『整形水』レビュー:外見至上主義を痛切に皮肉った衝撃のサイコ・ホラー!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

ノリにのる韓国映画が、今度はアニメーションで背筋も凍る異色作を発表!

容姿にコンプレックスを抱き、周囲からも馬鹿にされている女性が、顔や体を浸すだけで美しくなる“整形水”を使って絶世の美女となるも……といった設定そのものは割かしありがちながらも、よくぞこういった題材をアニメーションで映画化できるものだなと感心。

韓国のアニメーション映画といえば、ヨン・サンホ監督による新興宗教を題材にした『我は神なり』(13)や、ゾンビ・パンデミック映画『 新感染ファイナル・エクスプレス』の前日譚『ソウル・ステーション/パンデミック』(16)などを即思い浮かべますが、日本ではおよそ企画が通らなそうなものも、意欲的に映画化されている感もあります。



もっとも整形大国とも外見至上主義とも伝えられがちな韓国では、こうした美に対する過剰な意識は常に問題視されているのかもしれないと鑑みるに、本作の企画も現代韓国社会に十分訴え得るものとして受け入れられやすかったのかもしれません。



そういえば整形を題材にした日本の鈴木由美子のラブコメ漫画「カンナさん大成功です!」も2006年に韓国で映画化されていますが(日本では2009年に映画化)、本作はそのホラーチックなダーク・ファンタジーともいえそうです。

ただし、この手のお話をサスペンス・スリラーとして描いていくと、割かしオチも見えやすいのではないか?という懸念も正直抱きつつ、いざ映画を見始めたところ……これがなかなかに「えー!?」「まさか!」「そんなのあり?」といった驚きの展開!?



少なくとも原作漫画(韓国のLINEオムニバスコミック「奇々怪々」の一編)を未読の方で、このラストを予測できる方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思えるほどに怒涛のエグさなのです!



ヒロインも性格にかなりの難ありで(高額な整形水の購入に振り回されるご両親も大変お気の毒!)、もはや「人間、中身が肝心よ」などといった言葉も偽善にしか響かなそうな歪みっぷりではありますが、しかしながら、そこも最終的には人間の業というか悲哀を痛感させられるのでした。

(そもそもこの整形水、ちょっとだけなら自分も使ってみたい……と、誰しも思ってしまう瞬間はあるかもしれませんしね)

(文:増當竜也)

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