2021年10月14日

監督のツイッターをきっかけに映画化が実現!『かそけきサンカヨウ』原作者・窪美澄×今泉力哉監督インタビュー

監督のツイッターをきっかけに映画化が実現!『かそけきサンカヨウ』原作者・窪美澄×今泉力哉監督インタビュー


それぞれの高校時代を振りかえる…創作への思いは?

——本作は高校生たちの物語ということで、今日はお二人の高校時代のお話をぜひ聞きたいと思います。どんな青春時代を過ごされてきましたか?

今泉:自分は男子校だったんですよね。当時、恋愛経験が本当になくて、中学校のときに好きだった人を高校卒業までずっと好きでいました。その好きだった子は別の共学の高校に通っていて。自分は卓球部だったんですが、いろいろな高校が集まる大会に出たときにその共学で彼女が人気だという話を聞いて、「そら、そうだろうよ」とニヤニヤしていました(笑)。

窪:私も女子校でした。美術部じゃないけれど美術選択で、それこそ陽ちゃんみたいにデッサンを描いていました。わりと地味な女子高生で明日をも知れぬ感じでしたね。絵か小説かわからないけれど何かを創造したい、という思いがふつふつとマグマのように自分の中にたまっている…そんな青春時代だったと思います。


——お二人は、当時から映画や小説の方向に進みたい思いなどはあったのでしょうか?

窪:私は当時小説を書いてはいなかったんですが、本をめちゃめちゃ読んでいました。新潮文庫をガサッと買ってきて全部読むとか三島由紀夫を全作読むみたいなことをずっとやっていたんです。ただ、当時は、小説を書きたいけれど、ぼんやり書きたいと思っている自分と大小説家との差があまりにもありすぎて、自分は小説家になんてなれるわけなんてない…とずっと思っていましたね。

今泉:小学生から高校生になるまで、映画が好きでたくさんレンタルビデオで見ていて。大学に進学する際に映画を作る方に行きたいと思いました。ただ、進学校だったので、芸術系の進路に進む人なんてほぼいないし、美術の成績もよくなかったので「え、力哉が芸術系行くの?」と友だちに笑われる感じでした。当時は全然絵も描けなかったんです。でも、下手でも好きだったので、そっちの方向に進みました。


——改めて本作を見ると、多感な高校生の家族の問題や恋愛など描き方によっては生々しいドラマになりかねないものを、原作、映画ともに非常にみずみずしい物語に仕上げているのを感じます。お二人はそれぞれ作品を作るときにどのようなことを大切にされたのでしょうか?

窪:私は、子どもだから幼いとか子どもだから何も知らないみたいなことは書くのは絶対にやめようと思っていました。大人になっても迷うし、子どもが迷うのは当然。なので、お話の中に子どものほうが大人よりも物事をわかっていて立場が逆転するような場面も入れていて、どちらが上でも下でもないよ…というのが、物語を通して伝えたかったことでもあります。

今泉:みずみずしい作品になったのは、キャストやスタッフに助けられた部分もあると思うんです。生々しさという点でいうと、ドラマをベタな方向で作ってなかったり、あとは前述したように登場人物たちの葛藤がいわゆるわかりやすいものではないので、そこは原作にある空気を丁寧に作っていきました。

人によっては大したことじゃないと思われるようなことでも、当人にとっては大きなことだったりする、そんな見過ごされそうな問題を描こうと思っていて、そのあたりは明確な衝突などにせず描けたとは思っています。陽たちの恋愛についても、客観的に見て話すキャラクターもいて、ぶつかるのではなく相手を思いやる優しい側で作れたかなというのはありますね。

(C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

——では最後に、映画を楽しみにしている方々にそれぞれメッセージをお願いします。

窪:この映画を見たときに、優しさとか誠実さとか自分の中にあるいいところをもう一回思い出させてくれる感じがしたんです。なので、ちょっとした閉塞感を覚えていたり人間関係が煮詰まっていたりする方は息抜きみたいな感じで見てもらえたら、すごく豊かな時間を過ごせると思います。たくさんの方に見ていただきたいです。

今泉:もうほぼ全部言われました(笑)。今、本当に苦しい状況が続いていて、映画館に行くのもそれぞれの判断になってしまっていますが、いろいろなことに気をつけて健康第一でありつつも、この作品を見て心がほぐれてくれたらいいですね。窪さんの小説のファンの方や、「ドラゴン桜 」に揃って出演を果たした二人(志田彩良・鈴鹿央士)のファンの方、もちろん井浦新さんや他の俳優をきっかけにしてくださってもいい。何かのきっかけで映画に出会ってもらった人たちが、見終わってちょっとあったかい気持ちになってくれたらなと思います。



(撮影/HITOMI KAMATA、取材・文/田下愛)

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(C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

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