『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』レビュー:富野由悠季監督ならではの“映画”を濃縮させた世界観
「考えるな、感じろ」を実践する
富野監督作品の世界観
私自身、本作に限らず富野監督作品は、台詞も含めて頭で理解しようと務めるのではなく、声の響きそのものを画と共に感じるように常に心がけています。
そうすると、はっきり申して1回見ただけでは当然ながらストーリーそのものを把握しきれるはずがありません!?
しかし、そのケレンのリズムの虜になり、見終わった後はずっと脳内幸福モードに包まれてしまい、またしばらくすると再び見たくなり、今度はストーリーをちゃんと把握しようと試みつつ(ただし1回見ただけで既に漠然とわかった気にもなってはいます)、またも「感じる」ことの幸福感で満たされ、もう1回、もう1回と繰り返していくという……!
名作クンフー映画『燃えよドラゴン』(73)のブルース・リーの名台詞「考えるな、感じるんだ」とは、まさに富野監督作品のために存在するのではないでしょうか。
さらに『Gのレコンギスタ』は吉田健一による陽性のキャラクター・デザインが、よくよく考えるとかなり過酷なストーリー展開であるにも関わらず、どこかしら爽やかな印象をもたらしてくれています。
戦闘シーンのスリリングな躍動感なども、当然ながらガンダムシリーズの韻を踏んだ優れもので、それでいて常に新しいガンダムを構築しようと模索し続ける富野監督の、決してシリーズ人気に甘えようとしない若々しい気迫みたいなものを感じてしまいます。
(最近も「鬼滅つぶす、エヴァつぶす。そのくらい思わないと!」といった、さすがの宣言をされてましたね)
ここまでの『Gのレコンギスタ』劇場版3作品を続けて見ていきますと、TVの総集編どころか、シリーズそのものをギュッと絞りつくしたかのような濃縮感をもって、銀幕に接するこちらをあれよあれよと翻弄&圧倒させてくれるという、まさに“映画的”な逸品に仕上がっていることに気づかされます。
そもそも富野監督作品の真価は映画館の大画面で見てこそ最大限に発揮できるのではないかと、今回の『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』を目の当たりにしながら改めて痛感させられました。
DREAMS COME TRUEのテーマソングに乗せて各キャラクターが楽し気に踊るエンドタイトルにも見惚れつつ(振付は富野監督の次女でダンサーの富野幸緒。TV版アイキャッチの振付も彼女の担当でした)、この後続く第4弾と第5弾を「感じる」ことを楽しみに待ちたいと思う次第です。
(文:増當竜也)
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