映画コラム

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2020年12月11日

『新解釈・三國志』と真逆?硬派な歴史スペクタクル大作『墨攻』

『新解釈・三國志』と真逆?硬派な歴史スペクタクル大作『墨攻』

(C)2020「新解釈・三國志」製作委員会

2020年12月11日より公開の『新解釈・三國志』はご存じ中国の名作『三國志』を原作に日本映画界が総力を挙げて壮大に描いたもの……ではありません。

これは『銀魂』や『今日から俺は!』などで知られる福田雄一監督が、持ち前でもある脱力ギャグを徹底的に満載させたもの(そして妙に製作費はかかっている?)。

そして「本当の『三國志』ってこうだったんじゃね?」と問いかけられる観客たる我々は「ンなわけあるかい!」とツッコミを入れるほかない一大コミカル・エンタメ大作です。

まあ、そんなこんなで今回は、中国悠久の歴史に想いを馳せながら映画『墨攻』をご紹介しましょう。



この作品、戦国時代の中国を舞台にした原作・酒見賢一、脚本・久保田千太郎、作画・森秀樹による同名漫画を映画化したもので、中国の『三國志』を日本で映画化したように、日本の原作を中国主体(正式には中国・日本・香港・韓国の合作)で完成させたものです。

とはいえ、こちらはすこぶる真面目な堂々たる歴史スペクタクル大作なので、ご安心を!?

“非攻”を信念とする
戦闘集団“墨家”

『墨攻』の時代背景は、三國志の時代よりもはるか昔、今からおよそ2400年前の中国・春秋戦国時代。

この時期、敵を攻撃することなく守り抜く“非攻”を信念とする“墨家”という戦闘集団がいました。

時あたかも趙の猛将・巷淹中(アン・ソンギ)率いる10万の大軍がわずか4000人しかいない梁城を攻め、落城寸前に危機に瀕しています。

かくして梁王(ワン・チーウェン)は墨家に援軍を求めますが、そこに現れたのは革離(アンディ・ラウ)と名乗る戦術家の男ただひとり。

しかし革離は一か月城を持ちこたえさせることができれば、趙軍は撤退するはずだと梁王に説き、全権の指揮を与えられて“非攻”の準備を進めていきます。

やがて趙軍の猛攻が始まりますが、あの手この手を駆使しての革離の秘策によって城の危機はことごとく回避されていき、いつしか場内の兵士も民衆も彼を認めるようになっていきます。

一方、敵の巷淹中も革離の気骨に大いに感じ入りつつ、己のプライドを懸けて彼と対峙するようになっていくのですが……。


戦闘スペクタクルを通して
争いの空しさを訴える

本作は“非攻”という異色の、そして理想的ともいえる戦闘方法をモチーフにしつつ、数々の戦闘スペクタクルを通して争いそのものの空しさを訴えていきます。

ある意味、それは矛盾ともいえるものかもしれませんが、映画とは娯楽的カタルシスを与えることで非戦屋反戦のメッセージを与えることのできる秀逸でしたたかなメディアでもあり、本作はその最右翼ともいえる作品でもあるでしょう。

監督・脚本は『黄昏のかなたに』『流星』などで知られるメイベル・チャン。

アクション監督に『セブンソード』『孫文の義士団』のスティーブン・トン。

撮影に『HOUSE』『時をかける少女』など大林宣彦監督作品の名手・阪本善尚。 

音楽に『機動警察パトレイバー』シリーズなどの川井憲次。

キャストもアンディ・ラウ、アン・ソンギ、ワン・チーウェン、ファン・ビンビンなど、まさにアジア各国の精鋭が集結しての布陣です。

おそらくは鑑賞後、こうした墨家の非攻なる思想は現実的に成立するのか否か? といった想いを抱かさせてくれることでしょうが、それを機に改めてなぜ人は人と争い続けるのかを哲学的に考えて見るのも一興かもしれません。

いずれにしましてもスケールの大きな作品です。

大いにその壮大な世界を堪能してみてください!

(文:増當竜也)

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