映画を通して考えた、時間の向き合い方
時間。
それは計り知れない概念。
「メモを書いてそれを小さく折りたたみ、隠した。そうすればいつか戻った時、昔の私に会える」
壁の割れ目にメモを馳せる。人がメモを残す理由が、時間に抗うためだとしたら。消えた後も覚えておいてもらうためだとしたら。
「延々と続くような長い時間」「あっという間に過ぎ去る時間」「繰り返される時間」
時間は不思議なもので、一定のようにも、変化しているようにも感じます。本当に神秘的です。
さて、セリフが極端に少ないことが特徴的な映画『A GHOST STORY』をご存知でしょうか。この作品は時間の流れ方が特徴的です。
現在、新型コロナウイルスが猛威を奮っています。自粛やリモート化に伴い、各々が時間と向き合う機会が増えています。そんな今だからこそ、時間の流れにフォーカスした作品を観ることで時間の儚さについて考えることができます。
そこで今回は『A GHOST STORY』を観て、私が感じた「時間」についての考えを書いていきます。
あらすじ
『A GHOST STORY』は2018年に日本で公開されました。
作曲家のCは妻のMと田舎町の一軒家で暮らしていましたが、ある日Cは交通事故で亡くなってしまいます。病院で死亡を確認されたCの遺体は、シーツを被った状態で起き上がり、ゴーストとなってしまいます。
そのまま暮らしていた家に戻るとCが亡くなり悲しみに明け暮れるMがいました。しかしMはゴーストとなったCに気づくことはありません。ただただCが眺めるだけで時間が過ぎていきます。
「このままじゃダメ」そう思い、引っ越すことを決めたMは、メモを壁に隠すように忍ばせて家を後にします。家に取り残されたCはメモを見ようと試みますが……。
全体的にトーンが暗く、セリフが非常に少ない本作は、シンプルでありながらとても深いメッセージが込められています。派手な演出を好む方よりも、雰囲気と映像を楽しみたい方にオススメしたい作品です。
特に最後のシーンは各々感じるものがあるはずです。
時間が経っても語り継がれる
小説家は物語を書き、作曲家は曲を作る。作品を残すことで、自分が存在した証を残せる。そうすれば、自分が消えた後でも覚えてもらうことができる。
実際に、偉人の作品は現代人へ語り継がれます。本作の中で例に出されるベートーベンの交響曲も例外ではありません。彼の死後も、今もなお大切に語り継がれています。そして今後も語り継がれていきます。
語り継ごうとする人が「全世界の人」なのか、「ほんの数人」なのか、そんなことは全く関係ありません。その意思が大切なのです。
先人が書いた本を読み、先人が作った歌を歌う。絵を見るし、映画を鑑賞します。作品が語り継がれるということは、時間や空間を超えて歴史を作るということです。
この尊い文化を、作品を語り継ぎたいと思う感受性を、大事に大切にしていきたいです。
時間が経っても、子どもが親を覚えているように。
いずれ誰もが死んでしまうように。
想いを馳せる
メモや日記を残せば、自分が消えた後でも想いだけは残り続けます。時間や空間を超越して残り続けます。
それが亡くなった人に向けたメッセージでも、未来の自分へ向けたメッセージでも、過去へ向けた自分のメッセージだとしても。
生きていれば考え方が変わることがあります。それによって過去の考えを悲観する必要はない。今の自分を形成しているのは、間違いなく過去の自分の積み重ねであり、失敗から学んだ糧だから。
考え方が変わっても、記された想いが変わることはない。それはとても儚い神秘であり宝物だと私は思います。
今の自分の素直な想いを残すために、忘れないために、書き記す大切さを持ち続けていきたいです。
最後に
人は時間の流れに逆らえません。老いや他人の生死を経験していけば自ずと理解していくことです。
では時間に抗う手段はないのか。そんなことはありません。
数百年前の先人が残した物語や曲を現代まで語り継いでいることから、作品は廃れないことは証明されています。
それは作品なんて大袈裟なものじゃなく、何気ないメモや日記、写真などでも同じです。
「昔の写真をもっと撮っていれば…」
「日記を書き記しておけば…」
「昔の絵を残しておけば…」
そんな後悔をすることもあります。
書き残したり、描き残したり、撮って残したり、手段は問わない。様々な手段で、未来の自分や大切な人のために私自身もっと想いを託してみたいと思っています。
時間は儚いもの。
『A GHOST STORY』を観て、時間の尊さを改めて感じました。
(文:ゆくん)
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