(C)2007 The Weinstein Company.All rights reserved.
(C)2007 The Weinstein Company.All rights reserved.

映画コラム

REGULAR

2022年03月01日

映画『ミスト』があのラストに至った「3つ」の大きな理由

映画『ミスト』があのラストに至った「3つ」の大きな理由


2:自身も危険な扇動者になっていたから

最後の集団自殺以外では、デヴィッドは周りを気遣おうとし、勝手な行動をする他人の命をも救おうとしていた、「正しい」人間のようにも思えます。しかし、物語を振り返ってみると、そこまでの過程でもデヴィッドのせいで命を落とした人物が多いのです。

例えば、序盤にデヴィッドは「シャッターから音がする」と言って4人の人間を呼び寄せ(みんなで見にいこうと言ったのは作業員のジムですが)、そこで若い店員のノームが触手に襲われ命を落とします。デヴィッドの主張を聞き入れようとしなかったジムやノームにも責任があるのはもちろんですが、元々の原因はデヴィッドにもあるのです。

さらに、デヴィッドは「ライトは緊急時のみ、何か侵入した時だ」とジムに教えていて、中盤で怪物たちが襲ってきた時に、その言いつけをジムが愚直に守ってライトを片っ端からつけてしまったからこそ、さらに怪物が光に吸い寄せられ被害が広まっていました。しかも、大火傷を負った青年ジョーのために隣の薬局に抗生物質を取りに行ったことで犠牲者は増え、ジョー自身も死んでしまうため無駄骨になってしまっています。

デヴィッドは、スーパーから脱出したい一番の理由は狂信者であるカーモディの存在であり、「宗教狂いのイカれ女だ。扇動する前にここを出よう」とも話していました。確かに、カーモディは生贄を捧げようともしており、実際に自身に罪がないと必死に主張するジェサップ二等兵も信奉者にナイフで刺され怪物に殺されてしまいます。このままスーパーに止まれば、デヴィッドの仲間からもさらに犠牲者が出てしまっていたでしょう。

しかし、デヴィッドがやったことをよくよく考えれば、「多くの人を扇動し、その結果として犠牲者を増やして、最後には集団自殺をしてしまう」というものだったのです。カーモディとその信奉者の方が(生贄を殺すも)「スーパーの中で団結して居座る」という安全な選択をしており、デヴィッドのほうが結果だけ見ればより多くの人間を死に追いやってしまった……というのは、なんという皮肉でしょうか。そのような危険な扇動者となっていたことに、デヴィッド自身が気づいていなかったということもまた、あの最悪の結末の理由になっていたのだと思うのです。

意味深なセリフがもう1つ。デヴィッドはカーモディの信奉者の人数について「すでに4人いる。昼には8人に増える」と口にしていたのですが、そのデヴィッド自身がシャッター前に連れて行った人数は4人、最後にスーパーから脱出を試みたときの仲間の人数は8人だったりもするのです。この人数の一致は、デヴィッドとカーモディが「本質的には同じ」ということを示していたのかもしれません。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

(C)2007 The Weinstein Company.All rights reserved.

RANKING

SPONSORD

PICK UP!