2021年08月14日

『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』はアメコミ知識ゼロで楽しめる痛快作だった

『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』はアメコミ知識ゼロで楽しめる痛快作だった

ヒーロー映画を口実にやりたい放題の本作

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』から解雇され、失意の中にあったジェームズ・ガンはその一方で新作の企画を練っていて、その中に60年代にあった“ならず者が活躍する戦争映画”を現代に作り直すというものがありました。

しかし、現代において、そんな企画にお金をポンっと出してくれるメジャースタジオはなく、そこで、エクスキューズとしてジェームズ・ガンが用意したものが“主役はコミックヒーロー”というものでした。

かねてより戦争映画というジャンルの映画を作りたかったジェームズ・ガンは、口実としてDCコミックスのヒーローを主役にするというものをひねり出したのでした。

運よく巡り合わせた『スーサイド・スクワッド』の監督の話も宙に浮いていたこともあって、結果的に欠けていたピースがピタリとはまるようにジェームズ・ガンが『スーサイド・スクワッド』のメガホンを取ることになりました。

前作のハーレイ・クイン役で大ブレイクしたマーゴット・ロビーやイドルス・エルバといった名前で売れるキャストを招くことで、スタジオも納得させる一方で、ジェームズ・ガンはまさにやりたい放題、自由に『スーサイド・スクワッド』というおもちゃで遊びつくしています。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に出演していたマイケル・ルーカ―やシルベスター・スタローン(キングシャークというサメ人間のボイスキャストという無駄使い)、さらには同じくマーベル映画の『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督だったタイカ・ワイティティまで俳優として引っ張ってくるなどという冒険も難なくこなします。

そして最後には、巨大怪獣を登場させるというコミック原作でもそこまでやるかというほどのジャンル映画への傾倒ぶりを見せつけます。

苦戦するDCコミックス映画のカンフル剤に!?



DCコミックスの映画は、『ダークナイト』3部作のクリストファー・ノーラン監督と『300』『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督が初期の立ち上げに関わったこともあってか、コミックブック特有の軽快さや娯楽性がどうしても後ろに下がりがちでした。

DCEU=DCエクステンデッド・ユニバースという形でMCUに対抗しましたが、重苦しさだけが残るシリーズとなり、結果、シリーズとしての共通性を持たせることを半ば放棄するという失敗とは言っても過言ではない結果になってしまいました。

現在はそれぞれの独自路線をいくマルチバース方針に切り替わっていて、そんな中でホアキン・フェニックスの『ジョーカー』などが生まれたわけですが、それはまた別の話ですね…。

ジェームズ・ガンの『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』はそんなDCコミックス映画に欠けていた、“いい意味での軽薄さ”を取り込むことに成功させ、これまでのDCEUコミックス映画で感じることができなかった“痛快さ”を感じることができました。
 

ジョン・シナのアクションだけは絶対に見逃せない



マーゴット・ロビー、イドルス・エルバといったスター俳優に混じる形で実は『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』の中で一番美味しところを持っていったのが平和のためにはいかなる暴力も辞さないという極端な平和の使者“ピースメイカー”を演じたジョン・シナでしょう。

アメリカ最大のプロレス団体WWEのトップレスラーである彼は、ザ・ロックことドゥエイン・ジョンソンやデイヴ・バウティスタ(リングネームはバティスタ)に続くプロレスラー出身のトップアクションスターになりそうな気配がむんむんします。

 プロレスラーにとって映画進出は鬼門だと言える



もともとプロレスラーの映画進出は鬼門で、20世紀で最も成功をおさめたプロレスラーのハルク・ホーガンですら、映画では失敗が続きました。

そんな中、21世紀に入りザ・ロック(=ドゥエイン・ジョンソン)が『ハムナプトラ2』とそのスピンオフ『スコーピオン・キング』で立て続けに全米1位を記録したことで潮目が変わり、ザ・ロックの所属していたWWEは本格的に映画製作に乗り出し、自団体の人気レスラーを映画に起用するようになりました。

大半はいわゆるB級映画アクションですが、とにかくザ・ロックがWWEとの契約からリングネームのザ・ロックから本名のドゥエイン・ジョンソンに変わっても大ヒット作を連発し続けるので、これに続けとばかりに映画への進出を加速、そんな中でバティスタというリングネームで活躍してた現デイヴ・バウティスタが徐々にトップ映画俳優として頭角を現してきます。

偶然ですが、大きなブレイクポイントになったのがジェームズ・ガンの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。この中でデイヴ・バウティスタは愛すべき荒くれ者ドラックスを演じて、プロレスファン以外にも一気に認知度を高めました。

その後『007スペクター』『ブレードランナー2049』といった超大作出演、今年もザック・スナイダー監督のNetflix映画『ア―ミ・オブ・ザ・デッド』に主演したほか、SF大作『DUNE/砂の惑星』が公開瀧中です。

そして、ドゥエイン・ジョンソン、デイヴ・バウティスタに続きそうなのが今作のジョン・シナです。WWEが製作に関わったB級アクションに何本か出演していましたが、2018年にトランスフォーマーシリーズの『バンブルビー』に大きな役どころで出演して、ステップアップ。

今年は『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』と『ザ・スーサイド・クワッド”極”悪党、集結』と二つの超大作に大きな役どころで出演して、一気にアクションスターとしての地位を挙げてきました。

すでに”ピースメイカー”を主役にしたテレビシリーズ製作も決まっていて、こちらでは主演兼共同製作総指揮を務めています。

しばらくはWWEでのレスラーとしての活動も並行して行うようですが、いずれ俳優業一本に絞ってくるのではと思います。

44歳とまだまだ動けますし、これから『ワイルド・スピード』のファミリーに無事入れたようですので、このタイミングでジョン・シナの名前と顔を覚えておきましょう!

 

R15指定映画のためバイオレンス描写もあります



『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』はジェームズ・ガンのサブジャンル映画への愛情をオールスターキャストによるコミックヒーローを主人公にしたことで、広く一般的に受けやすい要素を持った稀有なバランスの映画に仕上がっています。

やっと映画館に大きなハリウッド映画が戻ってきたなかでもひときわ目立つ痛快娯楽映画に仕上がっているといっていいでしょう。

アメリカンコミックを原作にしていますが、その点についてはほとんど予習の必要がなく、過去の映画も追いかけなくても楽しめるのもお薦めポイントの一つです。

 ただし、『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』はR15指定のバイオレンス描写たっぷりなので、そこだけは注意してくださいね。

(文:村松健太郎)

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