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『アウシュヴィッツ・レポート』レビュー:ホロコーストを過去のものとして揶揄する意識を芽生えさせないための映画の効能



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

本作品は「過去を忘れる者は必ず同じ過ちを繰り返す」なるジョージ・サンタヤナの文言から始まります。

現在公開中の『復讐者たち』もそうですが、今から75年以上も前にナチスドイツがユダヤ人に対して行った大量虐殺「ホロコースト」をめぐる映画は、21世紀に入って急増し続けている感もあります。

それだけこの蛮行を過去のものにしてはならないという危機感が西洋諸国では募り続けているのでしょう。

(それに対して、同じ第二次世界大戦の敗戦国である日本は過去を忘れるどころか、まともに教えることもないまま今に至っています。これでは他国の痛みなど知る由もないまま、安易にホロコーストを揶揄して世界中から非難されてしまうのも……)



さて、本作はアウシュヴィッツに強制収容されるも1944年4月10日に脱走を成し得たふたりのスロバキア系ユダヤ人が記したアウシュヴィッツ収容所の内情を基に構築された作品で、このレポートによって当時の連合軍はホロコーストの前代未聞たる驚愕的実態を知ることにもなりました。

映画はアルフレート(ノエル・ツツォル)とヴァルター(ペテル・オンドレイチカ)のふたりが収容所内で体験した地獄の日々と、脱走に成功したふたりが赤十字職員ウォレン(ジョン・ハナ)にそのおぞましき実態を告白していく構成がなされていますが、やはり刮目しておくべきは収容所内の一連のシーンでしょう。

彼らが脱走したことにより、所内に残されたユダヤ人たちが極寒のもとでナチスによる執拗な尋問を受けていくあたりも胸が締めつけられます。



最終的にふたりが記したレポートによって多くのユダヤ人が救われることになり、やがて戦争も終結しますが、しかしその後の世界はどうなっていったか……。

一方で、スロバキアは現在極右政党が議会の多数を占めるようになるなど、世界中が再びファシズムを容認する傾向が強まってきています(日本も決して例外とは言えないでしょう)。



「過去を忘れる者は必ず同じ過ちを繰り返す」

まずはこの言葉を忘れず、いつまでも戒めにし続けるためにも、映画は機能し続けてもらいたいと、切に願う次第です。

(かつてヒトラーは、プロパガンダのために映画やオリンピックを有効利用し続けていたという事実にも……)

(文:増當竜也)

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