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『タイタニック』「7つ」のポイント解説〜当時の格差社会から読み解く〜


3:犠牲者の数にも格差があった



スミス船長を演じた俳優のバーナード・ヒルは、「タイタニック号は、組織化された社会の象徴でした」、「皆が自分の居場所を知っていました。社会階級の上下があり、さらに言えば、デッキにも上下があった。船が沈んだ時、乗客たちはそこにも搾取の構造があったことに気づいたのです」と語っています。この言葉通り、タイタニック号の格差は、「客室の等級によって犠牲者の数に差が出る」という残酷な形でも、示されてしまっています

実際に(そもそも数が足りない)小型ボートへの避難誘導は1等船客から始まり、その子どもは母親と残った1人以外は全員が乗り、女性のほとんどはもちろん、男性も乗り込むことができたそうです。その避難が終わった後の二等船客も、女性の多くが乗ることができ、子どもは全員が助かったのだとか。

しかし、3等船客は、誘導されるどころか、なんと閉じ込められたのだそうです。乗組員はゲートに鍵をかけて見張りに立ち、中には鍵をかけて逃げてしまう者もいたといいます。中にはゲートを壊して脱出した者もいましたが、英語が理解できないためにただパニックに陥る者、迷路のように入り組んだ通路で迷ってしまう者もいて、やっとデッキに辿り着いたとしても、すでに小型ボートが降りた後だったりもしたそうです。

そして、1等船客の女性は97%、男性は33%、子どもは1人以外は全員が助かったのに対し、3等船客の女性は46%、男性は16%、少女が45%、少年は27%しか助からなかったのだそうです。これだけの差がありながらも、当時は社会そのものに歴然とした階級社会があったため、大きな問題にならなかった、当たり前のことのようにやり過ごされてしまっていたのです。

4:ローズの制約を象徴するコルセット



タイタニック号の3等室にいた移民たちは貧乏である反面、何も縛られずに制約を受けない、自由がありました。一方で、上流階級は制約だらけで、挨拶の仕方、お茶の飲み方、タバコの吸い方、座り方など、あらゆる面において90近い数のマナーが定められていたそう。それはタイタニック号での旅の最中でも同じ、いやそれ以上に窮屈なものだったはずです。

その上流階級の制約の象徴と言えるのが、ローズが母親に締められるコルセットでしょう。蜂のようにウエストを絞った女性の上半身は、当時は「黄金の龍」とも呼ばれ、美女の条件でした。このシーンは、元々はローズのほうが母親のコルセットを締めることになっていたのですが、ジェームズ・キャメロン監督と俳優たちの意見で、反対の方がより象徴的なシーンになるということで、その場で変更したのだとか。コルセットを締める=制約に縛りつけるという意味が、ここでは込められているのです。

莫大な借金を理由に盾に一方的に娘の自由を奪い、「不公平で当たり前。女はね、思い通りには生きられないの」と話す母の心情、その男尊女卑的な価値観は、当時では普通とも言えるものだったのかもしれません(これは、いざ船が沈没するとなると、女性と子どもが優先されることの皮肉にもなっています)。だからこそ、そんな価値観にとらわれない、自由奔放なジャックの行動が、ローズを変えていくのです。

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