バカリズムの世界観:“もしもの世界“で醒めて踊る!『地獄の花園』へと続く道
醒めて踊るバカリズム脚本の世界
コメディの極意に“醒めて踊る”というものがあります。テンションの高いパフォーマンスを見せる一方で、その姿をどこか俯瞰して見る視点を併せ持つ。その事で、良質なコメディが出来上がっていきます。バカリズム脚本の世界にはこの“醒めて踊る”の部分がしっかりと効いています。
「素敵な選TAXI」にしても「かもしれない女優たち」にしても、「架空OL日記」にしてもこの程よく醒めた視線が作品に持ち込まれています。
もともと芸人バカリズムのネタは実際にあるモノに対して独特視点とテンションで“ツッコミ”を入れていくというモノでしたので、ある意味必然的な流れだったのかもしれませんが、それでも、この瞬間的なお笑いの視点を、ある程度長い時間を要するドラマ・映画・物語の中にそのままスライドして持ち込んで見せたのはバカリズムの才能と言っていいでしょう。
1961年の市川崑監督のカルト的なサスペンス映画『黒い十人の女』をドラマ化した2016年の「黒い十人の女」や、後に再編集されて映画化もされたWOWOWドラマ「殺意の道程」などなど、重めの復讐譚でありながら、復讐という行為に対して劇中の登場人物が冷静にツッコミを入れ、矛盾や不自然さを劇中で指摘していきます。
「黒い十人の女」をバカリズムが手掛けると聞いた時には随分と驚いたものですが、オリジナルの要素を現代的に咀嚼しなおして秀逸なブラックコメディに仕上げてきました。
井浦新を主役に想定して作った「殺意の道程」は復讐計画を進める二人の中年男性が、普通の人間が現実的に復讐を果たすにはどれだけの条件をクリアしなくてはいけないかが事細かく登場。復讐計画の名前を決めるところから始まり、ホームセンターに“凶器の買い出し”に出るなどなど本来の復讐譚では省かれる部分を念入りに描き、なんとも言えないおかしさを醸し出しています。
さらに「復讐の道程」ではその先にあるどんでん返しまで描きバカリズムのストーリーテラーぶりを大いに堪能できる一品になっています。
WOWOWのオリジナルドラマということで視聴条件が限られていますが、オンデマンドでも見れるので機会があればぜひ見て欲しい一本です。
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©2021『地獄の花園』製作委員会