『すべてが変わった日』レビュー:二大スター共演によるスリラー&ロードムービー=西部劇の秀逸な現代的復権
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『すべてが変わった日』レビュー:二大スター共演によるスリラー&ロードムービー=西部劇の秀逸な現代的復権
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
ダイアン・レイン&ケヴィン・コスナーといえば、『マン・オブ・スティール』(13)などのDCエクステンデッド・ユニバース・シリーズでスーパーマンの地球における両親を好演したのが記憶に新しいところですが、双方とも1980年代以降の映画界を席捲した大スターであり、両者のデビュー当時からリアルタイムで映画を見続けてきた側からすると、このふたりが一緒に並んでいる画を見ただけで感無量なものがあります。
ダイアン・レイン『リトル・ロマンス』(79)『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)『運命の女』(02)……、ケヴィン・コスナー『アンタッチャブル』(87)『フィールド・オブ・ドリームス』(89)『ボディガード』(92)……。
と、タイトルを列記していくだけで心ときめいてしまう、そんなふたりが老夫婦を演じる時代になったことにも時の流れを痛感させられますが、いざ本作を見始めると、これが実に西部劇の韻を踏んだアメリカ映画らしいスリラー&ロードムービー型復讐劇として見事に成立していることにまず快哉を叫ばずにはいられません。
亡き息子の妻が孫を連れて再婚したものの、その相手がDV男であったことを知った老夫婦がふたりを奪還しようと試みる筋立てそのものは「行き過ぎた正義ではないか?」といった意見も聞こえてきそうではありますが、これはあくまでも西部劇の王道パターンであり、あえて今の時代(といっても1960年代という、それは西部劇が一気に廃れ始めた時代でもあります)を舞台にそれを再現しているところに、現代アメリカが置かれた負の要素を映画的復権をもって訴えていこうという製作サイドの意向が巧みに見え隠れしています。
本作はケヴィン・コスナーも製作総指揮に加わっていますが、彼は『シルバラード』(87)『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)『ワイアット・アープ』(94)『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』(03)など西部劇崩壊後のハリウッドに現代的才覚を以って同ジャンルを復活させるべく腐心し続けてきた映画人でもあり、そんな彼の資質と意欲がここでも大いにうかがえるのです。
一方でDV夫の家族ですが、これがもう『悪魔のいけにえ』(74)を彷彿させるほどに気持ち悪くもおぞましい鬼畜系家族で、こうしたホラーめいた者たちの存在にリアリティを持たせながら(こういう家族、きっとフィクションではなく、普通に実在していたのだろうとも確信させつつ)、もはや話し合いが通じないどころか、過剰すぎる暴力の行使をもって繰り広げるしかない家族同士の諍いもまた、現代社会の縮図のように思えてなりません。
ある意味おぞましい争いではありますが、しかしそれを現代西部劇の叙情の衣に包み込み、同時に二大スターのいぶし銀の魅力を発散させながら、自分自身がこの主人公たちの立場だったらどうするか? といったことまで真摯に考えさせてくれる意味でも、実に意義深い秀作なのでした。
(文:増當竜也)
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