映画コラム

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2021年03月06日

『ARIA The CREPUSCOLO』レビュー:伝説的癒し系アニメの最新作が、ついに映画館にお目見え!

『ARIA The CREPUSCOLO』レビュー:伝説的癒し系アニメの最新作が、ついに映画館にお目見え!


見る者に癒しをもたらす
秀逸なる画と音の融合

このシリーズ、いわゆるドラマティックなエピソードはほとんどなく、本当に日常の些細な出来事を繊細に、そして優しく温かく綴っていくものが大半を占めています。

なくしていたものが、ふと出てきた……。

影踏みしながら帰宅する……。

買ってきたお菓子が美味しい……。

などなど、文字で記すと何てことないものが、秀逸な画と音の融合を得ながら、見る者に至高の癒しをもたらしてくれるのです。

Choro Club fear.Senooが繰り出すささやかで繊細な音楽と、いつまでも心地よく胸に響き渡る主題歌の数々なども特筆しておくべきでしょう。

TV放送時は日曜の深夜枠だったのですが、とかく過激だったりHだったりする深夜アニメのイメージとは一線を画したものとして、むしろこれを観た後で心地よく癒されながら眠り、月曜の朝に備えるといったヒーリング作品として、特に若い女性層に好評だったのでした。

あえてドラマティックになるとしたら、ウンディーネの先輩と後輩といった関係性によるエピソードの数々でしょうか。

特にアテナとアリスはお互い不器用な性格なもので、どこかしらギクシャクした関係性が続いています。(これが今回の映画『ARIA The CREPUSCOLO』のメイン・モチーフにもなっていきます)

もっともそれらにしても決して険悪になったりすることなく最終的には気持ちの良い終わりを迎えてくれるのです。

多世代が交錯していく
新しい『ARIA』


シリーズ映像化の流れも下記に挙げておきます。

●「ARIA The ANIMATION」(2005年10月~12月放送)
見習いウンディーネとしてARIAカンパニーに就職した灯里とその仲間たちのエピソードが、淡々と好ましく綴られていきます。

●「ARIA The NATURAL」(2006年4月~9月放送)
TVシリーズ第1期の好評を経て作られた第2期。2クールの放送で、灯里たちの日常が綴られていくのは前作通りですが、同時にネオヴェネツィアの不思議な世界が猫たちを通して、より深く神秘的に描かれてもいきます。

●「ARIA The OVA~ARIETTA~」(2007年9月発売)
灯里がARIAカンパニーに入社する前の心情などを中心に構成された前日譚的OVA。なお、ここからシリーズの画面サイズは4:3から16:9へ変わります。

●「ARIA The ORIGINATION」(2008年1月~3月放送)
ウンディーネとして成長し、プリマを目前とする灯里たちと、アリシアがウンディーネを引退するまでを描いたグランドフィナーレ。

●『ARIA The AVVENIERE』(2015年9月26日よりイベント上映)
TVアニメ10周年を記念して製作。全3話の構成で、プリマになった灯里たちのその後と、アイたち若い世代がシングルになっての日常などを同時に描きながら、これにてひとまずシリーズが一段落していく感を漂わせた作りとなっています。

そして2021年3月5日より劇場公開されたシリーズ最新作『ARIA The CREPUSCOLO』は、更に時を経て、すっかり大人として映える灯里たちの姿が見られます。

また、ここではアテナとアリスの関係性が改めて浮き彫りとなっていき、何と灯里たちは脇に回ってのエピソードが綴られていきます。



つまりここでの主人公はアテナとアリス。

実は、アテナの声は「ARIA The ORIGINATION」まで川上とも子が務めていましたが、その後彼女は惜しくも早逝してしまい、『ARIA The AVVENIERE』では彼女に敬意を表しながらライブラリーを用いた特別出演という形が採られていました。



しかし今回は二代目として佐藤利奈が抜擢され、そのお披露目……、というよりも「ARIAワールドへいらっしゃい」とでもいったスタッフの温かさまで感じられる作りとなっています。

同時にアリシアたちの世代、灯里たちの世代、そしてアイたちの世代と、三代にわたる交流が一層際立つ形となっていることで、今後の新展開を期待させるものにも成り得ています。



今回も『ARIA The AVVENIERE』と同じように上映時間こそおよそ1時間ですが、中身はあくまでも1話としての中編仕様となっているのも新鮮ではありました。

個人的には2時間程の尺による長編映画を見てみたいと思います。

おそらくこれまで『ARIA』に接し、愛し続けてきたファンの方々なら、ほぼ同じ想いを抱いてらっしゃるのではないでしょうか。

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(C)2020 天野こずえ/マッグガーデン・ARIA カンパニー

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