2021年05月11日

『しあわせのマスカット』レビュー:マスカット和菓子をめぐるヒロインと頑固オヤジの心の交流

『しあわせのマスカット』レビュー:マスカット和菓子をめぐるヒロインと頑固オヤジの心の交流



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

フルーツ王国・岡山県の国内生産No.1の高級ぶどう“マスカット・オブ・アレキサンドリア”で包んだ果物和菓子に魅せられた北海道の少女(福本莉子)が、現地の和菓子会社に就職するも、配属先はそのものずばりのぶどう農園で、しかも園主は頑固オヤジ(竹中直人)!

ヒロインと初老の野獣(?)といったデコボコ・コンビで繰り広げられる青春ヒューマン映画。

『思い、思われ、ふり、ふられ』(20)などで注目の新人・福本莉子の単独初主演映画ですが、新人女優ならではの初々しさが全編に可愛らしく溢れていて、それだけでもう及第点。



竹中直人の頑固オヤジぶりも堂に入ったもので、それゆえのヒロインとの対比もすこぶる良好。
最近は新作『ゾッキ』など映画監督としての活動にも俄然意欲的な竹中直人ですが、役者としては枯れオヤジの激怒風情がよく似合います。



なお本作は2018年に起きた西日本豪雨の大水害をモチーフにしており、そこをクライマックスに据えながらドラマが展開していきますが、その悲劇からの再生という面でも見る側にもたらす感情の流れがスムーズなものに成り得ているのも、美徳のひとつではあるでしょう。

和菓子という点でも、世界中に店舗を持つ和菓子の宗家・源吉兆庵が全面協力ということもあって、画に映る和菓子の美しさなどにも当然気配りは成されています。

また、だからこそぶどう農園の中を壮麗に彩るマスカット・オブ・アレキサンドリアの淡い黄緑(エメラルド)色も、一層さわやかに映画全体を包み込んでくれているのでした。

(文:増當竜也)

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(C)『しあわせのマスカット』製作委員会

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