合がいいからで、本来は単体作品として扱うべきだと。

そこに共通点を探すことは無意味なことだともおっしゃっており、僕の中にあった違和感がすっとなくなりました。

王道だどうとか言ってる時点で、何かと比べてしまっていたことに今回気付きました。

作品が面白ければそれでいいじゃないかと。

でも、その比べるところにもエンターテイメントがあるので、比べることをまったくしてはいけないってことではないんですが、この意見を頭の隅にでも置いてるか置いてないかで、今後のスーパー戦隊作品との向き合い方も変わってくると思います。

各プログラムを通して見てみると長石多可男監督へのリスペクトが随所で見られ、他にも上原正三さんやいのくままさカメラマンのお名前が出てくることもあり、あらためてスーパー戦隊の魂は脈々と受け継がれているんだなと確認させていただけた今回の映画祭。

東京国際映画祭は今日も熱いプログラムが組まれており、「ガオレンジャー」のメンバーが集合します。

スーパー戦隊25周年のアニバーサリーヒーローの貴重な話を堪能しつつ、引き続きスーパー戦隊愛を育んで参りたいと思います。

(文:篠宮暁)

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