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2020年12月09日

Netflix『今際の国のアリス』レビュー:世界基準を目指す破格のスケール邦画

Netflix『今際の国のアリス』レビュー:世界基準を目指す破格のスケール邦画



Netflixは2019年のアカデミー賞で『ROMA/ローマ』が監督賞含む3冠を獲得、2020年のアカデミー賞ではさらに勢力を拡大、合計24ノミネートを記録。配給会社別に見たとき、この数字はディズニーの23ノミネートを抑えて堂々の一位となります。

今や、映像配信だけでなく、映画・ドラマの製作・配給会社としても大きな存在となったNetflixは現在世界190カ国以上での事業を展開、有料契約者数1億8000万人以上。コロナ禍で多くの企業が軒並み業績を悪化させる中で、“おうち時間”にマッチしたサービス展開で業績を伸ばしています。

その中で新たに12月10日190カ国以上で同時配信されるドラマが『今際の国のアリス』です。



これまでも『全裸監督』や『呪怨:呪いの家』などが配信されてきましたが、本作『今際の国のアリス』はより海外を意識したスケール感のあるドラマに仕上がっていて、欧米圏でも話題となった『愛の不時着』の再来を狙っています。

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破格のスケール感を誇る第一話


 
日本のドラマだと撮影と放映の期間が近いのであまりそういう捉えられ方をしていませんが、海外ではドラマシリーズの第1話はパイロット版として、全体の試金石的な存在となります。第一話で視聴者をどれだけ取り込むかと意識することには日本でも同じですが、海外のドラマは特に海外市場も意識しているためにその気合の入れようは並々ならぬもがあります。

NETFLIXオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』は日本製ドラマではありますが、今までの日本語ドラマにはない海外を強く意識した造りになっています。



それを感じさせるのが第1話です。最大の見どころはなんと言っても大掛かりな渋谷駅前ロケ。

ある出来事から、いきなり無人の渋谷駅前に放り出される主人公たち。

と言っても、この渋谷駅&渋谷駅前、実は足利市に作られた広大なオープンセットです。

実車両も走らせることができるこの大掛かりなセットは映画『サイレント・トーキョー』、中国映画『唐人街探案3』(妻夫木聡、長澤まさみ、染谷将太、浅野忠信、三浦友和出演)、そしてこのドラマで併用することを前提に共同出資して作られた精巧なもので細部まで完全に再現しています。

ちなみに、JR山手線の改札口を入ってすぐのところにある男性用トイレは特に売りらしく『今際の国のアリス』『サイレント・トーキョー』両方で念入りに使われています。

2003年のソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』でロケに使われて以降“日本を象徴する場所”として海外作品でも登場することが多いこの渋谷スクランブル交差点。NETFLIXオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』では第一話でこの渋谷のスクランブル交差点を大々的に描き、強烈なインパクトを残しています。

この部分だけ見ても今までのNETFLIXの日本語ドラマの中では最も海外マーケットを狙ってきていることを感じます。NETFLIXは日本だけで500万人の会員がいて、それだけを対象としたコンテンツ製作だけでも十分機能するのですが、190カ国以上での配信網を持つNETFLIXはこの『今際の国のアリス』をもって日本語コンテンツの世界への積極配信を今までにない熱量でいっていくという態度を見せています。

フル3DCGアニメーション『攻殻機動隊 SAC_2045』ですでに、日本語コンテンツの海外展開を進めていたNETFLIXですが、今回はさらに一歩進めて日本人キャストによるドラマを海外市場に持っていこうとしています。

『今際の国のアリス』の第1話はそれだけの気概を感じる時間と手間とお金がかかっていること肌で感じることができるスケール感を持っています。

『全裸監督』でも当時の新宿を完全再現したオープンセットを作るなど“出し惜しみ”は一切しないNETFLIXですが、今作ではより目に見える形で様々意味でのコストが使われています。

 日本が誇る主演級がずらり豪華キャスト集結

コストと言うことで言えばやはり目を引くのがその豪華キャストでしょう。



すでに、4度目の共演となり息の合ったコンビネーションを見せる山崎賢人と土屋太鳳がW主演となっていますが、これに加えて町田啓太、村上虹郎、森永悠希、三吉彩花、桜田通、朝比奈彩、柳俊太郎、水崎綾女、金子ノブアキ、青柳翔、仲里依紗といった今のヒット作、話題作に欠かせない主演級の豪華キャストがずらりと揃いました。これだけのメンバーを揃えながら撮影期間はなんと5カ月に及びます。全員を全日程拘束したわけではないのでしょうが、全8話で5カ月も費やすのは並みの姿勢ではないと言えるでしょう。



そんな彼らが 現存する世界と似て非なる東京を舞台に、次から次へと理不尽な“げぇむ”を突きつけられ、生きるか死ぬかの戦いを強いられます。

作品制作のエピソードを聞かされた土屋太鳳は“リスペクトトレーニング”があったことを語っています。これは近年アスリート教育などに取り入れられている、他者への態度や言動に関しての講習ですが、撮影現場、そして演技にも良い影響を与えたと言うことです。

またこういった他者との接し方の面での意識や認識の統一はより広い形(日本以外)で作品が見られることを前提にしていると言えるでしょう。


 
監督は『キングダム』『いぬやしき』『アイアイムアヒーロー』『図書館戦争』『GANTZ』と日本映画の中で苦手とする等身大のSFやファンタジーのジャンルを開拓し続けてきた佐藤信介。CGやVFXを使った映像表現や大掛かりなアクションシーンにも定評がある監督で、山崎賢人とは『キングダム』で、土屋太鳳とは『図書館戦争』ですでに組んでいる実績があります。

『海猿』『MOZU』シリーズを手掛けたチームが本作にも参加し、スケール感とドラマの密度の両方を高いレベルで維持しづけました。

アクションを手掛けた下村勇二は国内外でスタントマンとしてキャリアを積み『キングダム』『図書館戦争』などではアクション監督として佐藤監督やW主演と組んだ経験の持ち主です。

これらの豪華キャストとスタッフが“世界水準”を合言葉に作品に挑みました。
 

まとめ



過酷なげぇむのくりあと異世界の秘密を追うという二重の謎解きであり、濃いキャラクターが揃った群像劇と言えば大ヒットしたアメリカのドラマ『LOST』を想像させますが。また頭脳戦と言うことで言えば『カイジ』シリーズや『デス・ノート』シリーズを思い起こさせます。

ここまで海外戦略目線でNETFLIXオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』を語ってきましたが、もちろん日本人が見て楽しめることは大前提として間違いありません。

ネット配信と言うこともあって可能になったバイオレンス描写も健在です。一級の娯楽大作ドラマとして是非追いかけてください。イッキ見必須の作品となっています。

(文:村松健太郎)

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