あなたに役立つ映画・ドラマのプラスαがあるメディア「シネマズプラス」

©cinemas PLUS Committee. All Right Reserved.

『ノマドランド』レビュー:現代アメリカの放浪の民=ノマドの終わりのない旅と人生



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

第93回(2021年度)アカデミー賞・作品賞、監督賞(クロエ・ジャオ)、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)、脚色賞(クロエ・ジャオ)、撮影賞(ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ)、編集賞(クロエ・ジャオ)の6部門でノミネート!

既にその前哨戦的存在のゴールデン・グローブ賞で作品賞〈ドラマ部門〉監督賞〈映画部門〉を受賞しているこの秀作ロード・ムービー、今回の大本命であることは間違いないでしょう。



ノマドとは「遊牧民」を意味しますが、本作はさまざまな事情で住む家を失くし(もしくは離れ)、キャンピングカーでの車上生活を送りながら仕事を捜し求めながら移動していく“現代のノマド”を題材にしています。

『ファーゴ』(96)『スリー・ビルボード』(17)で2回アカデミー賞主演女優賞を受賞しているフランシス・マクドーマンドですが、今回は主演に加えて製作にも参与し、自ら実際のノマドの人々と交流しながら、ドキュメンタリーともドラマともつかないユニークな手法を採りつつ、もう若くはない人々(現実的に今のノマドは高齢者が多い)の旅を通して、人生そのものの旅を静謐に描出していきます。



“ホームレス”ではなく“ハウスレス”だと自身を語るヒロインの飾りのない生きざまは、広大なアメリカの大地を美麗に映し出す映像センスの中でいちだんと魅力的に映えわたると共に、こうした生活を余儀なくされる人々の自由と孤独なども巧みに醸し出されています。

社会批判的なメッセージ色はあえて避けているようにも思えますが、だからこそさりげないところからアメリカの現実みたいなものも改めて痛感させられていくことでしょう。

(やがては日本も、こういった人々が普通に見受けされるような世の中が到来するのかも……)



それにしても、今回同じくアカデミー賞に6部門ノミネートされている『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督は韓国系アメリカ人、本作のクロエ・ジャオ監督は中国人と、アジア系映画人のアメリカ映画におけるパワーがどんどん強まってきている感もあります。

そしてどちらも「人生の旅」がモチーフになっているのが興味深いところ。

ただし、こちらはドラマチックな要素よりも淡々とした日々の流れこそをじっくりと抽出しながら、終わりのない旅=人生を示唆しているのが妙味であるともいえるでしょう。

(文:増當竜也)

全ての画像を見る
NEXT|次ページ > 『ノマドランド』作品情報

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録