2021年06月05日

『カムバック・トゥ・ハリウッド‼』『映画大好きポンポさん』からあふれ出る映画と映画制作への愛!

『カムバック・トゥ・ハリウッド‼』『映画大好きポンポさん』からあふれ出る映画と映画制作への愛!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

現在のコロナ禍における映画撮影がいかに大変であるかを、最近いろんな映画人たちから聞く機会がありました。

本番以外はマスク必須のリハーサルやら、エキストラや現場に入ってくる人たちへの配慮など、とにかく誰ひとりとして感染させないように苦慮するスタッフ&キャストの努力は並大抵のものではありません。

ただし、そもそも映画撮影も含めた映画制作とは実に大変なものではあり、しかしそれでもみんな映画を作りたがるのはなぜなのか?

そんな疑問にエンタメの形を通して楽しく伝えてくれる映画が偶然にも2本、6月4日から公開されています!

1974年の映画制作と保険金殺人!?
『カムバック・トゥ・ハリウッド‼』



まずは『カムバック・トゥ・ハリウッド‼』。

舞台は1974年のハリウッド、多額の借金に苦慮するB級映画プロデューサーのマックス(ロバート・デ・ニーロ)は、往年の映画スター、デューク(トミー・リー・ジョーンズ)を映画撮影中に事故死とみせかけて殺害し、その保険金でギャングのレジー(モーガン・フリーマン)に借金返済しようと企みます。

ところがこのデューク、なかなか悪運が強いのか、なかなかしぶとくて撮影は順調に進んでしまう!?



この映画、ハリウッドが誇る3大レジェンド・スターの共演で、往年のハリウッドの映画制作の実情などを抱腹絶倒のドタバタコメディ・スタイルで面白可笑しく見せながら、限りない映画愛を観客にそこはかとなく提示していく絶品です。

劇中にはさまざまな映画ウンチクも登場しますので、映画クイズ的感覚を楽しむことも十分可能でしょう。

ところで1974年のハリウッドといえば、アメリカン・ニューシネマの余波が色濃く残る中、いわゆる正統派西部劇はどんどん廃れていった時代です。

(トミー・リー・ジョーンズ扮するデュークですが、その役名は西部劇の王者ジョン・ウェインのあだ名でもありました。それもあって、本作の撮影風景はかなり王道を意識した大らかなものになっています)

またきらびやかな映画スターというよりも、演技力のあるアクター&アクトレスたちがどんどん台頭していった時代でもありました。

(それこそロバート・デニーロは、その筆頭ともいえるでしょう。なお、彼は1974年の『ゴッドファーザーPARTⅡ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞しました)

ブラックムービー・ブームによって、その後の黒人俳優たちに希望の光を与えたのも1970年代初頭のことでした。

(モーガン・フリーマンは1971年に映画デビューし、80年代に入ってから徐々に映画スターとして頭角を現していきます)

そして本作の監督ジョージ・ギャロは1973年のロバート・デ・ニーロ&ハーヴェイ・カイテル主演映画『ミーン・ストリート』を見て以降、大学で映画を専攻するようになったとのこと。



そして彼は1974年に1本の自主映画“The Comeball Trail”を見て、そのアイデアに感銘を受けつつ、やがてデ・ニーロ&チャールズ・グローディン主演映画『ミッドナイト・ラン』(88)の脚本を書いて注目されるようになりますが、その上映会でかつての自主映画の監督未亡人と偶然知り合ったことから映画化権を獲得して商業映画化に乗り出します。

それが本作『カムバック・トゥ・ハリウッド‼』(原題は“The Comeball Trail”)なのでした!

もうこういったエピソード自体が映画的奇跡のようであり、そういった熱い想いがここでは陽性のコメディとして見事に開花しつつ、観客を更なる映画ファンへと意識を啓蒙してくれます。

即ち映画ファンやマニアは無論のこと、さほど映画に詳しくない方でも、映画業界の裏表や制作現場のドタバタなどを通して“映画”そのものへの興味を募らせてくれるのでした!

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

(C)2020 The Comeback Trail, LLC All rights Reserved / (C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

RANKING

SPONSORD

PICK UP!