『スザンヌ、16歳』レビュー:20歳の監督&脚本&主演 スザンヌ・ランドンによるヌーヴェル・ヴァーグの瑞々しい再来!
『スザンヌ、16歳』レビュー:20歳の監督&脚本&主演 スザンヌ・ランドンによるヌーヴェル・ヴァーグの瑞々しい再来!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
邦題に偽りなく、フランスの16歳の女の子・スザンヌ(スザンヌ・ランドン)が、同世代の男の子たちに魅力を感じないまま、ふと出会った年の離れた舞台俳優・ラファエル(アルノー・ヴァロワ)と恋に落ちていく思春期ラブ・ストーリー。
プロットだけを読むと決して目新しいものではありませんが、いざ見てびっくりの新鮮さ極まりない瑞々しい秀作であり、あたかも往年のヌーヴェル・ヴァーグが再来したかのような映画的躍動感を伴う、小品ながらも映画ファンなら見逃し厳禁の作品です。
何よりも本作は、スザンヌ・ランドンが20歳で監督・脚本・主演した作品。
俳優サンドリーヌ・キベルラン&ヴァンサン・ランドンの長女として生まれた彼女は15歳で本作の脚本を書き、19歳で映画制作に着手。そして20歳で完成させた本作は2020年度のカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションに選定認定され、その後も世界各国の映画祭で高い評価を得ての日本上陸となったのでした。
本作は凝りに凝った映像技法的なものではなく、むしろさりげない日常シーンの中に散りばめられた若さゆえの才覚が、さわやかな印象をもたらしてくれています。
台詞に頼ることなく、登場人物の仕草や沈黙そのもので多くを雄弁に語り得るシンプルながらも奥深い演出は、今や台詞まみれといった日本の映画&ドラマの作る側も見る側も大いに見習うべきでしょう。
ヒロインそのものも不良であったり何かに秀でていたりといった突出した要素のあるキャラクターではなく、家族とも友人たちともそこそこ仲の良い、一見どこにでもいそうな女の子として設定されていることも、よりシンパシーを感じさせる要因になっている感もあります。
音楽や演劇、ダンスなど現代カルチャーに対する映像的な興味の示し方はもちろんのこと、白シャツとスニーカーが少女の清楚感より生意気感や躍動感などを巧みに醸し出しているあたりも、年輩のベテラン監督にはない感性の賜物のように思えてなりません。
スザンヌ・ランドンの女優そのものとしての雰囲気は『なまいきシャルロット』などシャルロット・ゲンズブールのデビュー当時を彷彿させるものもあり、これまたフランス映画ならではの麗しき個性の伝承が成されているかのようで嬉しくなった次第でした。
(文:増當竜也)
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