『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』レビュー:富野由悠季監督ならではの“映画”を濃縮させた世界観
説明台詞の域を優に超えた
リズム&ケレンの富野作品
実はこの『Gのレコンギスタ』、TVシリーズ放映時はストーリーが入り組んでいて難解であるといった声が多かったのですが、劇場版はそれを払拭すべくかなりわかりやすい構成がなされ、また個々のキャラクターの心情を深く掘り下げる新規カットも多くみられることで、単なるTVの総集編とは一味も二味も異なる“映画”そのものの面白さが新たに生まれています。
とはいえ、TV未見のまま初めて劇場版に接した方は、それでも設定の複雑さや作品世界独自の専門用語の羅列、敵味方が大いに入り乱れまくるキャラクターの多さなどに眩暈を覚えるかもしれません。
(ちなみに、本作のチラシやパンフレットなどにはかなりわかりやすい作品世界の相関図が載っていますので、それらを参考にされるとかなり難解度は緩和されるでしょう)
何よりも、富野監督作品ならではの独特の言い回しによる膨大なる台詞の応酬!
その大半は言ってしまえば説明台詞なわけですが、富野監督作品に関しては説明の意味を成さなくなるほどのけたたましい速さと量をもって、特にこのシリーズに関してはまるで見る側の情報処理能力テストでも受けているのか? と恐れおののくほどのものなのでした。
昨年『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(20)が大ヒットした際、日頃アニメを見ない実写畑の映画人たちが作品を見て、その説明台詞の多さに愕然としたという批判の声をあちこちから聞かされたものですが、確かに昨今の日本のアニメ作品は説明台詞が多いのが、ひとつの大きな特徴になっているとはいえるでしょう。
(これには声優人気も関係していて、要するに歌舞伎役者の大見得を彼ら彼女らの「声」で表現している感も、個人的には受けています)
しかしながら富野監督作品の台詞は、説明することよりも、まずは作品そのもののリズム感を醸し出すために機能していて、さらにはそのけたたましさから独自のケレン味なども生じていくことで、エキセントリックながらもダイナミックな世界観が確立されているような気もしてなりません。
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