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「拡大版 庵野ドキュメンタリー」は、どんな「物語」として生まれ変わったのか:「ドキュメンタリーはフィクション」


再構成によって走り去る庵野監督とシンジのシンクロ率が上昇した



2つの番組の違いが最も端的に現れたのはラストシーンでしょう。

「さようなら」のラストシーンは、「プロフェッショナル」で最初のシーンとして使用された、宇部新川駅で庵野監督がiPhoneを持って走るシーンでした。「プロフェッショナル」放送時に話題となった「プロフェッショナルって言葉が好きじゃない」は今回、使用されていません。あれは「プロフェッショナル」の番組コンセプトとして「プロとは何か」を本人の口から語ってもらう必要があったのでしょう。

それが今回は、スタッフ向けの試写が終わり、庵野監督が「次の仕事があるので」と言うシーンの後に、宇部新川駅で走る庵野監督のシーンを持ってきていました。このシーンのつなぎ方によって、「次の仕事に向かって走り出す庵野秀明」みたいな印象の終わり方になっています。

走り去って終わるのは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のエンディングを意識しているのだと思いますが、この構成の変化によって、庵野監督と『エヴァンゲリオン』の主人公、碇シンジとのシンクロ率が高まっています。『エヴァンゲリオン』という作品は、庵野監督のパーソナルな部分が色濃く刻まれた作品なので、追加素材で本人の出自とパーソナリティを掘り下げた上で、作り上げた作品とシンクロさせて、『エヴァンゲリオン』はまさしく庵野監督でなければ生み出せないものだったんだという印象をより強固なものにしています。

あと、今回はナレーションを使用していません。「プロフェッショナル」では冒頭、「我々はこの男に手を出すべきではなかった」という衝撃的なナレーションから始まります。これは非常に面白いナレーションですが、強烈すぎて、視聴者はその印象でずっと番組を見てしまいます。それで結末が「プロフェッショナルって言葉、嫌い」ですから、確かに番組制作陣はひどい目に遭ったなという感じの物語ですよね。ある意味、番組制作者の物語になっていた側面がありましたが、今回はそういう印象は薄れて、番組制作者の視点で再構成した庵野秀明の物語になっています。

「プロフェッショナル」と「さようなら」、同じ素材から生まれた2つのドキュメンタリーを見比べると、庵野監督の言う「ドキュメンタリーもフィクション」という意味がよくわかります。虚構と現実をテーマに描き続けてきた庵野監督のドキュメンタリーとしてふさわしい作りになったと言えるのではないでしょうか。

(文:杉本穂高)

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