『ディヴァイン・フューリー/使者』パク・ソジュンの魅力満載な「3つ」の見どころ!



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第20回:『ディヴァイン・フューリー/使者』

今回ご紹介するのは、8月14日から劇場公開中の新作韓国映画『ディヴァイン・フューリー/使者』です。

Netflixオリジナルシリーズ「梨泰院クラス」や、日本でもドラマとしてリメイクされた『ミッドナイト・ランナー』などの主演作品で、日本でも大人気となっている韓国の若手俳優パク・ソジュン。

秘められた正義の力で悪魔に立ち向かう青年を彼が演じることで、公開前からファンの間でも話題となっていた作品なのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー


幼少期に事故で父親を亡くし、神への信仰を失ったまま成長した、総合格闘技の若き世界チャンピオン・ヨンフ(パク・ソジュン)。ある日、ヨンフは右手に見覚えのない傷ができていることに気がつく。彼は傷について調べるうち、何かに導かれるかのようにバチカンから派遣されたエクソシストのアン神父(アン・ソンギ)に出会い、自身に正義の力が隠されていることを知る。一方、街にはびこる悪の元凶ジシン(ウ・ドファン)が、彼らの前に立ちはだかろうとしていた…。


予告編




見どころ1:闇の司教VS右手に神の力を宿した男!



子供の頃に父親を亡くしたトラウマから神への信仰をなくし、自身の内に潜む邪悪な声に悩まされていた主人公ヨンフ。彼が運命の導くままにエクソシストのアン神父と出会い、ついに父親の仇である悪の元凶ジシンと対決することになる本作。

若き総合格闘技のチャンピオンであるヨンフを演じるパク・ソジュンのアクションも見どころですが、彼の宿敵となる闇の司教ジシンを演じるウ・ドファンの存在感も、本作成功の大きな要因と言えるでしょう。

特に、前回ご紹介した『鬼手』での役柄とは全く違う、長年にわたって社会に溶け込みながら着実に仲間を増やしている、ジシンの狡猾さと忍び寄る恐怖を表現する、彼の演技は必見!

こうしたウ・ドファンの新たな魅力が発見できる点も、ファンには堪らない魅力となっているのです。

実は本作のような悪魔祓いを扱ったバディものは、近年多くの作品が製作されているのですが、どうしてもエクソシストの神父という役柄が固定されるため、コンビを組む相棒の設定で、いかにバリエーションを持たせるか? この部分が非常に重要となってくるのも事実。

その点、本作の主人公ヨンフの総合格闘技のチャンピオンという設定は、神父以外の存在でありながら退魔の力を持ち、更に高い戦闘スキルをも兼ね備えたハイブリッドなキャラクターとなっていて見事!



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悪魔の力を取り込んで最終進化を遂げ、その肉体までも強靭に変化させた闇の司教ジシンに対して、右手に神の力を宿しているとはいえ、生身の人間であるヨンフがどう戦いを挑むのか? この展開に観客が納得できるのも、主人公が総合格闘技のチャンピオンという秀逸な設定があればこそなのです。

実際、父親の死によって信仰を失い格闘家の道へと走ったことも、実はヨンフに託された使命と来るべき戦いに備えて、神が与えた厳しい試練だったのではないか? そう思えてくる、この『ディヴァイン・フューリー/使者』。

一見ミスマッチに思えるヨンフの格闘家設定ですが、2017年のドラマ「サム、マイウェイ~恋の一発逆転!~」で、パク・ソジュンが総合格闘技の選手を演じていることを踏まえれば、本作の意外な設定も納得して頂けるのではないでしょうか。

ちなみに「サム、マイウェイ~恋の一発逆転!~」には、以前この連載でもご紹介した『シークレット・ジョブ』のアン・ジェホンとキム・ソンオも出演しているので、韓国映画ファンの方はぜひこちらもチェックして頂ければと思います。

見どころ2:父と息子の絆が泣ける!



幼少時に父親を亡くしたことで、神に祈っても何も変わらないと思い知らされ、怒りの感情に呑み込まれて信仰を捨ててしまった、主人公のヨンフ。

映画の冒頭に登場する、仕事に出かける父親に玉子焼きを作る幼いヨンフの姿だけで、この親子の関係性や家庭環境を観客に分からせる演出も上手いのですが、少年時代のヨンフを演じる子役の素晴らしい演技もあって、この後に訪れる悲劇が更に際立つのは見事!

ここで登場する幸福そうな父と息子の生活は、ぜひ劇場でご覧頂きたいのですが、父親が仕事に出かけた後、一人家に残されたヨンフの暗い表情が、彼の心の弱さや負の感情を観客に伝える点も上手いのです。

実は初見では、父親の葬儀の席で神父に十字架を投げつけたヨンフの表情や激しい言葉遣いは、父親を救えなかった神への失望や怒りによるものと思えたのですが、よく見返すと、この時点でヨンフの心に邪悪なものが入り込んでいたことに気付かされます。

成長して総合格闘技のチャンピオンとなってからも、自分の内から聞こえてくる邪悪な声や衝動に苦しめられていたヨンフですが、夢に現れた父親の導きによって悪霊から解放され、悪と闘うための力を右手に授かることになります。



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更に、一度ヨンフの体から抜けた悪霊が再び彼の体に憑依しようとするものの、右手に秘められた力によって退散したり、死後もヨンフを見守り続け、再び彼を光のある方向へと導いた父親の深い愛情が示されることで、ラストの宿命の対決に観客が感情移入できる点も、実に上手いのです。

右手に突然現れた傷跡の謎を探るうちに、自分に託された使命と父親の死の真相、そして父親の深い愛情を知ることになる主人公ヨンフ。全てを賭けて彼が挑むラストの直接対決が最高に燃える作品なので、全力でオススメします!

