『椿の庭』で好演!鈴木京香のオススメ出演作品5選+α
平成の原節子としての
『119』と「娘の結婚」
鈴木京香が「君の名は」で一躍有名になった1991年に『無能の人』で映画監督としてデビューし、高い評価を得たのが今もマルチな才能を発揮し続け、監督最新作(山田孝之&齋藤工と共同)『ゾッキ』も公開中の竹中直人です。※画像は、筆者所有のポスター
一度も火事が起きたことのない街の消防署を舞台にしたこの作品、鈴木京香は突然町に現れた謎の美女を演じています。
竹中監督は小津安二郎監督作品の原節子のイメージをこのヒロインにだぶらせつつ、コミカルベースな集団劇の中に、小津映画へのオマージュを厳かに展開。
それは「鈴木京香こそは平成の原節子である」と言わんばかりの美しい佇まいで、この作品で彼女は第7回日刊スポーツ映画大賞新人賞を受賞しています。
(残念ながらこの作品、権利の関係でDVD以降のソフト化が未だに成されておらず配信もされていない幻の作品と化しています。ただし劇場での上映は問題なく、数年前に目黒シネマで上映が行われたときは鈴木京香も含むスタッフ&キャストが集まり、場内にて賑やかな同窓会を繰り拡げていました)
それから時を経ての2002年、小津安二郎監督の名作『晩春』が市川崑監督のメガホンで「娘の結婚」というタイトルでTV映画化されましたが、このときオリジナルで原節子が演じていたヒロインを務めたのが鈴木京香でした。
この「娘の結婚」、時代設定を現代に直している以外、何と『晩春』のシナリオをほとんどそのまま使用するという、ある意味実験的な作品でもあり、その意味でも鈴木京香の任は重かったと思われますが、彼女は真摯に“平成の原節子”を演じ切ることで期待に応えてくれました。
『ラジオの時間』『清須会議』
三谷幸喜とのさまざまなコラボ
鈴木京香が初めて三谷幸喜作品に出演したのは、彼が脚本を記したTVドラマ「王様のレストラン」(95)です。
以後、彼女は三谷作品の常連キャストとして数々のドラマ&映画に出演しています。
三谷監督の映画監督デビュー作『ラヂオの時間』(97)では自分の書いた入選シナリオがどんどん現場で変更されていくことに戸惑う気弱な主婦を可愛らしく好演。
三谷脚本、市川準監督の映画『竜馬の妻とその夫と愛人』(02)では竜馬の妻おりょうに扮し、第15回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎主演女優賞を受賞しています。
三谷幸喜のTVドラマ初監督作品「short cut」(11)では、何と全編通して1シーン1カット撮影で、口喧嘩しながら山道を歩き続ける夫婦役で中井貴一と共演(このふたり、三谷作品ではありませんが2020年の「共演NG」なる仰天タイトルのラブコメTVドラマでも“共演NG”同士の俳優役として共演してましたね)。
三谷脚本の「新選組!」(04)のお梅、「真田丸」(16)の北政所も好演でしたが、時代劇映画『清須会議』(13)での羽柴秀吉への復讐に燃えるお市の方も、意表を突いたお歯黒メイク姿とともにインパクトがありました。
戦争と向き合う
『男たちの大和』『お母さんの木』
終戦60周年記念として製作された佐藤純彌監督の戦争映画超大作『男たちの大和/YAMATO』(05)の中で、鈴木京香は現代パートに登場。
戦艦大和の乗組員だった義父の遺骨を海に埋葬すべく大和の沈んだ海域まで小船で赴く女性・内田真貴子の役で、当時の彼女は実在のモデルよりも年齢がかなり若かったのですが、時代を越えたミューズ的存在として真貴子を捉えたいという佐藤監督のニーズに見事に応えた好演でした。
そして10年後の磯村一路監督作品『おかあさんの木』(15)で、鈴木京香は戦時中7人の息子(養子に出した一人も含む)を戦地に送り出すもことごとく戦死もしくは行方不明となり、それでも戦後ずっと彼らを待ち続ける悲劇の母親を熱演。
子どもたちが出征するごとに桐の木を庭に植え、その木を我が子代わりに語りかけていく母の想いは、反戦の想いと直結しながら切々と現代の観客に訴えかけてくれるのでした。
なお彼女はこの前年の2014年度・第69回毎日映画コンクールで田中絹代賞を受賞しています。
以上、ほんの一部のキャリアではありますが、これらを機に鈴木京香の最新映画『椿の庭』や他の作品にも興味を持っていただけたら幸いです。
(文:増當竜也)
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