<木村拓哉>2つの魅力:「ザ・キムタク」と「その外側」


そして「グランメゾン東京」へ


(C)TBS

2010年頃から(社会人になった頃から)、筆者は一時期テレビを全然見なくなった。テレビに嫌気が云々ではなく、気付いたら映画ばかり観ていた感じだ。

今となってはバランスを取りながら「安堂ロイド」や「A LIFE〜愛しき人〜」、「BG〜身辺警護人〜」第1シーズンなどはリアルタイムで見るべきだったと後悔している。

その後悔の先で、2019年の「グランメゾン東京」は毎週リアルタイムで視聴した。

このドラマの木村拓哉は、俗に言う「ザ・キムタクのイメージ」だったと思う。

しかし、繰り返しになるがこれは褒め言葉だ。木村拓哉が世間の「ザ・キムタクのイメージ」の延長線で尾花夏樹という人物を演じたからこそ、最終回の三ツ星獲得シーンの涙に視聴者も感動したはずだ。

あの一人で静かに感無量で涙する感じは木村拓哉だからこそできる技である。

木村拓哉のドラマは本当に面白い。その後、特別ドラマ「教場」では今までとは異なるイメージも醸成し、「ザ・キムタクのイメージ」の外側を多層的に形成していると感じる次第である。

映画の話へ:「ザ・キムタクのイメージ」の外側

木村拓哉の演技のキャリアはドラマが中心であったとは思う。

しかし、『HERO』の映画化はさておき、『武士の一分』や『無限の住人』『検察側の罪人』では、「ザ・キムタクのイメージ」の外側を多層的に形成していたように思える。



特に『検察側の罪人』は、原田眞人監督の執念演出も相まって、観客の倫理観(正義感)を逸脱する主人公最上毅となっていた。あの人物に「わかるわかる、同情する」と素直にはなりにくい。だからといって100%悪かというと何とも…。今文章を記していても答えの出ない迷宮を形成した演技と言えるだろう。



そして、その先に『マスカレード・ホテル』と『マスカレード・ナイト』の新田浩介がいる。この演技は「ザ・キムタクのイメージ」とその外側の多層的な新キャラ像のハイブリッドと言えるだろう。

「ザ・キムタクのイメージ」としての魅力と、木村拓哉の演技の多様性の両面が味わえる。豪華キャスト感も相まって、映画館で観てこそより深く堪能できるというものであるのも喜ばしい。

常に賛否さまざまな意見を言われ、第一線での活躍を続ける木村拓哉という人物。

私自身の人生における彼の演技との接点をこのように記せてとても嬉しい次第だ。そして、これからもさまざまな演技に魅了され、応援し続けることになるだろう。

やっちゃえ、木村拓哉。

(文:ヤギシタシュウヘイ)

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