見どころ3:韓国エクソシスト映画の魅力とは?



前述したパク・ソジュンの総合格闘家という設定だけでなく、共演のアン・ソンギの役柄にも秘密が隠されている本作。

実は、1998年制作の『ソウル・ガーディアンズ 退魔録』でも、アン・ソンギは悪魔の復活を阻止しようとする神父を演じているので、この流れを踏まえて観ると、本作のアン神父の背景にも更に深みが増すことになるのです。

こうした韓国エクソシストものは近年多くの作品が製作されており、最近では2015年の『プリースト 悪魔を葬る者』が記憶に新しいのですが、この作品が『哭声/コクソン』とほぼ同時期に公開されている点は、当時まだ韓国で珍しかったエクソシストものの流行を予感させて実に興味深いものがあります。




この流れはテレビドラマにも受け継がれ、現在CSのKBS Worldで放送中の2018年の韓国ドラマ『客-ザ・ゲスト-』では、霊能者のタクシー運転手とエクソシストの神父がコンビを組んで、次々に人間に憑依を繰り返す悪魔パク・イルドを追う、という内容になっています。

実はこれらの韓国エクソシスト作品に欠かせない存在である、悪霊に憑依された人物を演じるキャスト陣の熱演や高い演技力も、このジャンルの大きな魅力となっているのです。

実際『ディヴァイン・フューリー/使者』でも、ヨンフとアン神父が初対面する悪魔祓いの儀式を始め、次々に登場する悪霊に憑依された人々の演技は必見の素晴らしさ!



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こうした脇役キャストの素晴らしい演技は映画に限ったことではなく、前述したテレビドラマ『客-ザ・ゲスト-』でも、悪霊に取り憑かれた犠牲者の演技が時に主役たちを凌ぐ! という、まさかの逆転現象を起こしたりしているのです。

こうした"影の主役たち"の名演に加えて、儀式の際に憑依した悪魔に名前を名乗らせて一体ずつ除霊したり、悪魔に憑依された人間の部屋に入ると息が白く見えるなど、細部までこだわって作り込まれている点は、現代社会の悪魔祓いという異質な設定に説得力を与えてくれるもの。

ちなみに、韓国で『ディヴァイン・フューリー/使者』が公開された2019年には、もう一本のエクソシスト映画『メタモルフォーゼ/変身』が公開されています。

こちらは、ある家族に憑依した悪魔と、ペ・ソンウ演じる退魔神父の対決を描く内容ですが、コロナウイルス禍の現在の状況で観ると、また違った見方の出来る作品なので、今後の日本公開やソフト化が待たれるところです。

『ディヴァイン・フューリー/使者』でこのジャンルに興味を持たれた方は、ぜひ他の作品にも触れて頂ければと思います。

最後に


注:以下は若干のネタバレを含みます。鑑賞後にお読み頂くか、本編を未見の方はご注意の上でお読み下さい。

右手に神の力を宿した青年が、父親の仇である闇の司教と対決するアクションに加えて、父親と息子の絆や深い愛情が観客の心を打つ内容に仕上がっている、この『ディヴァイン・フューリー/使者』。



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例えば、幼いヨンフを残してこの世を去らねばならなかった父親が、実は死後も彼をずっと見守っていて、怒りや負の感情に囚われて悪魔の侵入を許してしまったヨンフを救い、更に悪と闘うための力を授けるという展開には、単なるアクション映画に終わらない深い人間ドラマが込められているのです。

ただ、父親を亡くした幼少時のヨンフが怒りをぶつけた神父が、その後の展開で全く登場してこないのは、ヨンフが過去のトラウマを克服し信仰を取り戻す上で少々物足りないのでは? そう思えたのも事実。

加えて、敵の本拠地に乗り込んだヨンフに襲い掛かるジシンの部下たちが、まるで吸血鬼と混同しているかのように描かれている点も、個人的に気になった点と言えます。

とはいえ、目の見えない霊能力者と西洋の神父が違和感なく混在していたり、カラスの大群や建設中のビルで悪魔祓いの儀式が行われているなど、現代社会に超常現象を溶け込ませるその演出は必見!

更に、幼少時のヨンフの変化を見事に演じる子役の存在や、悪霊に取り憑かれた男性や子供など、脇を固めるキャスト陣の高い演技力が、荒唐無稽なストーリーに説得力を与えてくれている、この『ディヴァイン・フューリー/使者』。

前回ご紹介した『鬼手』と同様、その後の展開が非常に気になる作品なので、一日も早い続編の発表と公開を待ちたいと思います。

(文:滝口アキラ)

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