2021年08月05日

『明日に向かって笑え!』レビュー:全世界の庶民必見!どん底人生の面々が仕掛けた痛快“オーシャンズ11”的大金奪還劇!

『明日に向かって笑え!』レビュー:全世界の庶民必見!どん底人生の面々が仕掛けた痛快“オーシャンズ11”的大金奪還劇!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

第82回アカデミー賞外国語映画賞受賞作『瞳の奥の秘密』(09)の脚本エドゥアルド・サチェリ&主演リカルド・ダリンのコンビによる2019年度アルゼンチン映画大ヒット作ですが、その事実が大いに納得できるほど、世界中の人々が共感できるであろう庶民の反逆を描いた痛快クライム・コメディの快作です。

2001年のアルゼンチン金融危機を背景に、銀行と弁護士に大金をだまし取られた小さな田舎町の人々が、どうにかしてそれを取り戻すべく奇想天外の計画を実行していくというストーリーそのものがカタルシスにあふれていますが、それを遂行するのが本当にしがない一般庶民であるところが大きなミソ(主人公だけは元サッカーの花形選手というキャリアの持ち主ですが、今は田舎のガソリンスタンド店主という地味っぷり)。



また彼らのひとりひとりが実にユニークな個性をさりげなく発揮していることによって、本作は見事なまでの「チーム」の映画足り得ており、それこそ『オーシャンズ11』(01)など華やかなスター映画大作に負けずとも劣らぬ庶民パワー炸裂!(と、本当は炸裂しているのかしていないのかも定かではない緩さもまた妙味!?)の集団犯罪映画の快作としても屹立しているのでした。

さらには映画ファンとしてオードリー・ヘプバーン主演の名作『おしゃれ泥棒』(66)が巧みに(というか堂々と?)引用されているのもお楽しみなので、余裕のある方は復習してから本作に臨むと、より楽しく鑑賞できることでしょう。



悪い奴ほど良く眠り、真面目にコツコツ生きてきた人々が泣きを見ることばかりの現代社会の図式は日本も例外ではなく、アイツだったりコイツだったり巨大企業だったりに搾取されたり中抜きされたりしまくっている現実に直面しては、忸怩たる想いを忍ばせつつ絶望生活に苦しむ日々を過ごす側からすると、こういったしがなくも飄々たるユニークな庶民たちのリベンジに必ずやシンパシーを感じ、応援してしまうこと必至!

ひいては明日を生きる活力を取り戻す術にも繋がるであろう、そんな人生讃歌なのでした。

(文:増當竜也)

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